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4章の2

 山道の路肩へ大型のワゴン車が停車すると、そこから五人の男女が降りてくる。


 日本刀を腰に差した少年。


 魔女の衣装に身を包んだ少女。


 長尺刀を背負い大型のトランクを抱えた白のコートの青年。


 杖を手元に携えた黒髪の女性。


 全身にごてごてとアクセサリーを付けたマントの青年。


 狗賀志郎、長谷川琴美、鳥羽明久、桐山依子、マックス・フォン・シュレック子爵の五人だ。


 対殺人鬼戦の主力である二人と、バックアップの三幹部が揃っていた。


 これから目的地である泥谷地区の神社へ向かうのだが、もしも当たりを引けば神社周辺で敵と遭遇するのは想像に難くない。

 よって真正面から襲撃するのではなく、神社の裏側にあたるやや離れた場所から奇襲を仕掛ける事となった。


 やや離れたと言っても山ふたつはゆうに越える事になる距離だが、志郎達にとってはその程度は特に問題にならない。

 体力面では他のメンバーに比べて難のある琴美でさえも飛行術を扱えるので、目的地についた頃にはバテているという事態はとりあえず回避できる。



「狗賀くん、鼻は大丈夫?」



 日中に小雨が降ったせいか登山道に入る前から既に、吹き抜ける風がむせ返るような土と緑の匂いを運んできていた。琴美は志郎の嗅覚が鈍ることを心配しているようだが、「なめんな」と一言返された。



「このくらいはむしろ気分が良くなる。山歩きも慣れてるしな」



 上機嫌で鼻から空気を吸い込み、口から吐く。空気が旨いとさっそく真新しいジャケットからマルボロを取り出しての一服を決め込んだ。



「ったく、緊張感無いんだから……じゃあ子爵、例のやつ借りときますよ」



「よろしいが、これでも大事なものだから扱いには気を付けるように」



 笑みを崩さず、マントの怪人がルビーのペンダントを魔女へ差し出す。首へチェーンをかけると、黒の生地を押し上げて自己主張する胸の上で、紅の宝石が魔を祓うと言われる深い輝きを増したように見えた。



「ほほお、なかなか似合っているな。ビッチっぽくて」



「ビッチ言うな」



 依子は相変わらずの軽口で、割と本気の力を込めて振るわれる魔女の杖をひょいひょいと巧みな体捌きで回避している。

 今夜は杖の他にも、スプリングコートの下に刀や(さい)などを隠し持っている。明確な殺傷力を備えた武器を持ち出すのは手加減なく敵を倒す意思の現れだろうか。


 まあ、彼女ほどの腕前になれば杖でも容易に人を殺せるのだが。手裏剣術の優れた使い手は箸で畳を貫くことが出来るし、古武道の指弾も達人ならば小豆でガラス板をぶち破るほどの威力を発揮する。


 昨日の志郎との稽古の中だけでも、武術・武道を学んだ者の強さを嫌というほど味わった琴美なりの実感がそこにあった。



 そして鳥羽は騒ぐ面々を無視してマイペースに、少し離れた場所の地面にトランクを置いた。



「おっ、今日はどれでいくんだ?」




 紫煙を吐きながら問う志郎に応えるようにブレスレットを嵌めた右手を掲げると、それに埋め込まれた水晶が淡い光と微細な振動を放つ。



 彼の得意とする人形を操る秘術・招鬼法は『晶鬼法』という字を充てる場合もある。その名の通り、この術で人形を操る媒介は水晶玉なのだ。


 水晶の輝きと振動が激しくなったかと思うと、ばん! と激しい音を立ててトランクから痩身短躯の異形が飛び出してきた。




 背中から拡がる、折り畳み式の皮膜が張られた翼は差し渡し5メートル程度。全身は暗褐色に塗られ手足は細長い。


 先の戦いで使用された夜行に比べると背丈も小さく、一見頼りなく感じられるが、四肢の先端には鎌を思わせる鋭い鉤爪が輝いていた。ひとたびこれを振るえば、凶器としては十分すぎるほどに機能するだろう。



 胴体は西洋のスケイルアーマーに似た、特殊合金製の小さな鱗状の鉄板を獣皮へ無数に縫い合わせた鎧に覆われており、やはりその胸元には荒々しい筆遣いの梵字が殴り書きしてある。


 顔は一見すると猿のようにも見える造形だが鼻から下は細長く突き出しており、噛み合わせた口元に鋭い牙がならんでいた。




「なるほど、山地乳(やまちち)ね」



 人とコウモリを掛け合わせたような姿のそれは、年経たコウモリが変化すると云われる山怪を模した操り人形。構造上、夜行のような頑丈さと力強さには欠けるが、飛行能力を有するという利点に加えて素早い動きが期待できる。



「では、しばらく待機していてくれ。何かあったら連絡する」


 鳥羽が空になったトランクを車へ詰めながら、メンバーを代表して運転手へ指示する。他の二人が気ままな分、まとめ役になるのはやはり彼のようだ。



「さて、行きますか。俺と長谷川がメインだし、今日も先陣は二人で勤めさせてもらいますよ」



 その言葉を受けて、琴美が表情を硬くする。未だ経験的には新人の域を出ない彼女には重圧だが、志郎の足を引っ張らないようにと覚悟を決めていた。


 志郎も出撃前という事で、重さと感触を確かめるように腰の刀に手をやっていると、これからは隠密行動なのでマナーモードにしている携帯電話が振動して着信を告げた。



「はいはいもしもし、こちら骨董の店狛犬堂でございま……何だ御堂か」



 店の方の電話かと思いろくに確認もせず電話をとると、最近交流のある同級生からだった。



『何だはないでしょ、心配してあげてるのに』



 受話器越しにも何となく判別できる。頬を膨らませてむくれているようだ。悪い悪い、と軽い調子で謝ってみせる。当初は苦手な相手だったが、最近では志郎も比較的樹里と打ち解けてきていた。




