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東征 その5 ドルマゲスの一手

「がぁぁぁぁぁぁあああ!!」


ドルマゲスはそう咆哮すると手に持っていた果実を壁に投げつけた。

グチャリと音を立てて、果実が潰れ、壁にへばりつく。


彼が苛ついている理由……それは各戦場での自軍の敗北の報告であった。


イストレアで敗れた後、ドルマゲスは魔獣の軍勢をホルス王国国境線まで引き上げた。


今まで連戦連勝だったドルマゲス軍だが、たかが一敗で崩れるとは思わない……すぐに立ち直らせ、再びイストレアに向けて出撃する……そう予定していたドルマゲスであったが、戦況が一変する。


イストレアに敗北したのを機に、支配下にあった多くの国が反旗を翻したのである。


まず勢いを盛り返したのは王都を包囲されていたホルス王国であった。


王都を陥落寸前まで追い詰めていたのが魔将軍ギルバレスである。そんな彼にここで凶報が伝えられた。そう、ドルマゲス敗走の報だ。


それを聞いたギルバレスは、すぐ様、王を救うべく、魔獣の軍勢をまとめ、イストレアとの国境線まで引き上げ、そしてドルマゲスと合流したのである。


ホルス王国の占領地には最低限の魔獣や兵を置いた。そして彼らは壊滅状態であった軍を再編し、再びイストレア侵攻を狙った。


しかしホルス王国はこのドルマディアの動きを見逃さなかった。


彼らはこれを機に制圧されていた各地の奪還に動いた。

ドルマディア軍は最低限度の数でしか、守備兵を置いていないという情報を掴み、各地を奪還。これにより、彼らは国内のドルマディア勢力を一掃させたのであった。


ドルマディア軍の敗北の報。そしてホルス王国による自国の奪還の知らせ。この一報はドルマディア全土に激震を走らせた。


魔族の圧政に耐えかねていた民衆はその報を聞き、一斉に蜂起を決意する。こうして東大陸の3分の1を恐怖で支配していたドルマディアは各地で人族と魔族が争う紛争地帯へと変貌していったのであった……



ドルマゲスは渋い顔をしながら、東大陸の地図を眺めていた。


彼がこの数年で築き上げた東大陸の3分の1を治めていたドルマディアという王国は……わずか1ヶ月という短い時間で、その規模を半分にまで減らすことになったのである。


その原因は3つ。


1つはイストレア軍の侵攻。


そう、彼の国を侵略した際に現れたあの一軍だ。彼らが今度はドルマディアに現れ、次々と占領地を解放していくのである。


いや、正確にはイストレア軍というのは異なるかもしれない。


イストレアに兵なし、とは有名な話だ。そのためどこかの国が彼の国を援助しているのであろう。


正体不明の軍勢……その軍勢に対して、ドルマディアは未だ勝つ事ができていない。


ドルマゲスは『数の力』を知り抜いている。彼がわずか数年でこれだけの広い版図を築き上げたのも、圧倒的な数の魔獣を率い、数の力で街を落としていったからだ。それ故にドルマゲスは各地に兵を集め、彼らを迎え撃つでように指示を出したのだが……正体不明の軍勢はその数を飲み込む勢いで、蹴散らしていった。いずれの戦場においてもドルマディア軍は壊滅的な被害を受ける事となり、彼の自慢の魔獣兵団の数は今や僅かなものとなったのである。



2つめとしてあげられるのは、征服していた各国の一斉蜂起である。

まるで図ったかの如く各地の重要拠点の民衆が蜂起をしたのである。普段なら難なく力で叩き潰す……のだが、今回は様相が異なる。


叩き潰すだけの兵力を配置できないのである。


イストレア軍に多くの兵を割いた分、各地には僅かな魔獣と兵しか置いていなかった。そして……それを見越したかのごとく、各領地が反旗を翻したのであった。


ドルマゲスは最初の報を受けた時、この事についてはあまり深刻に考えてはいなかった。彼にとって人とは富をもたらす家畜と変わらない。そして彼らの武器となるようなものは全て奪っている。

僅かな兵と魔獣であっても、家畜同然の武器なしの人族など恐るるに足らない……


しかしここでも彼の読みは外れる事となる。彼らは武器と正確な情報を手にし、各地で連携をとりながら反乱を起こしたのである。


これにより、多くの征服地が解放され、ドルマディアはその規模を小さくせざるを得なくなったのである。




最後にあげられるのがドルマディア軍においての『将』の不在である。


ドルマディア軍は魔獣の軍である。その数の力は非常に強力であるが……それを統率するものが少ないのである。


魔獣を指揮するには、魔獣が服従するほどの『武』が必要である。そしてさらに将としての統率力と知力をあわせ持つ者となると……その数は魔人の中でも僅かとなるのだ。


そうなると彼の手元には魔将軍ギルバレスの他、数名ほどしかいなかったのだ。


そしてその数名の将軍もイストレア侵攻の際、多くの者達を討たれてしまっていた。


そのため、連携も取れず魔獣の群れは烏合の衆と化していたのであった。


「せめてギルバレスがもう1人いれば……」


現在ギルバレスは反乱鎮圧のため、一軍を率いて動いている。そんな矢先、ドルマゲスの元に、再びイストレア軍が侵攻してきた報告がなされたのである。


「……おい」


しばらく悩んだ末に、ドルマゲスは身近にいた側近にこう告げたのである。


「あの牢に繋がれている『猫野郎』を連れてこい。


「……??」


側近達はドルマゲスの指示を理解できず、ただ戸惑うばかり。それを見て、ドルマゲスは苛立ちを隠さず大声を上げた。


「……あの獅子の顔を持つ、『真獣人』の男を連れてこい、という事だ!!」


そう怒鳴るとドルマゲスはニヤリと下卑た笑いをみせた。


「あの猫野郎に出てもらおう。……真獣人は『仲間』を何よりも大切にするらしいからな……」


そう言うとドルマゲスは大きな声で笑い出すのであった。


お久しぶりです。皆さま。


久々の投稿です。


活動報告にも書かせていただきましたが……コロナに負けるな!という事で完全に見切り発車でスタートします。


途中、ストックが尽きれば更新が止まりますが……その時はごめんなさい!!


でも、活動報告にも書きましたが暗いニュースが続く中、少しでも喜んでくれる様なことがあれば……という事で、更新します。


何名の方か、本当に楽しみにしているという声があるので……また、そういう声をいただきましたので……私ができるせめてものお礼です。


いつ途切れるかわかりませんが……暫しお付き合いください。よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] すごく面白いです、何回読みなおしても面白いです、これからの更新がすごく楽しみです(語彙力無くてすみません笑)
2020/04/11 16:13 多勢の中のファンの一人
[気になる点] 「あの牢に繋がれている『猫野郎』を連れてこい。 」がありません。
[良い点] 物語がしっかりと練られていて違和を感じることなく読める。 [気になる点] 更新が遅いけど、この面白さと仕事と両立させながら演出することを考えると許容できる [一言] 待ってました
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