第十五話
ストーン・スパイダーを倒したオレ達はそのまま第四階層へと足を踏み入れていた。
今回の探索では第四階層のモンスターの強さの確認が目標となっており、モンスターと実際に戦闘をし、実力を確かめてから帰還する予定になっている。
「何かいつもよりも暗くないか」
「そうだな。普段の洞窟よりもライトの光が弱い気がする」
ダンジョンの探索にライトは必須だが、ダンジョンの謎の作用が働いている為か、この洞窟内では光の強さすら自由に操作させられてしまう。そのため、どんなに高性能なライトを持ってきてもダンジョン内での光の強さは一定であった。
「この階層のモンスターの特性に合わせてるわよね」
八重樫さんの言葉に同意する。
この階層モンスターはアサシン・ゴブリン。
個体としての強さや腕力、動きの速さは同じなのだが、気配を隠すのがとても上手いらしい。その上、武器は黒く塗ったナイフを持っているらしく、背後から近づかれて攻撃されるそうだ。
だが、
「バレバレよ」
八重樫さんは背後から奇襲をかわすと、カウンターで杖を顔面に叩き込み、更に目にもとまらぬ連撃を頭に叩き込む。
アサシン・ゴブリンのご登場だ。
八重樫さんの攻撃に堪らずナイフを落としたアサシン・ゴブリンはそのまま杖で足を払われ、地面に倒されると、頭蓋に遠心力の乗った強烈な一撃を貰って絶命する。
アレは本当に杖での攻撃なのだろうか。今更ながら、疑問である。
と、そんな風に考え込んでいると新たに小柄な気配が近づいてきた。
「高志後ろだ!」
「おう!」
オレの声に反応して高志は槍を後ろに突き入れると、アサシン・ゴブリンの腹部に槍が突き入れられる。アサシン・ゴブリンは深く入り込んだ槍を抜こうとするが、高志の筋力には勝てず、更に突き入れられて、内臓を深く傷つけられ絶命する。
槍はシンプルであるが人型のモンスターにも効きやすく、初心者にもおすすめの武器である。高志はそこまで槍に触れているわけではなかったが、既に充分以上に槍を使いこなしていた。
「俺もパワーはそこそこあるからな」
高志は槍を引き抜くと、決め台詞のようなものをはく。
高志は野球部の補欠だったらしいが大学に入っても筋トレなどのトレーニングは続けているらしく、握力は76キロ、ベンチプレスは110キロ上げるらしい。単純な腕力に限ってはこのメンバーの誰よりも抜きんでていた。
「ホント、分かりやすいな」
オレは瞬時に刀を抜くと、後ろにいるアサシン・ゴブリンの喉に刀を刺し込む。完璧に首を貫き、喉から鮮血が溢れ出してオレの後頭部を濡らした。
刀を捻り完全にとどめを刺すと、骨で刃を傷つけないように綺麗に刀を抜き取る。するとアサシン・ゴブリンはうつ伏せに倒れ込んだ。やがて血と肉体は消失し、魔石だけが残る。
「それじゃあ、実力も分かったし帰りましょうか」
特にアクシデントもなく第四階層の下見を終えたオレ達は、本日のダンジョン探索を終えるのであった。
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