『これから例の神社に行くんでしょ?』



「ああ、ちょうど今から山に入るところだ」


『そう、気を付けてね。それと……』



 そこで受話器の向こうで深く息を飲む気配を感じる。気の強い彼女には珍しく、言葉に詰まるような印象を与えられた。


 いぶかしむのとほぼ同時、神妙な声で言葉が伝えられる。



『それと……長谷川さんのこと、守ってあげてね』


「ああ。じゃ、短くて悪いけどそろそろ切るぞ」



『うん』



 通話を切って携帯をポケットにしまう。改めて山道へ歩き出そうとした時、相棒が自分へジトッとした眼差しを向けている事に気が付いた。


「今の電話、御堂さんからよね?何て言ってた?」


「い、いや、気を付けてってだけだよ」


「へぇ、ほんとにそれだけ?」



 ハールマン戦での負傷から、琴美が更なる強さを求めている事は理解している。自分が守るという言葉はかえって彼女の自尊心を傷付ける可能性を志郎は考えた。



 言っていいものかどうか迷っていると、「ふんっ……」と鼻から短い息を不満そうな表情で吐いて踵を返す。そのままさっさと相棒を置いて登山道へと歩き始めた。



「まったく、御堂さんに何を吹き込まれたのやら」




「なあ、お前と御堂って本当に喧嘩して無いんだよな?」


「ああんっ!? してないって言ってるでしょ!! くだんねーこと言ってると二度と勃たないように×××燃やすわよアンタ!!」


「え……えぇ〜? ていうか×××燃やすってお前!?」




 ついに逆ギレしてどんどん登山道へと踏み込んでいく。釈然としないものを感じながら、慌てて志郎もそれを追って山へ入った。



「あいつら、本気で大丈夫か?」


 起動させた山地乳を空中へ飛ばしながら、鳥羽が呆れたように呟く。傍らではいつもの微笑を崩さずシュレック子爵と依子の二人が佇んでいた。


「いや、なかなか面白い。それに人間関係に恵まれているのは歓迎すべき事態だろう」


「まさしくその通りだ。たまには良いことを言うなシュレック」


 ははははははは!! と胸を反らして大笑する二人に鳥羽がとうとう頭痛を覚え、こめかみを押さえてぶっ倒れそうになる。




「悪魔かお前ら……」



「なに、仕事はきちんとこなすから安心するといい」



 掌でケースに納められたタロットカードを弄びながら、シュレック子爵が登山道へ踏み入った。仰々しいマントと多数のアクセサリーを身に纏っているにも関わらず殆ど物音を立てない独特の足捌きで、先陣を切った二人から一定の距離を取りつつ追い縋る。


 鳥羽と依子も油断なく武器に手をかけると、四方八方へ注意を払いながらそれを追って行った。







 登山道は照葉樹の多く群生する森林となっていた。

 黒潮の影響による温暖な気候に加え、その海流は肥沃な漁場を産み、山から雨と共に溶け込む土の栄養分も更に海の豊かさを増す要因となる。なので、この地方では漁業で生計を立てる家庭も多い。


 足場は水を吸うと滑りやすい粘土のような地質だが、これも陶芸には適しているので地元では重要な産業のひとつとなっている。




 そんな自分達を育んだありがたい環境の縮図のような光景には目もくれず、志郎は黙々と神社を目指して先頭を進んでいた。


 やや後方ではぬかるんだ土に時折足をとられそうになりながらも、琴美が何とかそれを追っている。更にその後ろでは三幹部がペースを崩さず、涼しい顔で続く形だ。


 琴美は出発当初こそ先陣を切ってずんずんと行軍していたものの、基礎体力はやはり他のメンバーには劣る。すぐに無理のない歩行速度に切り替え、体力の温存に廻っていた。


 泥団子のようになった足元には辟易したが、幸い水を弾く素材のブーツを履いていたおかげで、汚れが靴に染み込んではいないのがせめてもの幸いか。



「……そろそろ目的地に近付いて来たわね」



 進路上に伸びた枝葉や蜘蛛の巣を途中で拾った棒で払いながら進んでいる志郎の背中に、ふぅふぅと軽く息をつぎながら琴美が声をかけた。額に薄く滲んだ汗をマントで拭う。


 山歩きには慣れているという言葉通り、泥に足を取られることもなく、夜目が効いているかのようなパートナーの足取りが彼女には頼もしく映った。



「ああ。例の生首とやらはまだ出てないがな」



 いい加減空振りするのはウンザリだったので、今回こそは当たりを引いてスカイスタンや殺人鬼達との再戦を果たしたいという期待が彼にはある。


「そういえば、詳しく聞いてなかったな。その空を飛ぶ首について何か外見的な特徴はないのか?耳を翼にするとか」



 志郎の問いに対して少し考え込む。頭のなかの情報を引き出そうとしているようだ。



「えっと……確か何か長いものがぶらさがってるように見えたとかいう証言があった」



「長いものね……元の身体から首が伸びるタイプか? だったらハズレかもなぁ」


 それについて志郎は、殺人鬼達とは関連性はないと予測した。しかし、



「いや、まだ判断するには早い」


 鳥羽が厳しい声で志郎の意見に異を唱える。



「見ろ」


 前方のシイの樹の根元を指差す。暗がりで判別しにくいが、茶色い塊が横たわっていた。雌の子鹿の死骸だ。




 訝しげに志郎と琴美が近付いてみると、すぐに異常に気が付いた。



 周囲に生々しい血痕が飛散しており、木々にどす黒い斑となって貼り着いていた。


 その血痕や毛皮の状態から見ても、さほど死後から時間は経っていないように見える。しかし、その鹿の肉体はまるでミイラのように干からび、全身の何ヵ所にも渡って突き立てられた牙の痕が残っていたのだ。


 間違っても野犬などの動物によるものではない。少なくともこういった補食方法を取る生物は見島市の山中には存在しないはずである。



 それに、この牙の痕は明らかに人間の歯形と酷似している。





 一気に緊張感が増したなかで、五人とも無言で進む。



 途中、更に犬が合計三頭、同じように干からびて死んでいるのを見かけた。


 志郎の鋭敏な嗅覚が、既に血の臭いを明確に嗅ぎ付けていた。神社へ近づくたびそれは濃密になる。


「これは、当たりかな……」



 鍔を親指で押し上げて鯉口を切る。井上真改が、鞘から抜かれる時を待ち望んでいるように感じた。





「おい、あれ」



 依子がクククッと小さく口に含んだ笑いをあげて上方を指差し、それにつられて皆が軽く見上げるように視線を上げる。


 春の陽気に押されて青々と生い茂った木々の葉、その合間から何者かの気配を感じる。木々の影から所々で蛍のような淡い光が漏れていた。



 頭上からの甲高い鳥の鳴き声――否、断末魔が耳を打つ。全員、弾かれたように上方へ視線を向けると、それが鈍く重苦しい音を伴い、先頭に立つ志郎の足元へ墜ちてきた。



 羽を撒き散らしながら無惨に地面に叩き付けられたのは、アオサギである。喉首を食い千切られているのが一目で分かった。

 まだ息はあるようで、嘴から血を吐きながら首と翼をばたつかせ、痙攣を繰り返していたが、死は時間の問題であろう。


 それを目撃した琴美の胃から酸い感覚がせり上がるが、次の瞬間には鳶の鳴き声のような刃音と共にアオサギの首が斬り飛ばされる。志郎の一刀によるものだ



「南無……」



 空いた左手を合掌の形で顔前にかざし、一礼。慈悲の刃を受けて、アオサギは苦痛から解放された。


 一連の動作を終えると、頭上を厳しい眼で睨む。


 空を蛇のような長いものが飛んでいた。やはり蛍に似た淡い光を伴っている。

 アオサギのものだけではなく、周囲からも血生臭さと奇妙な刺激臭を感じる。人間離れした嗅覚を誇る志郎だけではなく、他の面々もそれに気付くほど明確だ。



 頭上を飛んでいた一体が高度を落とすと、誘われるように木々に隠れていた気配の主らもそれに続く。



 木々の感覚は比較的広く、広場のようになった地点へ月光が容赦なく射し込んでいる。とうとうそれを目撃してしまった。



「うぅっ!!」


 半ば悲鳴に近い咽愕を、琴美が喉から絞り出す。先刻のアオサギや、干からびた鹿や犬の死骸から感じたそれをいとも容易く塗り潰す強烈な生理的嫌悪。見た瞬間、嘔吐しなかったのは奇跡に近い。



