ペースカー、渋滞吸収車の走り方に学ぼう
ペースカーという言葉はよく見ることであろうと思う。
渋滞が予想される地点にはネクスコのペースカーが走っていることがあるし、『ペースカー宣言』というステッカーを後部に貼っている車もよく見かける。
しかし、ネクスコのペースカーはさておき、『ペースカー宣言』のステッカーを貼っている車でペースカーの走り方をしている車は、少なくとも私は見たことがない。
ペースカーとはどういうものか?
答えは『ペースを作れる車』のことである。
その車が先頭を走り、後続車列にもそれに倣って走るならば、渋滞が起きることがない。
ペースを作れるとはどういうことであろうか? また、自称『ペースカー宣言』の車がペースカーの走り方を出来ていないその理由とは?
ペースカーの走り方とは『緩やかに走ること』に他ならない。それは『ノロノロ走る』とは違う。なるべくペースを変えずに『走り続ける』ことなのである。
60km/hでずっと走り続ける車も、40km/hになったり80km/hになったりする車も、平均速度が60km/hなら目的地に到達する早さは同じである。しかし、後続車はどちらの後ろのほうが走りやすいであろうか? これは当然前者である。前者の車について走る後続列はずっと60km/hで走れるが、後者の車について走るとギクシャクとすることであろう。それどころか後続列が詰まる。詰まるということはつまり、渋滞になるのである。
不思議なことだと思われるであろう。同じ平均スピードで走っているのに、前者の後続は60km/hで走り続けられる。しかし後者の後続はペースが遅くなってしまうのである。
これは後者の車のペースが緩やかでないからだ。速くなった時に『あ、スピード上がった』と思って後続がついて行ったところで急にガタ落ちする。後続をふるいにかけて揺さぶるような運転は、後続車列の車間距離をどんどんと詰まらせて行き、下手をすると後ろの後ろのほうでは速度がゼロになってしまう。
ここで活躍するのが『渋滞吸収車』である。
これは先頭ではなく列の途中を受け持つペースカーのことである。
某掲示板ではこの言葉が大人気で、自分の運転を正当化したい人に使いまくられている。しかし、そのほとんどの人が勘違いしてこの言葉を使っているのも事実だ。
渋滞吸収車の運転のしかたは『車間距離を広く取る』というものなのだが、彼らはこれを『何のために広く取るのか』を勘違いしている。自分が日頃車間距離を空けすぎる運転をしていることを正当化するためにのみこの言葉を使いたがるのである。
渋滞吸収車は『緩やかに走るために』車間距離を広く取るのである。ペースを変えず、やむなく変える場合にも加減速を緩やかにするためだ。そのために車間距離を『使う』のである。ただ単に自分の安全のためだけに空けているわけではない。
前の車が急ブレーキを踏んだら、その後ろに向かって緩やかに『詰めて行く』のである。前の車の急ブレーキを緩やかな減速に変換するのだ。後続のペースも緩やかになり、追突される心配もない。
これを車間距離空けすぎ上等派の方々は『車間距離は安全のために空けるものだから、詰めてはいけない』などと仰る。つまり、前の車が急ブレーキを踏んだら、車間距離が詰まらないように、同じように急ブレーキを踏むのである。車間距離をぱっかり空けたまま。こんなものを『緩やかな運転』とは言わない。後続車がもし車間距離を詰めていたら追突されてしまう。
『緩やかな運転』というのはいわば『速度変化の少ない運転』『速度変化をグラフにした時に曲線が緩やかなカーブを描くような運転』ということである。そういう運転をするために、車間距離が必要なのだ。
緩やかな運転は後続車のペースを乱さず、スムーズに流れさせる。しかし、あまりにペースが遅いと後続車の同意が得られず、やはり詰まってしまったりもするものだ。ネクスコのペースカーは緩やかだが、遅すぎるのが問題だとは言えるように思う。
『ペースカー宣言』のステッカーを貼っている車で緩やかな運転をしているのを少なくとも私は見たことがない。普通の運転である。普通、ということはつまり、速度変化をグラフに書いたらノコギリみたいな形になる運転のことである。
ペースを緩やかにするために車間距離が必要なのであって、車間距離を空けたままギクシャク運転をするために車間距離が必要なのではない。
これをわかっていない車が多すぎるように思う。




