車の運転において『余裕』とは何か
前回のを読み返してみると、既に書いてあることといくらか重複していた。
しかし、『合流には車の運転にすべての要素が詰まっている』というのは何度でも繰り返して記しておきたい。それほど重要なことであるからだ。
オッサンはよく次のように言い張る。
「入れる隙間があったら早めにそこに入っておくのが余裕だろ」
「工事で車線が減少する時とか、なるべく早めに車線変更しておくのが余裕ってもんだ」
大間違いである。
この言動こそ、オッサンが合流下手だということを立証する、最たるものである。
車の運転において『余裕』とは何か?
たとえば『5キロ先工事中車線減少』という標識を見たら、直ちに車線変更をするのが『余裕』なのであろうか?
つまり、急いで慌てた行動をするのが『余裕』なのか?
急いで入るのは余裕ではない。慌てているのが余裕だと言えない。
彼らは余裕がないからこそ、焦って入ろうとするのだ。
車の運転における『余裕』とは、余裕を持って広くを見れるということである。広くを見渡せているから、『早めに』ではなく『適時に』、ゆっくりと、余裕をもった行動が出来るのである。
右後ろから追い越しに来ている乗用車がいるのにサッサとウィンカーを出すと同時に急いでその直前に車線変更してしまう大型トラックがとても多いが、あれはいわば『自分だけのための余裕』だ。
本当に余裕があるなら、自分より速い車をすべて先に行かせ、その上で後続車列のペースを落とすことすらなく、ほぼギリギリまで行ってからでも車線変更が出来る。
よく『工事中の車線変更は余裕をもって早めに』と書かれたポスターがサービスエリアなどに貼ってあるが、あれは余裕のない素人ドライバーさんのための言葉である。あれをプロドライバーまでが真に受けてはならない。
ギリギリまで減少する左車線を進みながら、右ウィンカーを早めに出せばいいだけのことなのである。
ウィンカーが遅いと、確かにギリギリまで進んでしまうのは危ない。
つまり、『工事中の車線減少と合流は違う! 工事中の場合は早めにサッサと車線変更すべきだ!』と喚くオッサンは、普段からウィンカーを直前にしか出さない癖がついているからそんなことを言うのであろう。
なぜ左車線があるのかを考えるべきである。
それは車の密度を減らすためにあるのである。
合流下手はとにかく車の密度を高める運転をする。
合流上手は逆に、車の密度を疎にして、みんなが道路を広々と使える運転をする。
ここまで車の運転における『合流』の大切さを論じて来た。
しかし、もちろん素人さんに急に合流上手になれということには無理がある。
交通全体の安全と円滑を守ることよりも、自分の安全、自分の円滑だけを守ることのみを考えたほうが結果的にいいのかもしれない。
とはいえ、いつまでも運転に苦手意識を持っていていいとは思わないのなら、是非、スムーズな合流が出来るようになることを目指してほしいと思う。
本線をギクシャクさせることなく、自分もギクシャクすることなく、前から割り込むのでなく横からすんなりと流入出来るようになれば、その時にはきっとバック駐車や縦列駐車まで上達していることだろう。
不思議に思われるかもしれないが、合流は車体感覚や距離感覚、他の交通の動きの予測など、広い視野を必要とするものなのだ。ゆえに合流が上手くなれば、狭い道を通ることなんかも上手くなったりする。視野が広くなることで余裕が生まれるのだ。これは本当のことである。
是非、試してみていただきたい。