 志郎と鳥羽も顔をしかめ、依子とシュレック子爵すら苦笑いを浮かべている。




 神社の生首の噂の正体がそこにいた。


 数はちょうど十体。重力を無視して首が空に浮いている。

 顔はみな20〜30代程度の男に見えた。口元には動物のものかそれとも人間のものか、一様に赤黒く乾いた血糊がべっとりと付着していた。



 そして、何よりも目を引くのは首の下からぶらがっている肺・心臓・胃袋・肝臓・大腸・小腸といった、本来ならば人体に収まっているはずの臓器である。



 心臓の鼓動にあわせてどくどくと規則的に蠕動するそれが、闇の中でもはっきりと判別できる蛍光色の輝きを帯びて、細部に至るまで鮮明に浮かび上がっていた。



「ペナンガラン……!!」



 激しい嫌悪に萎えかけた気持ちを奮い立たせるように魔女が叫ぶと、苦笑いを浮かべた依子がそれを訂正する。



「いや、ペナンガランは女魔だから、こいつは恐らくポンティアナだろう」



 ポンティアナとは東南アジアのボルネオ島で恐れられる黒魔術の化身。

 呪術師が自らに呪いをかけて変化する、夜間に身体から内臓ごと首が抜けて空を飛び、特に幼い子供を好んで襲い血を吸うという吸血鬼の一種だ。


 ちなみにペナンガランも同様に内臓をぶら下げて空を飛び、子供や妊婦の血を好む生首の妖怪であり、マレーシアをはじめ、東南アジア諸国で類似した怪異に関する話が散見される。


 こちらは魔力を得るために悪魔と契約した助産婦が『四十日間肉を食べてはならない』という約束を破った罰で悪魔に呪われて変化したとか、お産で死んだ母親が無事に子供を産めなかった無念と嫉妬で変ずるとか、ドウドク・ベルタパという懺悔の儀式で用いる龜の中で、隙間や穴が空いていないか点検していた際、通りすがりの男に声をかけられて驚き、誤って龜の縁で首を斬り落としてしまった女の霊が正体など諸説あるが、依子の言うように女性であることは共通している。



 しかし、どちらにせよ本来ならば日本でそうそうお目にかかるような妖物ではない。さすがに全員が意表を突かれた。



 それを見抜いているのか否か、耳障りな奇声を発し、十の生首がうねうねと内臓を棚引いて襲いかかってきた。水の中の魚を思わせる動きで、まさしく空中を自由自在に泳ぐように飛襲してくる。



「固まっていては不利だ、散れ!!」



 鳥羽の声を合図にメンバーが周囲に飛散する。



 攻撃の先陣を切ったのはやはり志郎だった。



 周囲を見回して地形を確認する。

 足元に岩などはあまり無く平坦な場所だ。土も今まで通った道に比べれば乾いており、立ち回りには問題ない。そう判断すれば彼の行動は速かった。


「ちょっと待て!」と鳥羽が制止するのも聞かず、果敢に生首どもの群れへ突撃する。



「いええぇーい!!」



 力強く土を蹴っての跳躍から斬りかかる。刃を逃れるようにポンティアナの群れが左右へ割れた。


 まずは最も手近な右側の一体に狙いを定め、剥き出しの心臓めがけて真っ向から突きを繰り出す。しかし空を飛べるというアドバンテージ故か、微かに切っ先が腸の一部を裂くのみに留まり仕損じた。


 予想以上に敵の動きが速い。


 内臓へ細い線が走り血が滲み、刀傷の痛みに絶叫しながら、ポンティアナが身をくねらせて刃から逃れていく。



 その際、ほんのわずかに刀傷の裂け目から滴った血液が志郎の頬へ零れ落ちると、



「痛ぅっ!?」



 ただそれだけで張り手を食らわされたような、痺れを伴う強い痛みが走った。



「畜生、なんだこりゃ」



 これは痛みもさることながら驚きが強い。辛くも転倒を免れてぎこちなく着地し、熱を帯びた頬を押さえながら顔をしかめていると、厳しい声で鳥羽が叱責した。



「待てと言ったろ!! ポンティアナの内臓から滴る血や体液は毒を含み、これに触れると激痛が走ったり病に犯されると言われているんだ!!」


「チッ、そうかよ!」


 頭上から襲いかかってくる生首を棒手裏剣で牽制しつつ、舌打ちを派手に鳴らす。


 接近戦を得意とする志郎には、毒を撒き散らすポンティアナは相性が悪い。時折高度を落とした相手に斬りかかるものの、また毒を食らうことを警戒しているせいか、なかなか決定打にはならない。


 三幹部もバックアップという立場からか、手持ちの武器で周囲に寄ってくる生首を虫でも相手にするように追い払うだけであまり積極的に攻撃する気配はない。


 この程度は自分達で何とかして見せろ、という事か。



 おかげで、戦況はしばし停滞を見せた。



「ぐああ、面倒くせえ!!」



「ほら、すぐキレない!! 大丈夫、近くに引き付ける事さえ出来ればたぶん倒せるわ!!」



 短気を起こしかけ、多少の毒を浴びても構うかとばかり再び高く跳躍して斬りかかろうとする志郎を制止したのは琴美だった。


 右手にはルーンの杖を携え、左手にはシュレック子爵から借りたルビーのペンダントと、小石のようなものを幾つか握り締めているのが見える。



「まあ見てなさいって……バーラ・フリー、バーラ・フリー、ローキー、ローキー、バーラ・フリー、バーラ・フリー」



 杖を垂直に突き立てて、足元へ左手に握っていた小石――銀白色の結晶だ――を落とすと、魔術を行使するための呪文を唱え始める。息子のフェンリル、ヨルムンガルド、へルらと共に北欧神話の終末『ラグナロク』を招くことで知られる悪神ロキの名を込めた詠唱だ。


 山火事はこのロキの悪戯で引き起こされる災害と言われており、それを示すように魔女の眼前に火球が生じた。


 テニスボール程度のごく小さなものだが、深い闇のなかで煌々と灯るその火は敵の注意を引き付けるには十分だったようだ。



 光に群がる蛾を思わせる動作で生首どもが距離を狭め、彼女の周囲を旋回し始める。



 しばしその動きを数秒続けた後、一斉に琴美へ向かい生首が襲いかかった。


 二十の眼が血走った視線を集中させ、十の口が血肉で腹を満たす予感に涎を垂らし、首筋や太股といった肌の露出した箇所へ狙いを定めて殺到する。



 しかし、その牙が柔肌へ突き立てられる間一髪で、魔女の右手が杖を真っ直ぐに振り下ろし、同時に左手が地面へルビーを翳す。



「皆、目を閉じて!!」



 空中で静止していた火球が杖の動きに合わせ、地面の結晶へ勢いよく叩き付けられた瞬間、四方八方へ深紅の閃光が散った!!




