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英雄の中の英雄の物語 〜アレスティア建国記〜  作者: 勘八
序章 〜アレス・シュバルツァーという男〜
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シャロン・ロクシアータ

父上も爺もひどい。こんな事が解っていればもっと早くに切り上げてシャロンのところに向かっていたのに。


シャロンは僕の幼馴染だ。歳は同い年。ロクシアータ伯爵家の一人娘だ。成人したら婚約がどうとか噂されていたけど、噂は噂。まぁそんな事はどうでもいい。

だって僕は残念ながら確実にシャロンに


()()()()()()()()


え?シャロンの事がお前は嫌いなのかって?そんな訳ないだろ。だって一緒に育ってきた幼馴染だし。僕にとっては大切な人の一人だよ。


でも……シャロンは強い男が好きらしい。そう公言してはばからない。どうやらシュバルツァー家の寄子で、武勇に優れていると言われたカイゼル子爵をはじめ、武勇に優れた人達と噂になっているとは聞いたことがある……

まぁ、正直言うと姉か妹を取られるような気持ちになって、あまり面白いとは言えない噂だから極力聞かないようにしていたが。

そして実際シャロンも強い。幼い頃から剣を振っていたし、実際とても筋がいいと言われていたものだ。


だから幼い頃からあまり争いを好まない僕を見下していたと思うし、何をやっても突っかかってきた。今でもきっとそうだと思う。

たしかに今でも、剣の稽古はシグルドや爺以外とはやらないし、ロマリアの人たちには剣を持つ姿も見せたことがなかった。北方の砦の人達はいざ知らず、多くの人が僕は剣を使えない……つい最近までそう思っていたはずだ。

だから、きっとシャロンは僕が剣を苦手としてると思っていたんだろうなぁ……まぁ、特に見せようとも思ってなかったんだけど。


今は、多少剣が使える事が分かったみたいなので昔ほどには突っかかってはこないけど……それでも顔を合わせると小言の一つは飛んでくる。


つまり……彼女の事を大切には思っていたけど、正直ちょっと苦手な存在でもあった。

うん、複雑な男心。



隣の部屋に行き、そっと扉を開けると……あぁ、いたいた。我が幼馴染殿。


透き通るような白い肌、流れるような金髪の髪。青い目の瞳が印象的な美女。青い鎧を身に纏って騎士の格好をしているけど、それでも隠しきれない主張している胸のライン。

どうやら、今も求婚が殺到していると聞いている。それも納得。まぁそれに関しては正直面白くはないけどね。


あれでもう少し柔らかい性格になってくれると良いんだけどなぁ……


「やぁ、シャロン。お疲れ様……」


そう言って恐る恐る顔を見ると……あ、やっぱり怒ってる?


「どういう事か教えて貰いたいわね……」


静かにシャロンは言い放つ。あ、これ、本気で怒ってるヤツですね?


「今日こそは私と剣の稽古を一緒に行うって約束だったと思うけど?」


「あーーー、ごめん!!」


そう言うと僕は頭を下げる。そりゃあもう、深々と。


「いや、まさか魔獣があそこで現れるとは思わなくてねー。困っている人がたくさんいたし、今後のためを思うと討伐しないと後々まで……」


「そんなことはわかってるの!!」


シャロンは大きな声で僕の言い訳を遮る……横暴だ……


「分かってるわよ。貴方が困った人を見ると助けてしまう性分は。ただ、もう少し自分の心配をしなさいよ!休みも取らず、連戦、しかも龍種とも交戦したらしいじゃない!」


「まぁ、その辺は慣れてるからどうにでもなると思ってるんだけど……」


「そういう問題じゃなくて!!」


そういうとシャロンはキッとこちらの方を睨みつける。え?なんでそんなに怒ってるんだろう??


「〜〜〜〜!、もういいわよ。それで、今回の件はどう償ってくれるのかしら?」


「へっ?償い?」


「当然でしょ?約束を破ったんだから」


そう言うとシャロンはビックリするくらいのいい笑顔で言葉を続ける。


「約束を破ったんだから、その埋め合わせをして貰わないとね。私が納得するような事、考えて!」


そう言うと、シャロンは少し頰を赤らめながら、ビシッと僕に指を突きつける。


「男ならきちんと責任を取って!ホラ返事は?」


「う、うぃっす!!」


「よろしい」


そう言うと、シャロンはニッコリ笑い、扉に手をかける。そして


「いい?今月中には絶対に行うようにね!」


そう言って、部屋を出て言った。


僕はただ、その後ろ姿を見守りながら、呆然とするしかなかった……


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