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自動車運転方法論  作者: 南風吹太郎
第一章 運転の苦手な方のための運転方法論

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運転の下手なドライバーとは

 例えばバック駐車でなかなか枠の中にまっすぐ入れず、何度も何度も切り返しをしているドライバーがいるとします。


 このドライバーさんは下手なのか?


 運転の下手なドライバーとはそういう人のことを言うのか?


 そうではない、というお話をしたいと思います。




 道路交通法の理念は『安全』と『円滑』です。


 あえて極簡単に言ってしまうと、運転の下手なドライバーとは、この2つに支障を与えるドライバーのことです。


 逆に言えば、運転が上手いドライバーと言うのは『安全』と『円滑』を実現するドライバーです。それはつまり事故を起こさない、起こさせない『安全』なドライバーであり、かつ渋滞の原因ともならない『円滑』なドライバーということです。



 ではここで問題です。道路交通法を守ってさえいれば、『安全』と『円滑』が実現できるのでしょうか? 上手いドライバーとは、道路交通法を遵守するドライバーのことなのでしょうか?


 答えはまぁ、人それぞれということにしておきましょう。『その通りだ』と思ってらっしゃるドライバーさんのほうが大多数だという気がします。


 ただ、私はそうは思いません。


 そのことについてお話して行きたいと思います。



 例えば目の前で信号が黄色になった。予め信号が変わることに備えて微減速し、制限速度−7km/hで走っていたが、このまま止まらずに行けば確実に交差点進入時には赤になる。充分予測はしていたが、信号が変わるタイミングがあまりにもシビアで、停ろうとすれば急気味のブレーキになる。後ろには車間距離詰め詰めの行列が出来ている。

 ここでそのまま行くのは信号無視になります。ルール違反です。が、ここで停まるのは非常に危険です。なぜなら後ろの車間が詰め詰めだからです。玉突き衝突事故にもなりかねません。後ろの車も信号を見ているだろうなどと信じてはいけません。

 ゆえにここでは信号無視をするのが『安全』と『円滑』を重んじる上手いドライバーだと言えます。

 このケースの場合は教習所でもそう教えているはずです。『急ブレーキになり、追突されそうなら停まらずに行きなさい』と。まぁ、急ブレーキも違反ではありますからね。でも信号無視という違反も間違いなくしているわけです。

 だからこのケースに関しては私の持論ではないです。広く言われていることなので。


 次に私の持論に移ります。


 道路には制限速度があります。あるいはそれぞれの法定速度があります。

 道路はその速度でみんなが走っているでしょうか?

 公道を走った経験のある人なら誰でもわかるでしょうが、実際は違います。

 それぞれがそれぞれのペースで走っているのが実情です。

 これを『けしからん』とか『ルール守れや』とか言うのはもっともですが、

 なぜルール通りではなく、それぞれのペースで走っているのかを考えてみましょう。

 簡単ですよね。

 車は人間が運転するもので、運転している人間によって能力に差があるからです。

 また、飛ばすのがいいことだと思い込んでいる人もいれば、ノロノロ走るのが正義だと思っている人もいるでしょう。

 つまり色んな人がいるからです。


 それでもその道路の平均ペースというものはあるものです。


 この速度で走れば前につっかえず、後ろも詰まらないというペース。あります。それは制限速度とはあまり関係なく。


 さて制限速度とは『安全な速度』でしょうか? 決して安全な速度ではありません。本当に安全な速度とは『徐行』と呼ばれるような速度のことになります。


 少なくとも30km/hを超えていれば、それはすぐに停止できる速度ではないので、安定な速度とは呼べないでしょう。


 車を運転する目的は『なるべく早く目的地に着くこと』ですので、そういう『円滑』も考慮して、制限速度というのは40km/h以上もの『危険な速度』でも出してOKということになっているのです。


 制限速度というのは大抵、危険な速度です。でも初心者さんでも年配の方でも、この速度までなら『比較的』安全に走行できるという数字で定められています。


 しかし確かに全員が制限速度を守って走れば、制限速度は安全な速度と言えなくもないでしょう。道路は非常に安全になることでしょう。速度差がなくなれば、追い越しをする必要もなくなり、渋滞はなくなるかもしれません。事故も格段に減ることでしょう。


 しかし、それは理想論です。


 現実に、道路にはさまざまなペースで走る車がいます。


 制限速度では、運転に慣れた人には遅すぎるのです。


 こんな現実の中、それでも自分は正義を貫いて、制限速度で走る! という人は、果たして上手なドライバーでしょうか?


 その結論はとりあえずさておいて、


 平均ペースとの速度差が10km/h以上ある車が走っていると、道路は混雑しがちになります。


 20km/h以上あると混雑する上に危険にもなります。


 30km/h以上あると明らかに危険です。


 制限速度+20km/h以上のペースで流れている道路というのは実際、あります。


 そこを制限速度以内で走るのははっきりいって危険なことです。


 では、周囲に合わせて制限速度+20km/hで走ればいいのか?


 そういう話のように思えるでしょう。


 でもそうではないんです。


 私なら、そういう道は選びません。他にゆっくり走れる道があるならそちらを選びます。あるいは急いでいるなら件の道を制限速度+20km/h以上で走ることもありますが、急いでないならゆっくり走れるほうを選びます。


 片側2車線以上あるなら左側車線を動かずに走ります。自分よりゆっくりな車に追いついたら状況によっては追い越しますが、右側車線の車が途切れないならそのままついて走ります。


 ここでみんなに正義を強要するためにわざと両車線を塞いで制限速度の流れを作ろうとする方がいるようですが……


 確かに道路交通法は正義です。


 制限速度を守って走ることは正義です。


 ですが、それを守ると周囲の『安全』と『円滑』が脅かされるのなら、私は正義を破ります。


 道路交通法の理念は『安全』と『円滑』なのです。そちらのほうが上位であるといえます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] わかります。共感できます(o´∀`)b いつも興味深く拝見しております(●´ω`●)♪ [一言] リニューアルして初めての感想、書かせていただきましたm(_ _)m 正義は絶対ではないで…
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