 銀白色の結晶、すなわちマグネシウムの燃焼で発生する強烈な光を介したルビーの輝きに貫かれて、ポンティアナ達から絶叫が迸る。



 半分は悲鳴を上げながら破魔の光からどうにか逃れたものの、半分は逃げ遅れた。


 攻撃を受けた五体のうち、もろに光の直撃を受けた二体がおぞましい断末魔を伴って地面を転げ墜ちた。既にその形は崩れ始めている。


 髪の毛が束のようになって頭皮ごとズルリと頭蓋骨から滑り落ち、頬や鼻の肉がぐずぐずと溶けて骨が露出し、目玉が顔から零れ落ちる。内臓も厚みを徐々に失い、腐ったような悪臭を放つ液体となって地面に染み込み消えていくのが明確に見て取れた。最後は骨すら形を失い、悪臭と濁った水溜まりだけが残る。



 先程の光からの生き残りもよく見ると、顔や内臓が焼け爛れ、所々が溶け出している。腐り水を滴らせながらこちらを睨むそのうちの一体は、唇が消え失せて歯は剥き出しになり、瞼も溶けて白濁した右目が飛び出して頬にまでぶら下がっているという無惨な状態だ。



「やっぱりね、こいつら熱や光に弱い!」



「マグネシウムで魔を祓うルビーの光を増幅させるとは考えたものだな」



 シュレック子爵の賞賛に、琴美が胸を張って答える。



「飛頭蛮などと同じく、ペナンガランやポンティアナの弱点も日光と言われています。太陽の光を浴びると臭い水になって消えてしまうから、こいつらは夜にしか変化できないんですよ。でも、日光じゃなくても十分だったみたいですね」




 1920年頃というごく近代に入っても、ポンティアナに変化した呪術師に関する話がボルネオ島には残されている。


 貧しい大工の妻がある呪術師の男に支払いの催促をしたところ、金がないの一点張りで支払いを渋られた挙げ句、壺を顔に投げつけられ失明してしまった。


 夫も普段から呪術を学んでおり、妻の眼を潰したことについて男が全く反省していない事に怒ると、仕返しに呪いを込めた札を相手の眼前へ叩き付けて片眼を潰し、復讐を遂げる。


 その夜、隻眼になった男はポンティアナに変化して夫婦への復讐を行おうとしたが、家の屋根の四隅に仕掛けられた鋭利な切り口を上に向けた竹に突き刺さり、夜明けと共に陽の中へ溶けて消えてしまったのだという。


 マレーシアなどではこの話のような竹細工や、トゲが内臓に引っ掛かって逃げられなくなるので彼らが嫌うとされる、ジュニという植物の葉が窓辺へ取り付ける魔除けに用いられ、これに生首が引っ掛かればすぐに焼き殺せと言われている。


 こういった話から熱と光による攻撃を試してみたわけだが、予想以上の効果を発揮した。


「ありがとよ、礼を言っとくぞ!」


 相棒の思わぬ活躍に活気付いたか、志郎が一声吠えると白木の鞘から脇差しを抜き、手裏剣打ちに投げた。


 鹿島神道流投剣技法“片浪”――鋭い風を切る音と共に闇を裂いて飛ぶそれは、片目をぶら下げた死に損ないの心臓を貫き、背後の樹へ標本のように縫い止めてしまった。


 ギエエエ〜〜!! とけたたましい絶叫が鳴り響き、やがてその首が力なく項垂れて短く痙攣を繰り返す。

 完全に死んだかは判別が付かないが、文字通り手も足も出ないポンティアナが自力で刃を抜くことは不可能だろう。

 熱と光を浴びせるか、または朝まで放置するだけで跡形もなく消え失せる。どのみち死を待つだけの状況だ。




 更に、志郎に続いてシュレック子爵と鳥羽が手負いの二体を追撃する。


「よくやった、残りは手伝ってやる」


 コートを翻して、ブレスレットをはめた拳を鳥羽が掲げ、その横に立つシュレック子爵がタロットカードを手にして笑う。


「マックス・フォン・シュレックのタロット術、とくとご覧あれ!」




 芝居がかった台詞と共に、シュレック子爵の手元から数十枚のタロットカードが鳥の群れのように飛びたち、縦横無尽にポンティアナへ襲いかかった。


 年月は経ているだろうが、単なる長方形の紙片に過ぎないはずのカードが、ほんの一枚当たるだけで岩をぶつけられたようにポンティアナが弾き飛ばされ、また時には一枚の板のように集結し、それを操るシュレック子爵を防御する堅牢な盾となって攻撃を阻む。



 悪霊を封じた呪術用タロット。カードのひとつひとつがシュレック子爵の意のままに動く使い魔であり、実体を備えた強力な呪詛の塊である。


「さあ、トドメは譲って差し上げよう」



 やがてタロットは蛇のように細長く連結してポンティアナ達へ絡み付き、身動きが封じられたところで鳥羽が操り人形・山地乳に鉄爪を振るわせ、二体をまとめて引き裂いてしまった。



「オーバーキルは好まんが、許せ」


 言葉と裏腹に、鳥羽の操る山地乳には一切の容赦が見えない。


 顔面を輪切りに、内臓をすだれのように引き裂き、二体のポンティアナを完膚なきまでに殺し尽くす。暗褐色のボディがたちまち深紅に染まった。


 倒す方法の決められた妖怪相手に油断は出来ない。再び甦って襲われては元も子もないのだ。



 こういった性質を持つ魔物は、ユーゴスラビアのクドラクやヴコドラクと呼ばれる吸血鬼が有名である。

 その名は『狼の毛皮を着た者』という意味があり、名前の通り狼の毛皮やベルトを身に付けることで、狼へ変身する能力を持っている。

 西スラブでは人狼が死後に変化するとも、またポンティアナのように邪悪な魔術師が変化するとも言われ、心臓に西洋サンザシの杭を打ち込むか、墓地から抜け出さないよう膝の下の健を切って埋葬するかしなければ更に強力な魔物になって復活するとされる。



 そういった事態を防ぐため、鳥羽は敵を徹底的に切り刻んだ。



「これで半分だな」



 念のために琴美が火を放って肉片を焼き払う傍らで、志郎が刀を手に残る敵を睨む。


 半数が瞬く間に屠られた事を警戒してか、残る5体のポンティアナはやや距離をとって空中に浮かんでいる。時折短い威嚇の声を出すが、当初のように勢い良く襲いかかって来る気配はない。



