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第112話 「ラビット庄へようこそ!」

そうして馬車に揺られ揺られ。

ラビット達の本拠地、西境村へと到着した。


「西境村、通称ラビットしょうとも言われますわ」

「へえ」


村を眺めると、小さな丘が連綿と連なり、そのひとつひとつが家になっている。

丘の脇が垂直に削られ、そこにじかに丸扉がはめ込まれている。

こうしてラビット族は半地下を家として生活しているそうだ。

ウサギも地下だし、指輪運び(ポーター)も地下だ。

いろいろ共通点があるな。


小さな池のほとりではぎっこぎっこと水車がまわり、粉を挽いている。

すぐそばの小さな広場に隣接して、平らな一階建ての酒場が。

なんだかのんびりとした空気だ。


「アレがエラノール地区の目印よ」


カシスが指差す先には、丘のむこうの高い塔。

装飾のない素朴な、黄土色の塔である。


「美しき髪の塔とか呼ばれているわ」

「ラプンツェル?」

「さあ……わかんないけど」


髪長姫ラプンツェル童話にあるような、貴人を閉じ込めるような塔には見えない。

かなり質素で、田舎臭い。

逆にほっこりとした安心感がある。

そうだな、さっそくあそこに……、


「まずは村長に挨拶ね」

「ああそうか」


そうだね。

この中世世界。

挨拶や礼儀はとても大事なのだ。

それはニンジャの世界でもこの世界でも変わらない常識ルールである。


------------


金髪を短く刈り込んだ少年。

彼がこのラビット庄、西境村の村長さんである。

歳は見た目ではわからない。


「やあやあ!妹、カンパネラはどうしていたかね!」

「元気でしたよ!」

「それはいい!じつに朗報だ!」


彼はなんとカンパネラ船長の兄者あにじゃだった。

名はアスターといい、妹と同じく快活な性格だった。


「ではではご客人、どうかどうか心ゆくまでこの田舎を楽しむとよい!」


パイプをくゆらせ、ヤシシと笑う村長どの。

不思議とそのタバコの匂いは、甘く優しい芳香がした。

彼からも同じ雰囲気がただよう。


であるなら、彼には打ち明けてもいいだろう。

そんな直感があった。


------------


「……そうか」

「ええ」

「それは、辛かったろうな」

「そうですね」


パイプを片手に、暖炉の前で村長と語らう。

となりには同じまれびとであるカシスの姿。

彼女も、ゆっくりと紅茶をすすっている。


「師匠どの。君はこのフローレス島の習わしを、いずれは大陸の常識にしたいと」

「そこまでいかなくても、まれびと狩りなんてものがなくなればそれで」

「ふうむ」


ぽすぽすと、パイプに新たな葉っぱを追加するアスター氏。

ちなみに彼も見た目は幼い少年にしか見えない。

しかし、明らかに俺より年長者だとわかる風格がある。


「それはな、とてもとても難しいぞ」

「……そうですか」

「だからこそな、私は君たちを応援しよう」

「ありがとうございます」


「なになに。君ら異客まれびと無碍むげにしてはな、美しの塔に怒られてしまうのでな」


ヤシシと笑う村長。

暖炉の火がばちりと爆ぜる。

カシスも静かにその火を眺めている。


------------


そのまま村長宅のお世話になり。

……夜にこっそり抜け出して、イリムとしっぽりとかはあったけど。

そうして次の日、まれびと地区たるエラノール地区へと訪れた。


ここへはカシスとふたりでだ。

……異世界人は、不要なトラブルを招くことがあると。

記憶のフラッシュバックに襲われる人もいる。

まあ致し方ないだろう。



大きくて素朴な塔から先では、見知った顔にたくさん出会えた。


アレだ。

まあ平たい顔族だ。

もちろんちらほらと外人さんもいたが。

圧倒的に多数は日本人だった。


なぜなのだろうか。

今の時点では判断材料に乏しく、仮説すら立てられない。


「私がこのエラノール地区代表のサトウと申します」

「どうも」

「カシスです」


まれびと同士、挨拶をかわす。

サトウさん……アレか。

日本人名字ランキングトップの方か。


ちなみにレア名字で言うと、中学の同級生に小太刀こだちがいた。

もちろんそいつは小太刀二刀流だの回天剣舞だの呼ばれていた。


……それから。


最初はさぐるようにゆっくりと。

だんだんと大胆に。

まれびと同士の話は咲きに咲いた。


「はあー、フロムの最新作ですか」

「舞台は戦国時代ですね」

「なんと、むちゃくちゃ意外ですねぇ!」

「難易度もめっちゃ上がってましたけどね……」

「ハードは5ですか?」

「いや、まだ4です」


サトウさんも十分ゲーマーだった。

カシスはどうやらムズゲーはやらないらしく蚊帳の外だ。


「あのさ、あれは?」

「うん?」

「ユグドラシルとかでてくる、フェイスチャットが画期的だったアレよ!」

「オマエの例えはいちいち古いよな……」

「なによ!」


こいつはホントに俺より年下なのだろうか?

今までのこいつと交わしたオタ話でも、カシスは古めのゲームをあげることが多かった。

俺より昔から転移してきたのかと一時は疑ったが、ちゃっかり有名スマホゲーは知っていたので、そういうわけでもない。


「あのさカシス」

「なに?」

「実は中身おっさんの転生でJKになっちゃったぜウヘヘとか……」


ドボグシャアアアアアアアア!


俺の腹に容赦のないボディブローがかまされた!!

ちなみに今の擬音に誇張はまったくない。

マジでまったくないのだ。


「ぐふうぅぅぅっ!!」


ゴロゴロと地面をたっぷり3mは転がった。


「そろそろアンタのエラーマイレージがカンストするわよ」

「溜まり切るとどうなるんです?」


楽しそうに突っ込むサトウさん。


「奇跡がおこるわ」

「素晴らしいですね!」


14キロのストロング飲料か。

文学かよ。


体をくの字に曲げつつなんとか立ち上がる。

そうした俺にサトウさんが歩み寄る。


「師匠さん……彼女はイイですね」

「はい?」


「僕はですね、好きなんですよ」

「なにがです?」


「ああいう、ひと昔まえの暴力系ラノベヒロインが!」

「叫ぶなよ突然、耳がキーンとしたわ!!」


「できることなら、彼女に蹴られる私でありたい!」

「なんだよそれ」


「ほむほむのですね、名言でしてね」

「いやもういいから!」


くそぅ、なんだか知らんが偶然か必然か。

ここに居るまれびとはオタクが多いような気がしてならない。

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