プロローグ
今回は……間に合わなかったか。
小さな街道沿いに並ぶ木々のひとつに、男の死体がぶらりぶらりと揺れている。
首にロープ、体中に打ちすえられた跡。
まあ……65点といったところか。
平均点、人並み。
もっとひどい遺体はいくつもあった。
――周囲を感知する。
おおよそ1km圏内は問題なし。
後ろで控えている仲間も特に警告してこないので、俺ではわからない視線や監視の目もとりあえずクリア。
「カシス、頼む」
仲間のひとり、黒髪の少女がするりと滑るように木に登る。
ロープの結び目を確認し、
「これなら楽勝。すぐほどけるから準備して」
「OK」
ほどなく落下してきた遺体を、地面すれすれでふわりと着地させる。
と、同時に首に巻き付いたロープだけを焼き切る。
遺体の服装、所持品などを簡単に検める。
……うん、間違いなし。
「できましたよー、師匠」
と仲間の声。
彼をカシスといっしょに担ぎ、仲間が開けてくれた穴へと放る。
今度も、地面に叩きつけられぬよう注意して着地させた。
穴は2メートルほどあり、これなら野犬に掘り返されることもない。
魔狼や狂狼は……ちょっとわからんが。
いやでも火葬するから大丈夫なのか、そこらへんの知識は残念ながらない。
「じゃあみんな、離れてくれ」
いつもどおり、俺とカシス以外の仲間は離れ、遠巻きにこちらを見ている。
獣人の少女……イリムは穴を開けてくれて、このあと穴を埋める役目がある。
トカゲ族の青年は、黙ったまま周囲に鋭く視線をまわしている。
残りふたりのともにローブ姿の彼女らは、あまり関心がない、といったふうだ。
それでも、警戒はしてくれているので助かる。
「じゃ、やるぞ」
「OK」
葬式の手順は知らないし、なにかの宗派に入っていたわけでもないので自己流だ。
目をつぶり、まあ……成仏してくれよ、と10秒ほど黙祷。
目を開け、カシスのほうをみると彼女も「ん」と頷いた。
ふたりして穴から離れ、遺体に火を放つ。
穴からみるまに炎が上がり、5秒とたたず火葬は完了した。
空へと上がる煙を眺める。
あの煙は、魂は、どこの世界に還るのだろうか。





