東征 その9 獣王
よっし更新するぜっ!!笑
「ぬぁぁぁぁぁぁあああ!!」
突然襲いかかってきたシュウの一撃をレグルスは大剣で受け止め、そして弾き返した。
後方に飛ばされるシュウ。
「流石……とでも言うべきか。だがっ!!」
そう言うとシュウは己が闘気と魔力を解放した。
「かぁぁぁぁぁあああ!!」
裂帛の気合とともにシュウの身体が白銀色に輝く。
叢雲流戦闘術『武神の境地』
またの名を『魔闘術』
シュウの変化にレグルスは一瞬、訝しげな表情を見せ、そして注意深く相手を探る。
「一体何が……?」
「それは実際に身体で知ってもらおうかっ!!」
そう言うが早いがシュウは、恐るべき速さでレグルスの懐に飛び込んだ。
先程とは異なる、圧倒的な速さで迫るシュウにレグルスは動揺する。
「なっ!?」
「かぁぁぁぁぁあああ!!」
ガキンっ!!
鉄と鉄がぶつかる音が戦場に響き渡る。
動揺しながらもレグルスひその剣を受け止めた。だが。
「何!?」
魔闘術で強化された一撃は、体躯の大きなレグルスを吹き飛ばすのに十分なものであった。
後方に飛ばされたレグルスは地面に叩きつけられる。
「がはっ!」
「まだまだっ!!」
シュウは体勢の崩れたレグルスにさらに襲いかかった。しかしレグルスもさるもの、そんな状況でも、シュウの一撃を受け止める。
「やるなっ!だが!!」
そう言うと、シュウはレグルスの大剣と刀身が合わさっている状態なのにも関わらず、その姿勢のまま己が最大の技を繰り出した。
「龍の咆哮っ!!」
シュウの愛刀、『雷切』に膨大な魔力が集まる。
「!?」
だが、レグルスもさるもの。異様な気配を直感で感じると、すぐ様、剣をそらし、横っ飛びに飛び去った。
それと同時に、シュウの放った龍はその横をすり抜け、そして天に舞い上がっていく。
「くっ……外したか」
千載一遇の好機を逃し、シュウは歯噛みした。
レグルスの方も、飛び去る魔力を帯びた龍を横目で確認しながら、舌打ちをする。
(この男……只者ではない。あのまま受けていたらと思うとゾッとするわ)
そう心の中で唸ると、彼は鋭い視線をシュウに向けた。
「我も力を隠すわけにはいかぬ……か……」
そう呟くとレグルスは二の腕に付けていた腕輪を掴み取り、地面に落とす。
その瞬間だった。
「なっ!?奴の魔力と闘気が膨れ上がるだと!?」
先程とは異なり今度はシュウが珍しく狼狽する。
横で見つめていたアレスもまた同様に目を丸くしてその姿を見ていた。
「ゔぉぉぉぉぉぉぉおおおおお!!」
獣の長たる獅子の咆哮。
それと共にレグルスの様相が変わる。
そこには先程までの白き獅子の姿はなく。立髪の色同様の黄金の獅子が立っていたのである。
「古より聞こえる……獣王……?」
その姿を見て、アレスは思わず呟く。
それを聞いてか聞かずかいざ知らず。レグルスもまた口を開いた。
「この姿になるのは久しぶりでな……果たして我が保つか貴様が保つか……さぁ時間との勝負だ」
そう言うとレグルスはその大剣を振りかぶった。それに合わせて大剣から強烈なまでの剣圧が飛んでいく。
「ぐあっ!!」
シュウはそれを刀身で受けるものの、その勢いに負けて後方へ吹き飛ばされた。
今までとは異なる圧倒的な力。それを目の前にして、再び構えをを取りながらシュウは眉間に皺を寄せた。
「獣王化……と呼ばれている。獣王ライオネルの子孫の最終奥義とでも言うべきか……」
そう言うとレグルスは大剣を構え直す。そして今度はレグルスが脱兎の勢いでシュウに襲いかかった。
幾度も金属がぶつかった音が戦場に響き渡る。
2人の戦いは、演舞の如く、美しく、そして激しいものとなった。
シュウの刃を交わしたレグルスはその体勢の隙を見て大剣を突く。しかし、それを華麗に受け流し、再びシュウが斬り下げる。それを受け止めたレグルスが……
