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第22話:レティ16歳 「いったい、どうなっているんだ? いや、こっちが聞きたいです」

 目の前を大勢の亜人種達が行ったり来たり慌ただしく動き回っている。モフモフの毛並を鎧で纏い、剣に盾に銃が装備され、戦いがはじまる緊張感を作り出す。

 そんななか私は、ドーンと構えて偉そうに座るセガールの片膝にのせられていた。


(あばばばばばば、やばい、やばいですよ奥さん。こいつら戦う気満々なんだぜ。助けにきてくれたのは嬉しいけど、こんなに亜人種いたら騎士団の1部隊や2部隊じゃ全然相手にされないよ。兄様たち来てるかな……来てるよねたぶん。どうしよう、話し合いで穏便になんとかできるのかな)


「ね、セガール。あなた私をカルバントに帰してくれる気……ない?」


「ない」


 はい、即答でした。


「……」


 むぅ。ちょっと頑張って説得してみますか。


 レティはセガールの目をしっかり見つめ、自分の意思を伝えるため言葉を紡いだ。


「私はカルバントに、私の国に帰りたい。家族もきっと心配しているし、誕生会には他国の人たちも大勢いた。あなた達が私を攫ったことはきっと私が考えるよりも大事になっている。これ以上亜人種達に傷ついて欲しくない。あなた達が私達人間よりとても頑丈で強い力を持ってるのは知ってる。それでも今回のこのことがきっかけで戦争になったりしたら確実に血は流れる。私はそれを止めたい。ここにいたら何もできないけど、国に戻ったら皆に呼びかけることができる。だから……(マジで1回帰して下さい)」



「嫌だ。例えお前を帰したとしてだ、お前の言葉に従い和平を望むものがどれだけいることか。逆に俺たちに手をかす裏切り者としてお前が非難される可能性だってある。大人しく俺の隣いてくれ」



 説得ムリぽ。どうしましょ。




 必死にもともとつまってない脳みそをフル回転させて考えていたら、モフモフ戦士のひとりが目の前まできて膝をつき報告を述べた。


「セガール様! カルバントの者がリーダーと話したいと申し出ております。いかがしますか、あまり人数もいないので取り囲めばすぐに片付けられますが」



「よい、ここに連れてこい」



 しばらくすると、モフモフ戦士3人に囲まれ見慣れた顔の2人が連れてこられた。


「「レティ!」」


「兄様! ダニエル!」


 連れてこられたのは我らが長男様エドワード兄様とお久ぶりの苦労少年(あっ今はもう青年か)ダニエル君だった。


 2人に駆け寄ろうとするもセガールに抱き留められる。


「レティ、無事か? 怪我は……っ!」


 エドワードとダニエルはレティの顔を見て限界まで目を見開いた。頬に傷がついている。レティの、愛しい彼女の顔に。比類ないほど美しく白磁のように滑らかな肌に傷がついているのだ。本来なら無事だったのを喜ぶべきところなのだろうが、あまりのことに衝撃で言葉がでなかった。 


 その様子をみたセガールはレティの頬の傷を愛おしげに撫で、それから舌を這わせ舐めた。


「ああ、すまない。俺もレティに傷一つ付けたくはなかったんだがな、暴走したヤツがいてかすり傷を負わせてしまった。だが、傷は浅い。すぐに目立たなくなるだろう。」


 (ぬお! やめろ舐めんなああ! ばい菌が、ばい菌がつくだろうがああああああ!)


 全力で嫌がってみたもののピクリともしなかった。その様子をみて普段温厚な2人が沸点の臨界突破をおこした。


「ふざけるな! 貴様、レティを攫って何をした!」


「彼女を放して下さい!」


 暴れる2人を近くにいたグレイが押さえつける。グレイにしたら大した力ではなかったのかもしれないが、人にとったら亜人種に力任せに押さえつけられるというのはかなりの衝撃をともない床にたたきつけられた。


「おい、お前ら暴れんなよ」


 グレイ1人でふたりを平然と押さえつける。そんな様子をみてレティはついついグレイを叱りつけてしまった。


「こら、グレイ!!」


 名前を呼ばれたグレイは全身の毛をぶるりと震わせた。そしてそろりとレティの方をみた。


「乱暴にしたらダメ、めっ」


 グレイにとったらまったく乱暴にした覚えはないのだが、叱られてしまった。だが、名前を呼ばれて、めっされたら胸がいっぱいになった。なんだかとても満たされる犬属性のグレイであった。


 そして押さえつけられた2人はそのことにさらに驚きをみせた。レティが亜人種を叱りつけたのだ。そして叱りつけられた亜人種はそのことに怒るどころか大人しく聞き入れている、しかもどこか嬉しげだ。


「いったい、どうなっているんだ……」








つづく

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