第十一話
「いやぁ面白かった、銃撃戦はああやってドンパチやらないと面白くないよな」
「そうですね。実際にはドンパチよりもさっさと殺して、次って感じですけど、あんな感じの方が見る分では面白いですね」
映画を見終えたオレと東雲はお互いに感想を言い合う。映画に関しては割と共感する面があったらしく、会話が弾んだ。
「じゃあ、私はお風呂を沸かしてきますね」
「おう、よろしく」
東雲が風呂場に消えていき、オレは喉が渇いたため冷蔵庫にオレンジジュースを取りに行った。
冷蔵庫の中には色とりどりの見慣れない食材がキッチリ整頓された状態で置いてあった(東雲が買って来たのだろう)。オレはその数々の食材を無視しながらパックのオレンジジュースを取り出す。
コップにジュースを注ぎ、一気に飲み干す。果汁100パーセントのジュースのため、普通のジュースよりも味が濃くて旨い。
「って、なんでオレはあんな平然とアイツを受け入れてるんだ」
いや、こっわ。パーソナルスペースとかにグイグイ入り込んでくる系だ。それも相手に不快感を与えないタイプの奴だわ。
こんなにサッと心の距離を無視して入ってくるなんて、恐ろしすぎるわ。警戒もクソもないな、アレ。
オレがそんなことを思っていると、東雲が小走りでこちらにやって来た。
「今日の夕ご飯はハンバーグにしようと思っているんですけど、いいですか?」
「それでいいぞ」
「分かりました。じゃあ、とびっきり美味しいハンバーグ作りますね」
ニコニコと笑みを浮かべながら、キッチンへと向かう彼女。
オレはその姿を見て、先程の思考などあっさりと忘れるのであった。
♦♢♦♢♦
「おお、旨そうだな」
湯気が立ち込めたアツアツのハンバーグを見て言う。ハンバーグにはデミグラスソースがたっぷりとかかっており、見るからに旨いということが伝わってくる。
「「いただきます」」
ハンバーグを口に入れると、肉汁がパッと溢れ出てくる。旨味が凝縮された肉のスープが口の隅々まで広がっていき、デミグラスソースと混ざる。そしてハンバーグの触感と絡み合った。
旨い。文句なしに旨かった。
「美味しいな」
「えへへ、良かったです」
「ホント、性格さえよければ、あとは完璧なんだけどな」
「えっ私は性格もいいですよ?」
「拳銃突き付けといてよくそんなこと言えるよな」
その点に関しては忘れてないからな。
「あっそうでした」
そう言って笑う東雲。その行為を特に異常と思っていない彼女はやはり、普通じゃないようだ。
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