2人の顔には笑みが浮かび、己が全力を出し合える好敵手が現れたことに喜びすら感じるほどであった。
幾度目か、ぶつかり合った後、両雄とも距離を取り呼吸を整える。
そして再びぶつかろうとしたその時。
パチパチパチ……
「はい、そこまでー」
2人の戦いの水を指すようにのんびりとしたアレスの声が乾いた手拍子の響きとともに戦場に響き渡ったのである。
眉間に皺を寄せるレグルス。そしてハッと我に帰るシュウ。
「シュウ。悪いけど一旦引いてくれ。戦いたいとは思うけど……このままいけば君も彼も共倒れだろう」
「……はっ」
そう言うと、僅かに見せた不満顔を押し殺し、シュウは己が魔闘術を解除する。
「ごめんねぇ」
「いえ……我が君の命なれば」
2人のやりとりを見て、困惑するのはレグルスだ。
「どう言う事だ?」
訝しげな表情を見せるレグルス。しかしそんな事を意に介する事もなく、アレスはニヤリと笑った。
「こう言う事」
その言葉と同時に、今度はアレスの身体が白銀色に輝いた。そして、軽く身体を動かす。
その姿を見て、レグルスは驚愕の表情を見せた。
「さて、そろそろ終わりにしたいところだけど……もう少し時間はかかりそうだしね。今度は僕が相手を務めさせてもらうよ?」
そう言うとアレスは右手に持っていた武天七剣を相手に向けた。
「出ろ、エクスカリバー」
アレスの言葉に従い、青白い刀身がアレスの右手に現れる。
「さぁここからは僕が相手をしよう、獣王。君を退屈させないよう、努力して見せようかっ!!」
そう言うと、それ以上は何という事なく、アレスは脱兎の勢いでレグルスに襲いかかるのであった。
◆
レグルスはアレスの剣を受け止めながら、焦りを感じていた。
(こいつ……先程の剣士と同等……いや、下手をすればそれ以上……?)
何十合と刃を打ち合わせた後、両名とも再び距離を取り、そしてお互い様子を伺った。
(そして……奴の獲物……幾度となく姿を変え、その瞬間の戦い方に合わせてくる……実に厄介だ……)
アレスは戦いながら、要所要所で武天七剣を変えていく。撃ち合う際には『聖剣』エクスカリバーを。距離を取るなら『神剣』オルディオスを。力推しなら『魔剣』グラムを。そして相手の隙があれば『妖刀』ムラサメを。
だが、レグルスもさるもの。時にかわし、時にいなしながらそれらの猛攻を防ぐ。
数え切れないぐらい剣を合わせた後……2人は再び距離を取る。
「……流石、と言うべきかね。こう……決定的な一手がどうしても打てないものだ」
アレスはそう呟くとニヤリと不敵な笑みを見せた。
そしてそれを見て、レグルスの背筋はゾッと冷たくなる。
(今度は何をする気だ!?)
何をするか分からない相手ほど恐ろしいものはない。
相手にした事のないほどの技量。見た事のない武器……
レグルスは鋭い視線でアレスの次の手を待つ。
そんな事に意を解する事もなく。アレスは大きく息をつき……武天七剣を構え直した。そして……言葉を紡ぐ。
「さぁ、君が相手ならきっと使える事ができるだろう!!」
そう言うとアレスは武天七天を己が胸の前に構え、言葉を紡ぐ。
「其は双子の長剣。天から邪気を払うための宿命を授けられた二振りの刃」
そう言った瞬間、武天七剣が二つに分かれた。
「いでよ!天剣ジェミニ!!」
アレスの言葉と同時に、彼の両手には白く輝く細身の刃が現れたのであった。
感想ありがとうございます。
やっぱり感想いただくとやる気が出ますね。返信は返せませんが、全部読んでいます!!
そして更新するとアクセス数がすごく上がりまして……こんなに待っていた方がいるなんて……そしてこんなに期間が空いたのに応援してくれる方がこんなにもいるなんて……
あいも変わらず遅筆ですが頑張ります。




