2/13

上手な合流のしかた

　まずは『自分は運転が上手でない』と思ってらっしゃる方向けに、上手な合流のしかたを説明して行こうと思う。

　ここで早速口を酸っぱくして言っておきたいが、オッサン運転の真似をしてはいけない。

　あれは間違いである。

　オッサン運転における『うまい合流のしかた』とはどういうものであろうか？

　それは『盗むように』『急角度で』『ここに入るんだと決めたところに突っ込む』ようなやりかたである。

　そして最大の特徴として、オッサンは左側をぱっかりと空けて合流する。どういうことか？

　加速のための車線をまったく使わず、本線が見えたら即ウィンカーを出し、本線の車にブレーキを踏ませてでも、ねじ込むように合流するのである。

　合流のための列が出来ている場合は、先頭すらまだ合流を終えていないのに、本線に空きがあると見るや、急いでそこに頭を突っ込むのである。

　これでは交通全体がグチャグチャになる。

　決して真似してはいけない。

　旦那が手本を見せるようにそんな運転をしていても、妻はジト目で見てやるべきなのである。

　私が『上手な運転』という時、それは必ず『交通全体の安全と円滑を実現する運転』という意味だ。

　これをオッサンは『モタモタせずにオレだけが早く行ける運転（交通全体のことなど知ったこっちゃない）』だと勘違いされている。

　真似をしないように。

『ファスナー合流』という言葉がある。これは私の造語などではなく、基本的な合流の方法論だ。よく合流部に『交互に合流』と書かれた看板が立っているが、あれは『ファスナー合流しましょう』と促しているのである。

　ファスナーを閉める時、金具はどういう動きをするか？　交互に整然と噛み合って、綺麗に閉じる。あれがもし順番を守らなかったらどうなるか？　下のほうのファスナーが焦って先に閉じてしまったらどうなるか？　グチャグチャになる。

　合流もファスナーのように『前から１台ずつ、順番に』なのである。整然と、合流側と本線側が交互に噛み合えば、交通は常に流れることになり、渋滞など起きるはずもないのだ。

　前がまだ合流していないのに、横がちょうど空いてるからといって、そこに入ってはいけない。前が本線に入った時、本線側がじゅうぶんに車間距離を空けていなければ（そしてほとんどの場合、これが空けられていない）、本線の流れは一瞬遅くなる。あなたの横に空いているそのスペースはそれを吸収するためのクッションだと考えてほしい。クッションを埋めてしまったら、本線が、止まる。

　東名から圏央道に入る海老名ジャンクションには『並走してください』という看板が立ち、混雑時には音声でも促されているにも関わらず、特に大型トラックやトレーラーなどは、並走などする気もなく、すぐに隣車線に割り込んでしまう。あれではあそこが大渋滞になるのは当たり前だ。左車線から来た車はすべて、左車線がなくなる寸前までそのまままっすぐ並走し、先頭から１台ずつ合流すればいいところを、オッサンが率先してカオスにしてしまっている。本線との合流部分で実質３車線になるのだから、道路が広くなるそこまで待つべきだということなど考えればすぐわかるであろうに、急いで慌ててグッチャグチャの壊れたファスナーを作り出してしまうのである。そしてあれを上手い運転だなどと思い込んでいるのだから重症である。

　以上は渋滞時や混んでいる時の合流のしかたについての解説であった。

　運転に不慣れな方が個人的に苦手なのは恐らく、本線の流れが速い場合の合流であろう。

　本線の流れが速いから怖い、どこにはいったらいいのかわからない、といった悩みを抱えられているように思う。

　この場合、肝心なのは何よりも『加速車線をしっかり使う』、そして『加速することしか考えない』ということである。

　よく流入して来た車が加速車線をまったく使わずに、スピードもまだ乗っていないうちから本線に入って来て、本線の車にブレーキを踏ませ、グッチャグチャにしてしまっているのを見るが、典型的なヘタクソである。

　また、流入して来た車が本線の車より速かった場合に、スピードを落として自分よりも遅い車の後ろにつこうとするのをよく見る。恐らく『本線の車と並んでしまったらスピードを落として後ろに入りましょう』という合流の基本テクニックに従っているのだと思うが、じつはこれも典型的なヘタクソである。

　まずは本線の車との速度差を少なくすることが合流の最重要ポイントである。そのために加速車線を先の先まで使って加速する。

　本線と速度差がなくなれば、本線の車は自分から見て止まっているも同然である。自分が入るべき場所は、探すまでもなく、自然と見えてくる。『あそこに入ろう』などと思ってはいけない。入るべき場所は自分が選択するのではなく、自然に出来るのだ。

　加速車線で減速してはならない。してもいいのは唯一、微調整をする時だけだ。加速車線で急減速すれば本線と速度差が大きくなって入りにくくなり、最悪の場合は後続に玉突き追突事故を起こさせてしまう。

『本線の車と並んでしまったらスピードを落として後ろに入りましょう』というのは『微調整して』という意味であり、加速車線に入った時点で本線よりも自分のほうが速いなら、左から追い抜いて合流するべきなのである。

　以上、ポイントは３つである。

・交互にファスナー合流を心がける

・加速車線をしっかり使う

・加速車線では加速のみをし、本線と速度差をなくすことを意識する

　しかし日頃見ていると、加速車線を最後まで使うことばかり意識されているのか、加速車線のどん突きで止まってしまわれる車をたまに見かける。

　速度差をなくすことが目的で加速車線を使うわけであり、本線より遅く走ってはもちろん加速車線を使い切る意味がなくなってしまう。また、本線より速く走ってもやはりスムーズに入ることなど出来ない。

　本線とペースが合ったな、というところでウィンカーを出し、ハンドルをゆっくりと切り始めれば、どん突きまで行くまでに必ず本線に空きが生まれる。本線が車間詰め詰めのバカ状態でも、こちらがもう先がないのを見れば、本線の車も当てられるのは嫌だし、そんな意地悪さんばかりでもないので、必ず前を空けてくれる。そこに入らせてもらえばいいのである。

　間違っても怖がってブレーキを踏んで本線より遅くなったり、ぶつかる勢いで押しのけて無理やり突っ込んではいけない。

　また、たまに本線が見えたと同時にウィンカーをずーっと出しっぱなしにされるオッサンがいるが、あれではいつ、どこに入って来るのかさっぱりわからない。

　ちゃんと加速車線を使って加速をし、本線と速度差がなくなったところで『そろそろ入りますよ』という意思表示としてウィンカーは出すべきである。