「放っといても埒が明かん。あいつらは私がやろう」



 どうやって倒すか考えあぐねていたところで、今度は依子が前に出た。


「良いのか?」という志郎の言葉に笑みを返し、「持っていろ」と使い込まれた杖を差し出す。


「よし、雲があるな」


 依子が見上げると、日中雨を地上へ降らせた雨雲がまだ空に残っている。ニヤリと口の端を吊り上げた表情で、胸を張って息を吸い込む。それに猛烈に嫌な予感を感じた。


「おい、まさか?」



「スゥーー……」



 口から長く吸った息を九回に分けて鼻から吐き、吐いた息と同じ回数だけ唾液を飲み込む独特の呼吸法。それと同時に白い指が次々と印を結んで行く。



 嫌な予感は確信に変わり、志郎の顔から一気に血の気が引いた。


「謹んで五雷将軍に請う。脚もて七星五雷の輪を踏み、五雷大菩薩に聖駕し、凡間に降落し、良民を救い邪を治めて鬼を斬り殺さんことを!!」



 祝詞と共に長い髪が静電気を帯びて乱れ、衣服の端々から細かい火花が弾け咲き、紫電が龍のように身体へ絡み付く。


「やべえ、やっぱり雷法使う気だこの馬鹿!!」


「依子ー!! お前本当に死んでしまえー!!」


「長谷川君、なるべく木から離れなさい。そして頭を低くするのだ」


「えっ? なになに?」


 預けられた杖を放り投げ、罵倒を残して物凄い速度で志郎と鳥羽が走り去ると、笑いを堪えたシュレック子爵が琴美の頭を押さえつけるようにして自分と共に屈ませる。




 雷法とは古代中国で雷信仰を元に発展し元〜明代辺りに成立したとされる、雷部に属する神将・神兵を使役する呪術である。



 病魔や悪鬼を祓う駆邪のほか、雨乞い等にもこの流れを組む儀式は多く、また漢代の王充という人物が書いた書物『論衡』に“雷が人を殺すのはその人に隠している過ちがあるからだ”と記述されている事などからも分かるが、雷術において使役される神将・神兵は苛烈な性格を持ち、古くから天刑(天が下す罰)の執行者とされてきた。


 そして彼らは人間だけではなく、時には精霊や妖怪さえも悪事を働けば悉く引っ捕らえて刑罰を与えると信じられている。


 邪術で変化したポンティアナを倒すにはお誂え向きの術であろうに、この態度はどういう事だろうかと琴美は首を傾げた。


「いや、威力は申し分ない。申し分ないのだが、あいつの雷法は強すぎてよく周囲に被害が出る。今逃げていった二人は以前、こういった山地で依子に雷法を使われて死にかけたことがあるのさ」


「うわぁ……」


 琴美がひきつった顔をするのなどどこ吹く風で、依子は術式を完成へ近付けていく。


「拝して五雷将軍に請う。凡間に降落し、我を救け、邪を抑え鬼を斬り尽くし滅亡させんことを!!

 雷公雷母家堂に到れ、神兵、火急に律令の如くせよ!!」



 頭上の雲が太鼓を打つような、どろどろと腹に響く不気味な鳴き声を上げ稲光を孕む。


 本能的に危機を察知したか、五体の生首が一斉に空高く舞い上がった。恐らくは全速力での逃亡を試みている。



 その姿がどんどん遠ざかり、小さくなっていく。しかし、



「見さらせ、我が雷法!!」



 天へ掲げられた両掌を依子が振り下ろした瞬間、五つの光の柱が空を裂いて雨雲から迸った!!




 神兵・神将の顕現を示す雷撃は、一人たりとも彼らを逃さなかった。


 鼓膜が破れそうな轟音と共に放出される、膨大な熱と光のエネルギーの奔流は微かな断末魔すら、腐り水の一滴すら残さずポンティアナを一瞬で平らげて塵へ還す。それだけでは飽きたらず、落雷の余波は周囲の木々を数本巻き添えにして真っ二つに割り、焼き焦がし、粉々に吹き飛ばした。


 その破壊力は恐らく、ホームズを倒した琴美の落雷術の十数倍はあるだろう。


「…………汚え花火だ」



 あまりの威力に阿呆のように口を開けて絶句した琴美と、ついに堪えきれなくなって爆笑し始めたシュレック子爵を尻目に、依子は空を見上げて一言口にした。




「「言ってる場合か!!」」



 危機は去った事を察して戻ってきた二人が、さっそくの突っ込みを入れる。


「おお、帰ってきたか腰抜けども」


「誰が腰抜けだこのスベタ!! ここまで派手に暴れたら隠密行動の意味ねえだろ!!」


「良いではないか、どの道これは罠だ。長谷川、そこの木に磔にされてる奴を溶かせ」



「はい?」


 涼しい顔で猛る志郎を受け流し、琴美へ指示する。指差した方向には、志郎の“片浪”で心臓を串刺しにされたポンティアナがいた。意図が掴めないが、言うとおりにする事にした。


 力なく痙攣していたポンティアナも最期は必死に暴れていたが、マグネシウムの光から逃れる術はなく、瞬く間にドロドロに溶けて消えていく。


「よし、ちょっとどいてみろ」


 何を思ったか、生首が遺した濁った水溜まりに依子が近付くと、棒切れを突っ込んで中を探りだす。


「おっ、あったかな〜?」



 やがて、細いチェーンに繋がったペンダントのようなものが引き上げられた。斧を象った鉄片には全員が見覚えがある。


「それ、アリオクの……」


 腐り水まみれのアミュレットを棒ごと地面に放り捨て、依子が呟く志郎へ問いかけた。



「お前は知らんだろうがポンティアナは黒魔術の化身だ。それが出てくる時点で明らかに人為的な要素が絡んでいる。この生首騒動は十中八九我々を誘き寄せるための罠だろうな。

 もしかしたら、この先には例のスカイスタンや殺人鬼どもが手薬煉引いて待ち受けているかもしれんぞ?」



 さあどうする、と試すような口振りで煽ってくるが、この程度では彼も動じない。



「罠だろうがここで引き下がれるか。今までさんざん無駄骨だったぶん、今夜で帳消しにしてやる」


「私も同意見です。今更引けませんよ。それに、逃げてばかりじゃ強くなれませんから」



 琴美も相棒の意見には同調を示す。どちらにせよスカイスタンと残る三人の殺人鬼と激突することは予想の範疇だ。



「そうか、ならばこのまま進むとしよう。ところで……」



 木に突き刺さったまま、ポンティアナが溶けた腐り水にまみれた脇差しを依子が引き抜き、


「これ、臭いから捨てていいか?」


 左手で鼻をつまみ、右手で汚れた雑巾をつまむような手つきで志郎の鼻先に突き付けてくる。


「いや、捨てねえよ? これだっけけっこう高いんだからな」


 しかし、手拭いを取りだし、酷い臭いの液体を拭き取るその顔は鋭敏な嗅覚を悪臭で刺激され、哀れなほどねじ曲がっていた。


 それをどうにか払拭するのに、思ったよりも時間をかけたことだけ追記しておく。






 登山道から鎮守の杜を抜けて、遂に目的地の泥谷の神社へ五人は到着した。



「誰もいないですね」



 拍子抜けしたように琴美が呟く。


 静かに神殿の前に歩み、意識を周囲に飛ばしてみるものの、周囲はしんと静まり返っている。

 少なくとも目に見える範囲では今のところ人の姿はない。


「いや、油断は禁物だ」



 対称的に鳥羽の口調は厳しい。


 社務所などは特に無いが境内はそれなりに広く、神殿の床下や周囲の木々など身を隠すスペースは十分にある。罰当たり共が本殿に隠れている可能性も否定はできないだろう。


「狗賀君、臭いで何か分からない?」


「……さっきので鼻がバカになってるからよく分からん」



 悪臭に鼻っ柱をぶん殴られたお陰で目は充血し、風邪か花粉症のようにぐずっと鼻水をすすっている。ポンティアナとの戦いは意外なところで後を引く事となった。

 嗅覚が鋭いというのも考え物である。




「鬱陶しいし汚いな。そこで手と顔でも洗ってこい」


 涙目で鼻水を垂れる彼に辟易したか、依子が参道と境内を隔てる鳥居の横に備え付けられた手水舎を指差す。



「あー、そーする」


 足元へ数時間ぶりの硬い感覚を伝えてくる石畳に靴の泥を落としながら、志郎がふらふらと手水舎へと向かう。




 境内は本殿から鳥居までには長く石畳が伸び、それ以外の敷地には白い玉砂利が敷き詰められている。

 地域住民の有志による清掃なども比較的こまめに行われているお陰か、落ち葉等もあまり見当たらない。

 神道流を長く学んでいる影響で神社にはそれなりの敬意を払う癖のある志郎にとって、泥で汚してしまうことには若干の申し訳無さを感じなくもないが、仕方ないと割り切る事を決めた。



