表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼女ヒロインは女の子を攻略しました ……どうしてこうなった?  作者: 九條葉月
第五章 聖女と○○○○編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

107/229

第17話 ワイバーン襲来


 



 やらかしてしまったことはしょうがない。スパッと忘れて次の行動に移すとしようかな!


『進言。そこでスパッと忘れるから次々にやらかすことになる』


 ウィルドの助言は無視。私たちは過去じゃなくて未来を見つめなきゃいけないのだから!

 ……というか転移魔法は使うなと注意してくれたのだから、右目を使うなとも言ってくれれば良かったんじゃないのかな?


『説教。(ひと)の話は最後まで聞きなさい』


 真顔で注意されてしまった。そういえば何か言いかけていましたよねすみません。


 おっと、今はこんなことをしている場合じゃないか。


 マリット様が王家への復讐を考えている場合、王太子であるリュースを襲撃するのか王城を襲撃するのかでこちらの対応も変わってくるけれど……現状ではどちらか分からないので、両方に対応できるようにするべきだろう。


 王城に危機を知らせる人間と、リュースに危機を知らせる人間に分けるとして。うん、私がリュースのところに行った方がいいかな。たしかマリット様は転移魔法を使えないはずだから(転移魔法を使える人間自体が数少ないし、使える人間は申告の義務がある)転移魔法ならマリット様より先にリュースのところに行ける。

 リュースの持っている指輪型の魔導具のおかげで居場所も分かるしね。


 それに私ならそのままリュースの護衛ができるもの。

 ガングード公も転移魔法を使えるとはいえ、宰相に護衛仕事をさせるわけにもいかないし。


 あと、マリット様が召喚できるワイバーン程度なら王城の防御結界を抜けないものね。わざわざ私が行くまでもない。


 私は姿勢を正してからガングード公とゲルリッツ侯に向き直った。


(わたくし)はこれより王太子殿下の護衛に向かいたいと思いますわ。できれば殿下を襲撃する前にマリット様を確保できればいいのですけれど」


 襲ってからだとどうしようもないけど、その前に捕まえられれば何とか『なかったこと』にできるかもしれない。なにせこちらには宰相と騎士団長が味方に付いているのだ。権力によるもみ消しくらい楽勝楽勝。


 ……うん、ヒロインの思考じゃないね、今さらながら。どちらというと悪役令嬢のような?


 まぁでも私は別に正義の味方じゃないので問題なし。貴族の基本スキルは腹黒腹芸だ。


「では、王太子殿下の護衛は任せました。我々は王城に戻り、万が一に備えましょう」


「近衛騎士団も第一種戦闘配備で待機させなければな」


 すんなりとリュースの護衛を私に任せる(丸投げするとも言う)ガングード公とゲルリッツ侯だった。9歳児扱いが荒い2人である。


 というわけで私はリュースのいる場所へと転移したのだった。いきなり王太子の目の前に転移すると騒ぎになるので、ちょっと離れたところにね。





「……あ、ナユハと愛理を置いてきちゃった」


 うっかりドジっ娘なリリアちゃんだった。

 ま、まぁヒュンスター邸にはマリーとウィルドが残っているはずだし、二人が状況を説明してくれれば納得してくれるはず……。


『憐憫。せっかくアンスールのためにお茶の準備をしている二人が浮かばれない』


 当然のごとく私の隣にいるウィルドだった。同時に転移してきたらしい。説明役が一人減ってしまったでござる。


「……ウィルドは何をしているのかな?」


『解答。リュース・ヴィ・ヴィートリアの運命が改変されるのならば、私もこの目で確認しなければならない』


「もうすぐリュースが死ぬ予定のルートがあるってこと? でも、ゲームにそんなルートはなかったはずだよね?」


 マンボウ王太子と揶揄されるほどぽんぽん死ぬリュースだけど、マリット様に襲撃されて死亡というルートはなかったはず。そもそもヒロイン(わたし)が学園に入学していないこの時点でリュースが死んでしまうと原作ゲームが始まらないし。


『回答。アンスールはそろそろ現実を見た方がいい』


「…………」


 ゲームと現実は違うということだろうか?


