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自動車運転方法論  作者: 南風吹太郎
第一章 運転の苦手な方のための運転方法論

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前の車へのついて行き方

 行列は作らないほうがいいものである。

 行列が出来ると前の車のペースの影響を受け、行列が長くなれば渋滞に発展することもある。なるべくならば車はそれぞれに距離を取り合って走るべきものである。自分より遅い車は追い越し、自分より速い車には追い越してもらい、それぞれが離れて走行すべきである。

 しかし日本は狭い。どうしても行列を作らざるを得ない場合は多い。

 本項では行列が出来た場合の、前の車へのついて行き方について述べる。


 もっとも理想的な行列における走り方は、連結された列車のような形である。車間距離をまったく変えず、前がブレーキを踏んだら同じだけブレーキを踏み、全台が同じ速度で走れば最後尾の車までまったく同じように走れる。

 しかしこれは机上の空論である。『前がブレーキを踏んだ』と認識して自分もブレーキを踏むまで、人間にはどうしても時間がかかる。前の車と『同時にブレーキを踏むこと』は、人間には不可能なのだ。完全自動運転化されれば車間距離ほぼゼロでそれこそ列車のように走れると言われているそうだが、とりあえず人間にそんなことは無理であるし、私は完全自動運転化した時の交通の流れはとてもイライラするものになるだろうと予測している。


 人間が自動車を運転している現状においても、しかし列車のような運転は、行列時において求められるべきものであると私は思う。

 あるいは伝導率の高いスピーカーケーブルのような走り方だ。伝導率が高いとソースの良い音をスピーカーに届けることが出来るが、伝導率の低いケーブルだとスピーカーから出力される音はひどく劣化したものとなってしまう。

 なるべく先頭の車の速度を劣化させずに後ろまで届ける運転が、行列時において安全と円滑を実現させる良い運転なのである。


 バネで連結された列車をイメージしていただきたい。

 速度が上がればそれは伸びながら、少し遅れながらも離されることなく前について行く。

 速度が下ればバネは縮む。しかし縮みきった長さよりも縮むことはない。

 人間による運転においては、この形が理想であろうと私は考える。


 これを道路交通の現場において実現するために最も必要なものとは何か? 何よりそれは『車間距離』である。


 車間距離がバネとなるのだ。自動運転ならば車間距離ほぼゼロでも走れるのだろうが、人間がそんな走り方をしては危険なことはもちろんである。判断の遅れやミスを補うものとしてバネが必要とされる。


 しかしここで言わせていただきたい。日頃道路交通を見ていて、車間距離をバネとして使えている車は、ほとんどいない。


 99.9999%の車は前が遅くなったらそれよりも遅くなる。

 私が高速道路の左側車線を84km/hで走っていて、追い越し車線の列が87km/hで流れている時、後ろから100km/hでやって来た車は、前に追いつくなり必ず私よりも遅くなるのだ。


 これを『バネ』とはいわない。


 バネが縮む時、けっして前の車よりも遅くなることはないのである。


 また、行列を作って走っている時に、前が急に遅くなると、ぶつからないようにと思うのか、後ろはそれ以上にガクンと遅くなったりする。

 私に言わせればこんなことはあり得ない。なぜかといえば、私は予め車間距離をとっているからだ。

 車間距離をじゅうぶんに取っていれば、それを緩やかに詰めることで、前のショックを吸収することが出来る。少なくとも『前の車よりも遅くなる』などということはあり得ないのである。


 ここで私の言う『前の車』とは『1台前の車』のことではない。『前の車列の平均ペース』のことだと思っていただきたい。


 赤信号で停止する時の車の動きをイメージしてみてほしい。前の車から順々に止まっていき、後ろの車は速度ゼロの先頭車よりも遅くなることはけっしてない。

 行列で前の速度が落ちる時も同じなのである。前の車が一時停止したからといって、後ろの車がそれよりも遅くなることはあり得ないはずである。

 しかし実際の道路交通を見ていると、99.9999%の車は前の車よりも遅くなる。

 車間距離をじゅうぶんにとっていないからだ。


 ここにおいて、それよりも最悪な走り方が存在する。

 車間距離を広くとっておきながら、前の車よりも遅くなるような走り方が最悪である。

 車間距離をとっているならゆっくりと前に詰めていかなければ意味がないどころか、後方に与える悪影響は最も甚大となる。

 その車間距離は全体にとって単なる『無駄』であり、その無駄に大きな穴のぶん、後続へのシワ寄せは深刻なものとなる。

 スピーカーケーブルのたとえでいえば、音を劣化させるどころか止めてしまうようなものだ。


 車間距離を予めとっておき、前が停まりそうなのが見えたら、そのお尻に向かってゆっくりと近づいていってほしい。

 1台前の車のスピードが急に上がったからといって慌ててついて行く必要はない。5台ぐらい前を見て詰まっているようならすぐにそれはまた遅くなる。


『行列時にはゆっくり走ったほうが速くなる』という格言がある。急いで走ってすぐに前が詰まって停止してしまうよりも、ゆっくりそこまで行ったほうが、たとえ20km/hでも0km/hになるよりは断然速いのである。ゼロ加速より途中加速のほうが速いのも当たり前だ。


 車間距離を予めとっていないとすぐに前が詰まり、前が詰まったら車間距離を空け直すことになってしまう。車間距離を空け直すということはつまり『前より遅くなる』ということだ。


 なるべく前のペースを劣化させて後ろに伝えてしまわないように、伝導率を高めるために、車間距離が必要なのだ。

 某巨大掲示板で「でもそんなことをしても自分には何の得もない」と言ったオッサンがいるが、少なくとも自車の燃費が良くなるし、何より交通全体に好影響を与える運転をすることに価値を見いだせないというのは、さすがオッサンだなぁと思った。あくまで自己中でいいと思っているのであろう。


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