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今年一番の大仕事と言っても過言ではない、モーターショーが今週末開催されている。今日は日曜ということもあって集客見込みが多い。





ちょっと前に会社の飲み会があった時、何故か私がイベントコンパニオンをやっていた過去がばれていた。そしてイベントでMCをしたことがあるのも。


確かに一時期アナウンサーを夢見た時期はあったけど、そんなのには程遠く下手だった。谷原さんとイベント展開があった時も噛んでしまって笑われたくらい…。




で、とりあえずそんな経緯で今週末のイベントでMCを務めなくてはいけなくなった。原稿も大まかにしか準備されず、『昔鍛えられたセールストークをふんだんに使って』と丸投げされてしまう始末だった。



『御来場中の皆様、本日は古野モーターショーにお越しいただきまして、誠にありがとうございます』



今日が二日目とあってまだまともだけど、今だにマイクパフォーマンスは慣れない。しかもこんな大きな舞台に立って、こんなにたくさんスポットライトを浴びたことなんてないから、緊張感が拭い去れない。



横のコンパニオンみたいにスタイルが良くて、顔が小さくて、美人に生まれたかったとすごく思う。こんな人が横にいれば、ただでさえルックスがひどいのに、それが余計に強調されてしまう。なんて惨め…。






なんとかうちの会社のPRが終了し、接客へと戻った。これで私の任務は終わったようなもの。ほっと胸を撫で下ろす。


とその時、後ろから男性に声を掛けられた。


「すみません」


「はい」



お客さんだと思って営業スマイルで振り向くと、そこに立っていたのはいたずらっ子っぽい笑みを浮かべた彼だった。


「え!?何で!?」


「モーターショーに俺が来ないとでも?」



ですよねー、と思う。というかベタな展開すぎて、少女漫画みたいで何だか恥ずかしい。私今年で25になるのに…。


「いや、ちゃっかり行ってそうですね」


「ちゃっかりってか…ちゃんと?」


「ホントに車好きですね」


「まあね…じゃあ俺行くよ。仕事の邪魔しちゃ悪いし」



雰囲気的にしばらくいるのかと思いきや、彼はふっと笑った後あっさりこう告げた。寂しいといえば寂しいし、でも仕事に集中できるといえばできる。仕事中なのに何だか複雑な心境になってきた。


「あ、そうですか?」


「遠目で見守ってるから頑張って」




何だかその言葉が嬉しくて、青春時代の淡い恋心みたいな感じがする。あんまり謳歌してなかったからわからないけど。


「はい」


「あ、そうそう」


そう言って彼は一度立ち止まった。そして私の方を振り返り、爽やかだけど腹黒っぽい笑顔を向けた。


「今日は4お仕置きね」



それだけを告げて彼は人込みに消えていった。思わず彼を引き止めようとしたけど、私は仕事中だし、彼にも都合があるしでやめた。





熱くなってしまった頬を冷やそうと手でぱたぱたと仰ぐ。今日…どこに逃げよう…。


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