『正答。アンスールの知る『ゲーム』など運命(ルート)のごく一部を描写したものでしかないし、アンスールに置いて行かれたと知ったナユハと愛理、そしてマリーが怒り心頭になる現実(みらい)も変わらない』


「…………」


 そういえばマリーも置いてきちゃったことになるのかな? うん、さらっと恐いこと言わないで欲しいなぁ。私何も悪くないのに……。どうしてこうなった?


 未来のことは未来の私に任せるとして。とりあえずリュースと合流して事情説明することにした。


 今私たちがいるのは王都の南に馬車で数日の場所にある街・アリファスだ。この国では標準的な、城塞で周りを囲った中規模都市。近くの鉱山から産出される宝石と、それを加工した宝飾品が有名な街だ。


 なんでもこの国の王となる人間が、王妃となる女性に贈る指輪はこの街で作られたものを使うのが伝統らしい。


『……納得。何という分かり易いフラグ……』


 なぜだかうんうんと頷くウィルドだった。なぜだろう、なぜだか背中に怖気が走ってしまうね。なぜだろう。


 現実逃避も兼ねてリュースを探す――までもなかった。鎧を纏った騎士たちに護衛されながら近くの店から出てきた美少女。見間違えるはずもなくマイフレンドなリュースちゃんだ。


「……え? リリア? こんなところで何をしているんだい?」


 手にしていた小包をさっと背中に隠すリュース。しかし残念ながら私は左目の眼帯を外したままだったので“視えて”しまうんだよねぇこれが。


 ほうほう? 小さめながら希少な赤い宝石がついた指輪だね? それに純金でできた指輪本体の装飾も職人技。鑑定眼(アプレイゼル)的な鑑定をするとそこらの貴族が屋敷を売り払う覚悟をしなきゃいけないほどの一品だ。


 そっかリュースも女の子だものね。指輪くらい欲しくなるお年頃か。なんだか微笑ましくなってしまうね。


『……奇跡。指輪を“視る”ことに集中してリュース・ヴィ・ヴィートリアの心を読まないとは。読心すれば指輪を送る相手も分かるだろうに……。いや『友達』として無意識に彼女の心を読むことを避けた可能性も?』


 ウィルドが何かつぶやいていたけれど、小さな声すぎて聞こえなかった。


 しかしあの指輪のデザインはどこかで見たことがあるような?

 ……あ、そうか。以前私がリュースに渡した指輪型の魔導具にそっくりなのだ。位置探知とか聖魔法の結界が自動展開したりする多機能の。何を隠そうリュースのいる場所に転移できたのもあの指輪のおかげなのだ!


 う~ん、似たようなデザインの指輪を作るなんてよっぽど気に入っているんだね、ちょっと照れちゃうよ!


『……鈍感。『おそろい』のデザインにしたと分かりそうなものなのに』


 ウィルドが何かつぶやいて以下略。


「おっと、あまり左目で“視て”いると怖いよね? ナユハやマリーも怖がっていたし……ごめんごめん」


 私がポケットから眼帯を取り出して付け直していると――



『――探知。ワイバーンが接近中。あと46分でこの街に到着する』



 ウィルドの発言にリュースは目を見開き、対照的に、護衛の騎士たちは呆れとも苦笑とも取れる反応をした。「何を言っているんだこの女は」といった感じかな。


 それも当然。都市の探知システムが警報を発していない現状で「ワイバーンが来る!」と言っても信じられるわけがない。個人の探知魔法が都市の探知システムに勝る道理はないのだから。


