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今日は一日中彼女に付きっきりの予定で病院に来た。

ご両親やお姉さんが来たらそこで挨拶すれば良いし、まぁ…名前を忘れたが交響のお友達に会ったらその時はその時だ。




ノックをして病室に入った。彼女は少し目を見開いたあと、ばつの悪そうな顔をして俯いた。


上着を荷物置きに置いて丸椅子に座る。


「何、どうしたの?」



彼女はしばらく黙っていたが、追い詰められたような表情で俺を見つめた。



「…ごめんなさい」


再び彼女は俯いた。謝られる節がない。


「何のこと?」


「携帯、見つかったんです」



その言葉にはっとした。彼女の意識がなかったのを知らなかったとはいえ、ついイライラのあまりひどいことを送ってしまった。


「知らなければ…携帯なんて見つからなければ良かったって思いました。

でも逃げちゃダメだって思って…」


「ゴメン!本当にゴメン!」



彼女の瞳には涙がたまっていた。今この状況で、それを拭ってあげる資格は俺にはない。


「すごく嫌な思いを一ヵ月近くもさせてしまったんですよね」


「違…っ!」


そう言って彼女の肩を掴んだ。彼女は涙を浮かべたまま俺を真っすぐ見つめた。



「不安だったんだよ…俺もうすぐ30で、でも薫はまだ20くらいじゃん…若くてカッコいい奴はたくさんいるし、そんな奴が出て来たら俺に勝ち目なんてないからさ」


「大丈夫って言ったじゃないですか。私は新一さん以外の男の人をそんな風に見ることなんて出来ません」



今までにない強い口調で言ってきた。

きっと彼女も…俺と一緒で不安だったんだろう。つくづく不器用な二人だ、と自嘲気味に笑ってしまった。




「何も面白いことなんて言ってません」


「わかってるわかってる。そうじゃなくて…不器用だなぁって。俺も薫も」


「良いのかどうかわからないけど…私には気持ちをぶつけることしか出来ないんですよ」


「俺もだよ」



そう言って彼女の頭を撫でた。彼女の目から涙は消え失せ、少し照れながら嬉しそうに笑った。




良い雰囲気になってきたところで、仲直り(少し語弊があるかもしれないが)のキスでもしようと彼女の頬に手を添えた。彼女は俺の手を包むように手を重ね、そっと目を閉じた。



徐々に徐々に近づき、唇が触れるか触れないかの距離になった…





その時、ノックと同時に勢い良く病室のドアが開いた。


「薫っち、遊びに来たよ!」



ドアのところには何故か江原さんが立っていた。


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