「冷てっ!」


 水に手が触れた瞬間、思わずそんな声が漏れた。



 元々この神社は水不足に喘いでいた時に山から湧き出した水を神の恵みとして奉ったのが始まりで、現在も本殿の裏手には小さな清水が湧き出ている。

 手水舎も湧き水を引いているため、清々しいほどに冷たい。


 その清涼な水の中へざぶりと手を突っ込み、掬った水を直接顔に浴びせかける。


 無作法もいいところだが、このくらいはせねば生首どもの腐り水の悪臭は志郎の鼻から離れてくれない。何度もそれを繰り返し、清潔な手ぬぐいで肌が赤くなるほど強く手と顔をぬぐうことでようやく染み付いた臭いが薄まり、元の嗅覚が戻ってきた。


 ふうう、と安堵の息を吐いていると、鳥居の向こうの参道に何者かの気配を感じた。


 黒い人型が四つ、下手糞な操者による人形劇を思わせるいびつな足取りで、石階段を登ってくるのが見える。





 その様子の不審さに首を傾げかけるのとほぼ同時、それらの影が闇の中を飛翔した!!




 四つの影はそれぞれ刃の輝きを伴っている。反りのない大振りな直刀には見覚えがある。ハールマンとの戦いで援軍に現れた連中の武器だ。


 体裁きも突き込む角度も乱雑だが、四人分の体重を乗せて刺突してくる凶刃をまともに受けてはたまらない。


 頭を低くして、疾風のような速度で逃れる。


 先刻まで立っていた位置に四つの刃が突き刺さった。間一髪というほど危うくはないが、それでも危機感は増す。



「出やがったな、下忍ども」


 吐き捨てるような台詞が聞こえているのか否か、四人の襲撃者が直刀を不恰好に構え直し、切っ先を向けてくる。


「狗賀君、大丈夫!?」


 突然の敵襲に離れた位置にいる相棒からの心配が飛ぶが、平気だと軽く一言返して、居合い構えを取った。

 

 油断なく周囲に視線をめぐらせると、四人の敵がじりじりと前後左右に包囲を展開していく。


 その姿を確認すると、やはり全身を頭頂から爪先までぴっしりと覆うスーツをまとい、瞳はゴーグルで隠されている。上半身には防弾チョッキを装備し、腰にはボウガンがあった。


「ふむ……?」


 以前戦ったアリオクの構成員は全て成人以上の男と思われるが、この四人は志郎と同等かそれ以下の背丈に見える。更に体型も胸や尻が張り出しているのがスーツ越しでもわかった。


「畜生、女かよ。胸糞悪さが増すぜ」



 べつだんフェミニストというわけでもないが、それでも異性を手にかけて喜ぶ悪趣味はない。陰鬱な気分のまま、刀の鯉口を切った。



 なめくじのような鈍い歩みだが、四人の包囲はすぐに狭まった。刃が志郎の肉体を引き裂ける距離にたどり着いた刹那、唸りをあげて直刀が振り下ろされる。




「りゃあああああああああっ!!」



 しかし、その攻撃が届くよりも遥かに早く、抜き打ちからの四連撃が包囲を破る。


 田宮流居合い術“夜嵐”を受けた襲撃者たちが、血の糸を引いて仰け反った。


 その隙をついて志郎が包囲から抜け出す。一連の動作は抜き払った刀を鞘に戻すまでの間に完遂された。





 これがほんの少しでも遅れていたら、志郎は全身をばらばらに切り刻まれて、人間の原型すら残さず死んでいただろう。






 仰け反った四人の胸が次の瞬間、逆十字の形に裂けたのだ。


 志郎は知らなかったが、GODを逆に綴るとDOGになることから犬の十字架と呼ばれるマークであり、古代の魔術結社にしばしばシンボルとして利用されている。


 犬の十字架から高圧で噴出される血液はまるでダイヤモンドの加工などに用いられるウォーターカッターのような切れ味を以って、それぞれの正面の相手を切り刻んだのだ。


 一瞬のうち四人ぶんの細切れが出来上がり、石畳と玉砂利が一面血と臓腑の海と化した。


 かろうじて細切れになることを免れた一人の頭部が、足元へごろんと転がってくる。ずたずたにされたマスクの下から現れたのは、中高生程度の少女の顔だった。


 愛らしい造形をしているが、既に血の気を失い土気色になった顔が虚ろに志郎を見上げてくる。それが強烈な罪悪感と嘔吐感を呼び寄せた。


 駆け寄ってきた仲間たちが彼に声をかけようとしたその時、




「あははははははははっ!! 可哀相な事をするじゃないの!!」



 さも愉快そうな口調の女の声が、境内に響き渡った。



「テメエはっ!!」


 弾かれたように声の方向を向くと、神殿の屋根に真っ赤なドレスが見えた。

 

 あの殺人鬼のひとり、サーベルを携えた豪奢な赤毛の妖女だ。その傍らには着流しの男と甲冑の巨漢も控えている。


「ようこそ、狼の末裔よ」


 そして、間違えようもない、宿敵のしわがれた声が頭上から降り注ぐ。


 鳥居の上に、黒いマントの怪人の姿があった。



「スカイスタン!!」

 