 しかしリュースは(良くも悪くも)ウィルドの非常識さを知っている。


「リリア。わざわざキミが来たのだから事情を知っていると考えていいのかな?」


「もちろん。さっそくで悪いけどこの町にワイバーンが近づいている。私はリュースの護衛をするために、宰相と騎士団長の命を受けてここまでやって来たんだ」


 うん、命令と拡大解釈してもおかしくないよね? 頼まれたのは事実だし。


 宰相と騎士団長という単語に護衛の騎士たちがざわめいた。貴族である私が宰相たちの命令を騙ることなんてありえないし、それが『竜殺し(ドラゴンスレイヤー)』であれば尚更のこと。9歳ながら複数のドラゴンを討伐した私は、ワイバーンに対処するために派遣される人材として適任なのだ。


「…………」


 リュースは数秒沈黙した後、騎士の筆頭格らしき人物に向き直った。


「キミたちはまずこの街の騎士団と合流し、事情を説明。そのあとは騎士団と協力して住民の避難誘導にあたってくれ。リリア――レナード子爵令嬢なら問題なく討伐できるだろうが、街に被害が出ないとは言い切れないからね」


「いえ、しかし、お言葉ですがそれでは殿下の護衛が手薄になりすぎます」


「私の護衛はレナード子爵令嬢にお願いする」


「そうおっしゃいましても……」


 ワイバーンを討伐する私が護衛役を務めるということは、必然的にリュースもワイバーンの近くにいることとなる。それが分かったのか騎士も素直には頷かなかった。


 けれどそんな騎士に対してリュースは容赦しない。


「王太子である私の命令が聞けないのか?」


 リュースの言葉を受けて騎士たちは渋々といった様子で騎士団の詰め所へと移動を開始した。


 騎士たちの姿が見えなくなってからリュースがこちらを向く。


「……さて。リリア、人払いはすんだ。話してくれるかな? 巣が近くにないワイバーンがこの街を目指すというのは不自然だ。ワイバーンはそれほどの距離を飛べないからね」


 さすが次期国王。国家を脅かす存在に対する基礎知識についても学んでいるらしい。


「おかしな話だ。鉱山が近いこの街には王都ほどではないとはいえ“竜種避け”の防護術式が施してある。ドラゴン……は難しいかもしれないがワイバーンは近づこうとすらしないはずだよね? 少なくとも、野生種では」


 鋭いなぁリュースは。まぁ話が早くて助かるけど。

 変に隠し事をするわけにもいかないのでここは素直に情報を伝えることにする。


「マリット・ヒュンスター侯爵家令息。竜使いの力を持つ彼がやって来る可能性が高い。王城を狙うかこの街を狙うか分からなかったけれど、ウィルドによればこの街……いや、リュースを狙っているみたいだね」


「マリット・ヒュンスター。キナから注意しろと勧告されていた人物か」


 姉御はそっちが“本業”の人だから当然マリット様の動きも掴んでいたのだろう。


「彼の目的は、8年前の復讐だろうか?」


「…………」


 先ほどマリット様は地下室に来て、ヒュンスター侯と言い争いをした。

 その時の私はドラゴンの素材を分別するために左目の眼帯を外していて。必然的にマリット様の心も“視て”しまった。


 彼の目的は、もちろん王家への復讐であり――



 ――警告の鐘が鳴り響いた。



 都市の警戒網がワイバーンの接近を察知したのだろう。

 この世界には野生の獣よりも遙かに危険な魔物や魔獣が闊歩している。必然的に住民も危険と隣り合わせの生活を送っているので緊急時の対応も手慣れたものだ。少々慌てつつも大きな混乱もなく地下の避難場所に向かっていく。


 さて、マリット様の復讐心も理解できないわけではないけれど、かといってワイバーンが街で暴れるのを許すわけにもいかないし、街の外で討伐してしまえば後々『誤魔化し』もしやすい。さっさと退治しますかねぇと私が肩を回していると――



「――リリア」



 深刻な顔をしたリュースが私の服の裾を掴んだ。


「マリット・ヒュンスターと話がしたい」


 その顔は真剣そのもので。冗談や酔狂であるとはとても思えなくて。




 ど、どうしてこうなった……?



次回、2月23日更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