第25話:レティ16歳「すべてはレティのために」
セガールのカルバントいき宣言に混乱するレティ。
「(あ、あれ? セガールさん今カルバントにいってみるかっていった? さっき私をカルバントに帰す気ないってキッパリバッサリ言い切ったじゃないですか。いってみるって、あれかな。いく=逝く的な? おまえらちょっとあの世に逝ってみるかごらぁ的な? え、そうゆうこと? どうゆこと)いったい何を考えてるの?」
訝しむレティに対し、セガールは淡々と告げた。
「カルバントにいくことはお前の身を危険にさらす可能性もあると思っていたが……レティ、お前なら問題ないようなきがしてきてな。まあ、今後二度とお前に傷などつけさせんよ。この身に変えても、如何なる危険からも守ってみせる」
話しながらもレティをチュッチュしハムハムするセガール。
セガールの唾液まみれになるレティ。
(質問の答えになってるようでなってないんですが! でも、カルバントに戻れるのは嬉しい。早く家族の皆に会いたいし。よくわかんないけどここは大人しく頷いとこう)
「うん」
傍からみたらいい雰囲気の2人。その様子も目に入らない様子で考え込むエドワード。ばっちり目に入り見せつけられるダニエル。ダニエルの心にはかつてないほどドロドロした表現しがたい感情が渦巻いていた。セガールの手からレティを取り戻したい。自分の腕で彼女を力の限り抱きしめたい。だがそれはどうやってもかなわない。非力な人間の力では亜人種に立ち向かうことはできないのだとその身をもって思い知らされる。
考え込んでいたエドワードが顔を上げた。
「信じられないがお前が和平を望んでいることは分かった。だが、なぜだ、何故お前が和平を望むんだ。お前は人間が憎くはないのか?」
「勿論、人間は憎い。積年の恨みというものは簡単にうすれるものではない。しかし、俺はレティに出逢った。レティは人間だ。レティは俺を、いや、俺たち亜人種を恐れない。俺はレティを愛している。レティに笑っていて欲しいから、レティに幸せでいて欲しいから、レティの望むすべてを叶えたい。だから、だろうな。うむ、一言でまとめればレティのためとゆうことだな」
その言葉はエドワードの思考にストンとおさまった。何かうらがあるんじゃないか、ヤツの真意はなんだと考えていたのだが、「レティのため」と聞けばなるほどとすんなり納得してしまう。
レティ至上主義者にとって「レティのため」ということは如何なる免罪符ともなりえるのだ。
まともな神経の一般人がいたなら「そんな理由かい!」と突っ込めただろう。
いや、まともな神経ではないレティは突っ込んだ。
(私のためとか言うな。好きな人のために何でも叶えたいって危険な思考だと思う。だって好きな人が非道を歩んでも止めないってことでしょ。それって最終的に好きな人が不幸になるじゃん。私が悪逆非道な悪女だったらどうすんだ! 世界が滅ぶぞ! なんてったて傾国の美貌だからな!ふははははははは……まったくどいつもこいつもダメ男すぎるぜ)
「王子という人質もいる、少し計画は変更して堂々と正面から王宮に乗り込むか。皆、準備はいいか。さっそく出発しよう」
「「「「「「「おおー!」」」」」」」
モフモフ戦士が雄叫びをあげた。