 怒声への返答代わりとばかりに、マントを翼のように広げて怪人が闇夜を飛んだ。


 鳥居は日本神話の霊鳥・常世長鳴鳥(とこよのながなきどり)の止まり木を起源とする説がある。

 その鳥居からマントをたなびかせて飛び立つ怪人の姿は、まさしく災厄を運ぶ不気味な怪鳥を思わせた。


 音もなく神殿の前へ降り立つと、その背後に三人の殺人鬼たちが降り立ち、周囲に続々と足音や人の気配が生まれてくる。


 恐らくは神社の周囲にアリオクの構成員たちが隠れていたのだ。


「やはり、罠だったな」


 鳥羽がやけに冷静な声で呟く。依子とシュレック子爵は相変わらずの笑顔である。


 志郎と琴美は、緊張した面持ちで敵と対峙している。




「改めて紹介しよう、私が復活させた残る三人の殺人鬼だ」



 スカイスタンの命を受けて、魔剣士たちが前へ出る。


 志郎達から見て左がドレスの女、中央が甲冑の巨漢、右が着流しの男という並びだ。


 しわがれた独特の声で、順に妖術師がそれぞれの名を呼んでいく。






「エリザベート・バートリー」


 闇に映える真紅のドレスの裾をたなびかせ、赤毛の美女が細身のサーベルを誇示するように一振りした。




 エリザベート・バートリー。

 自身の美と若さを保つために年若い女性達を同性愛行為の末に殺害し、その血で湯浴みをしたことから『流血の伯爵夫人』と呼ばれた16世紀ハンガリーの貴族令嬢である。


 1560年、小カルパチア山脈に囲まれた古城で生を受け、幼少期より類い稀な美貌をうたわれていたが、同時に感情の起伏が激しく、非常に残忍な性格の持ち主だったという。


 バートリー家は強者(バートル)の異名を持つブリッキウスなる人物を祖とし、ローマ帝国およびオーストリア帝国の王家の血筋たるハプスブルグにも連なる名門中の名門だが、血統を守るために近親結婚を繰り返した結果、淫乱性や残虐性といった狂気が顕著に現れていた家系でもある。


 彼女も若い頃から遺伝性の偏頭痛持ちで、頭痛が起こると女中に噛み付いて肉を喰い千切り、悲鳴を聞くことでそれを和らげていた等と言われている


 15歳で900年以上の歴史を誇る代々の軍人一族であるナダジー伯爵家に嫁ぎ、ニートテ地方のチェイテ城に移住したことから、全ての悲劇・惨劇が始まった。


 夫婦仲は悪くなかったが、夫フェレンツェは『黒い英雄』と呼ばれた当時の国家的英雄である故にトルコとの戦争で留守にしがちであり、逆に口うるさく自分を監視下に置こうとする姑ウルスラとは不仲だった。更に、当時のハンガリーはルネサンス期の文化的繁栄から取り残された発展途上地域であることも無関係とは言えないだろう。


 姫君として不自由のない生活から一転しての孤独や、華やかな社交界もない退屈が後年の暴走に繋がったことは想像に難くない。



 殺人鬼としての本領が発揮されるようになるのは1600年頃、夫と姑が相次いでこの世を去ってからだった。


 老いを感じていた時期に粗相をした女中を打ちすえ、その際、鮮血を浴びた肌が若さを取り戻したように見えた事が原因というのが定説だが、とにかく若い娘の生き血が美容に効果があるという思想に魅入られた事は確かである。


 召使い達に近隣から若い娘を女中としてかき集めさせ、弄んだ後は『鉄の処女』と呼ばれる拷問具や、内側に無数の鋭利な鉄の刺をつけた巨大な鳥籠で彼女らの血を絞り、浴槽に貯め、滴る血でシャワーを浴びた。


 美容のためばかりではなく、時には城にたどり着いたばかりの女中達を着飾らせて宴に招き、暗闇で下男たちに悉く首を刎ね飛ばさせると、その屍を眺めながら料理を平らげるという異常な晩餐を開くこと等もあったと言われている。



 犠牲者は300〜400人はくだらないと言われ、夫の存命中から見られたレズビアン・ナルシスト的傾向、生活環境に対する長年の鬱憤、淫蕩・残虐なバートリー家の血が一挙に爆発したかのような凶行であった。だが、行儀見習いと称して貴族の子息女までもその手にかけ始めたことから1610年、従兄弟にあたるサルーゾ伯爵に討伐令が出されようやく逮捕となる。


 拷問に加担した下男ツルコ、乳母イロナ・ジョー、執事ヨハネス・ウィヴァリー、魔術師ドロテア・ツェンテス、巫女ダルヴァリらは手足の指を一本ずつ抜かれるという拷問の末、火炙りや斬首の極刑を受けたが、その地位と血統故に彼女は窓や扉を漆喰で塗り固めた部屋へ幽閉となり、1614年に死亡が確認された。


 現在でもその名は『串刺し公』ヴラド・ツェペシュと並ぶ吸血鬼伝説のモチーフとして、恐怖と共に語り継がれている。




「ジル・ド・レエ」


 甲冑の巨漢が、その体躯に相応しい長大な刀身を備えた剣を、腰の鞘から一息に抜き払った。



 ジル・ド・レエ。

 十五世紀のフランス百年戦争末期において『オルレアンの乙女(ピューセル)』ことジャンヌ・ダルクと共にイギリス軍を撃退し、シャルル七世を王位に就かせた功績により、若干25歳で最高の名誉である元帥の称号を叙された救国の騎士にして、数多くの児童を黒魔術の生け贄に捧げ殺害した大量殺人鬼という、相反する二面性をもつ人物だ。



 1404年ブルゴーニュ地方の大豪族クラン家の当主として生まれ、11歳の時に両親を亡くしてからは、シャルル七世の側近アンジェ伯の副将であった母方の祖父ジャン・ド・クランに育てられる。


 ラテン語を流暢に話す知識人としての深い教養に加え、猛将と名高い祖父に叩き込まれた軍事能力も高く、また馬術・弓術・剣術などにおいても彼に敵うものはフランス国内に殆どいなかったという。


 優れた知性・武力だけでなく、母方の縁故によって有力領主レエ家の所領を相続し(これを機に家名をレエと改めている)、更にクラン領に隣接したトアール家の娘カトリーヌを妻にすることで所領の一部を割譲させたため収入は倍増。1432年に他界した祖父から相続した財産もあわせて、経済面においても一代で国王を上回ると言われるほどの資産家となった。


 ここまでなら順風満帆過ぎる人生であるが、1429年コンピエーニュでの戦いにおいてイギリス軍にジャンヌ・ダルクが捕縛され、宗教裁判にかけられてしまう。


 国王が身代金を支払えば捕虜は釈放されるはずだったが、戴冠式を終えたシャルル七世はジャンヌ・ダルクとそれを支持するジルら主戦派を更迭・左遷してイギリスとの和平交渉を推し進めていた。


 その変節に反抗する意味でジャンヌが出撃した最中で起きたこの状況は、国王にとって邪魔者を始末するには願ってもないものだったに違いない。


 ジルの必死のゲリラ戦もむなしく、翌年ジャンヌは魔女として火炙りの刑に処され、シャルル七世はそれに何の行動も起こさなかった。事実上、捨て駒にされた形である。


 それ以降は騎士としての情熱を失ったのか、ジルは元帥の職務を放棄し居城に引きこもると、湯水のように金をつかう異常な浪費家へと変貌した。


 きらびやかな鎧で着飾った200人ほどの親衛隊を結成し、更にその下にはこれまた立派な身なりの下僕をあてがったりは序の口で、貴重な文書を保管した図書館や約80人の聖職者が生活できる礼拝堂を建立したり、荒い金遣いが目立つようになる。


 また、ジルお抱えの聖歌隊は歌声の精度の高さもさることながら、見目麗しい美少年ばかりであった。少年愛の嗜好をもつジルにとって、この聖歌隊は淫らな欲望を満たすハーレムとしての役割も兼ね備えていたのだ。



 オルレアンで毎年催されている演劇イベント『オルレアン解放のための神秘劇』にもジルは参加しているが、1434年に行われた野外劇は彼の台本・脚本・構成によりジャンヌによるオルレアン解放が、数日間の上演で忠実に再現されるという類を見ない規模になった。

 ジルはこの劇に動員された俳優の出演手当や衣装代、果ては見物客に振る舞われた食事やワインの代金まで全て負担しているというからただ事ではない。


 莫大な財産はあっという間に困窮したがそれでも浪費は止まることなく、やがてジルは現状打破のために異端として厳しく取り締まられていた錬金術へ傾倒し始める。それが倒錯した少年愛と合わさることで、いつしか悪魔崇拝者へと変わってしまった。

 黒魔術師フランソワ・プレラーディの指導のもと、バロンなる悪魔を喚び出すための儀式の中で、領地からかき集めた多くの少年を強姦・殺害するうち手段と目的はすり変わり、やがて切り取った手足や生首を並べて品評会を開き、気に入ったものをマントルピースに飾って鑑賞するという凄まじい残虐趣味をもつに至ったのである。


 犠牲者の総数は裁判記録によると800人以上であり、さすがにこれは誇張と思われるが、それでも信憑性の高いとされる資料『ラルース二十世紀辞典』ですら200人とされ、召し使いのアンリ・グリヤールとエティエンヌ・コロリーも36〜46人の死体を見たと証言している。また所有地のシャントーセ城では子供の亡骸を詰め込んだ樽が見付かったとも言われ、やはり夥しい数の子供たちが彼の毒牙に掛かったのは事実であろう。


 1440年、土地売却によるトラブルで、ジャン・ル・フェロンという司祭がジルに監禁され暴行を受けたと司教に訴えたことが引き金となって異端審問にかけられ、ジルも最期の時を迎えることとなった。

 敬虔なカトリック教徒である彼は異端を宣告される恐怖に勝てず、錬金術研究と悪魔崇拝、子供たちに対する男色・殺人の事実を認め絞首刑に処され、後に遺体は焼却されている。


 フランス救国の騎士から幼児虐殺魔としての転落は、グリム童話『青髭』のモデルにもなり、歴史上に悪名を強烈に焼き付かせる事となった。




「イゾー・オカダ」


 深編笠を目深に被った黒の着流しの男が、黒鞘に納めた二尺三寸の名刀・肥前忠広の鯉口を切り、居合い構えを取る。



 岡田以蔵。

 幕末の土佐で郷士達によって結成された、尊皇攘夷を掲げる倒幕派集団『土佐勤皇党』に参加した事で知られる剣客である。

 殺人鬼と呼ぶには少々の語弊があるが、それでも日本史上において恐らく最も有名な暗殺者の一人である事に違いはない。


 天保九年(1838)、土佐の江ノ口村の郷士・岡田義兵の子として生まれ、郷士のなかでも最下層である足軽の身分を継ぐ。

 勤皇党の党首・武市半平太に師事し小野派一刀流を、そして江戸に上洛してからは当時隆盛を極めていた三大道場のひとつ『試学館』で鏡心明智流を学ぶが、それ以前から我流で磨いた剣の腕前は卓越したものだったという。

 その腕を買われて勤皇党の〈天誅〉と称する暗殺の多くを遂行し、中村半次郎(桐野利秋)、田中新兵衛、河上彦斎らと共に倒幕派『四大人斬り』に数えられた。


 彼の〈天誅〉による犠牲者は、吉田東洋暗殺の下手人について捜査していた、土佐藩士の井上佐市郎がまず最初の記録に上げられる。

 ちなみにこの井上が暗殺された際、凶刃を幸運にも逃れて生存したのが、現在も日本を代表する大企業のひとつである三菱グループの創設者・岩崎弥太郎というのは有名だ。


 これを皮切りに宇郷玄蕃、目明しの文吉、賀川肇、池内大学といった倒幕派が弾圧された『安政の大獄』の関係者や、渡部金三郎、上田助之丞、森孫六、大河原重蔵ら京都奉行所の四与力らを立て続けに殺害し、土佐の人斬り以蔵の名を幕末の動乱期に轟かせる事となった。

 その他にも自身と同じく勤皇党所属だが、言論を内部で疎まれていた本間精一郎の粛清にも参加しており、記録に残るだけで20数件もの暗殺に関与したとされる。

 しかし気品や立ち振舞いの美しさを重要視する鏡心明智流門下では、山野で野良犬相手に編み出した惨殺剣は浮いたものでしかなく、やがて汚れ仕事ばかりを進んで請け負う為に勤皇党内部でも疎まれる事となった。


 勤皇党が失脚した『八月十八日の政変』以降は、同郷の坂本龍馬の紹介で勝海舟の護衛を勤めていた時期もあったが、後に酒と女に溺れて身を持ち崩し、無宿人鉄蔵などと名乗って押し込み強盗を行っていたところを捕縛され、土佐へ強制送還。


 拷問の末に勤皇党の行った〈天誅〉の全てを暴露したことで組織の壊滅を招いた上、自らも慶応元年(1865年)に斬首され、28歳の若さで刑死した。



 姉小路公知が暗殺された『朔平門外(さくべいもんがい)の変』の容疑者として捕縛され、当初は容疑を否認していたものの、現場に残されていた愛刀を証拠品として提出された直後、監視の隙をついて自害を果たした田中新兵衛。


 維新後も幕末と変わらぬ過激な思想を危険視され、無実の罪で処刑された河上彦斎。


 西南戦争の際にも将校として西郷隆盛へ付き従い、壮絶な戦死を遂げた中村半次郎。


 非業の死を迎えたという点については他の四大人斬りも共通しているが、彼らと比べるだけでも以蔵には泥臭さ、血生臭さの漂うテロリストとしてのマイナスイメージが強く付きまとう。

 故に、他の倒幕派志士のような死後の名誉回復も殆ど無いままに今日まで至っている。



「とんでもない顔ぶれね」


 冷や汗をたらしながら、琴美が隠しきれないほどの緊張とともにそう口にする。


 ホームズやハールマンのような比較的近代の殺人鬼だけでなく、数百年前の人間まで蘇らせるとは、やはりスカイスタンは希に見る実力者に違いない。


「この間から気になっていたのよ、お嬢さん」


 媚びる様な甘い声とともに、頬を赤く染めたエリザベートが琴美へ視線を向けてくる。同性愛者の彼女は若き魔女へご執心のようだ。


「おあいにく、間に合ってますわ!」


 杖を構えて、それを強く睨み返す。


 そして、岡田以蔵は既に鹿島神道流の少年剣士と睨み合っていた。


 歴史にさほど詳しくない志郎でも、人斬り以蔵の名は知っている。


 伝説の剣豪との戦いに、剣嫌いと公言する彼の心すらも昂ぶっているようだ。



 張り詰めた空気の拮抗を破るように、エリザベートが砂塵を巻いて飛び、以蔵が腰の刀を抜きつけた。


 琴美がサーベルを杖で受け流し、志郎は正面から同じく抜刀術で迎え撃つ。



 凄惨な乱戦が、今ここに開始された。


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