ダリウスの帰還
お待たせいたしました……お待ちいただいた方、すみません。
詳しくは後書きにて
アレスが辺境伯領に戻って2ヶ月あまりが経とうとしていた。
辺境伯領は落ち着いた日々を取り戻している。
「ほ……報告です!!」
そんなある日の事。
執務室でジョルジュからの報告を聞いていたアレスの下に城門からの衛兵が急を知らせる面会を申し出た。
「正体不明の軍勢が、東の方角よりハインツに押し寄せてきます。その数300ほど!!」
だが、そんな緊急の報告にもアレスはその報告を聞いても動じることはない。その横にいるジョルジュもまた同じくである。
その様子に衛兵は少し不安そうな顔をする。そんな衛兵にアレスは優しく声をかけた。
「あぁ、その軍勢なんだけど……特に害をなす事ないから放っておいてくれ。東門も開門してくれて構わない」
「し……しかし……」
「あ、説明が足りなかったね。あれは味方の軍勢だよ。すでに『龍の目』より知らせが入っている」
そう言うとアレスはゆっくりと立ち上がり笑顔を見せた。
「ダリウスが帰ってきたんだ。ちゃんと出迎えてやらないとね」
◆
辺境伯領きっての猛将、ダリウス帰還の報はいち早くハインツの街に広まった。誰もがその姿を見ようと東門に集まる。
ダリウスは元々はグランツ公子であり、今まで数多の魔獣や異民族を退けてきた事から、民衆から……特に以前からこの地に住んでいた者たちからは、アレスと同等の人気を誇っている。
その英雄の姿を一目見ようと実に多くの人達が集まったのである。
どうやらダリウスの方からもその様子が見えたらしい。東門の眼前で止まり、そして怪訝そうな顔をした。
「おいおい……なんだ?この出迎えの数は……」
流石のダリウスも苦笑する。
門の中から、数多の人の気配がするからだ。
「君の人気のせいじゃないかな?」
そんな戸惑うダリウスに応えるように、門から供の者を連れて現れた人物が声をかけたものがいた。
ダリウスもその声を聞き、そして思わず笑顔を見せる。
そう、声の主人は辺境伯アレスであった。
彼は左右にはシグルド、シュウを連れ笑顔でこちらを見ていた。
アレスの姿を見て、ダリウスはすぐさま馬から降りる。そして臣下の礼をとった。
「主よ、今帰った。遅くなってすまぬ」
「おや、殊勝な事だね。ダリウスが下馬するなんて。そのような、君らしくない事しなくても良いのに」
「多くの目が見てる。そうもいかんだろう」
あいも変わらぬ痛烈な主君の言葉にダリウスは笑った。そして次に視線をシュウに向ける。
「そして先程から感じていた気配はこの者か。驚いた。このような強者がいるとは」
「ん?あぁ、彼はシュウだ。数ヶ月前より仲間になった」
アレスの紹介にシュウは静かに頭を下げた。
「よろしく頼む」
そんなシュウの姿を見てダリウスはニヤリと笑う。彼は遠くからでも感じたのだ。この男は『化け物』であると。
気づけば彼の後ろに控えていた、彼の妻であるゼノビアが鋭い視線を向けていた。彼女もまた感じているのだろう。
この目の前にいる3人が相当な実力者である事を。
「顔を上げてくれ。それよりも……後で落ち着いたら手合わせをしよう」
ダリウスはそう言うと、その大きな手を前に出す。
「あぁ、是非とも」
シュウもまたその差し出された手を握り、そして笑みを浮かべながら、アレスに向かって口を開いた。
「驚きました。お屋形様の家臣にシグルド殿以外でこれほど強き者がいるとは……某も精進せねばなりません」
「強いのは認めるよ……ただ、変人だけどねー」
「……主にだけは言われたくない台詞だがな……」
こうしてアレス達は和気藹々とハインツに入場するのであった。
◆
ハインツ城内での歓待は凄いものだった。流石に人気の高いダリウス。彼は揉みくちゃなされながら苦笑していた。
「随分文化的になったのだが……この辺は治らないよねー」
アレスはその様子を見て笑っていた。ハインツの民はやはり武人が好きなのだ。それも強き武人が。
ダリウスが連れてきたアーリア人の軍勢300人、そして彼の横には彼の妻であるゼノビアもまた、彼らに歓待を受け、満更でもなさそうだ。
こうして、しばらくの間彼らを置いて、アレス達はダリウスとゼノビアを連れて屋敷に戻るのであった。
屋敷に入ると、顔馴染みの者達が彼らを迎えた。
一通りの自己紹介を終えた後、彼らは本題を話し合う事となった。
そう、これからの事についてである。
「近いうちに軍の再編をする必要がありそうですね」
口火を切ったのはシオンである。
彼が指摘するのは点。それは現在のシュバルツァー辺境伯軍が他に類を見ない特徴を持ち始めた事である。
アレス配下の『破軍』、『龍騎士団』そしてダリウスが連れてきた『アーリア人』。今後はシュウが呼び寄せている八洲の戦士である『サムライ』……これはどこの国にも、そしてどこの領にもいない軍団と言えるであろう。
「合わせて、シャドウの持つスケルトン兵……これもまた強力です。これらを辺境伯軍にどのように合流させていくか……それが大切になってきます」
そして、その辺境伯軍だ。元々大陸でも有数の精強な人族・亜人混合のグランツ兵を主体としており、さらにそこに魔族や傭兵、冒険者達が混ざった事で、その力は恐ろしいまでに強くなった。
アレス達はさらにこの軍団に戦術と集団連携、そして意思統一を植え付ける事で現在辺境伯軍は大陸でも有数の軍隊となろうとしている。
特色ある強力な部隊と、大陸有数の兵団……その2つをどのように混ぜていくのか、シオンは現在頭を抱えているのであった。
「いずれにしても、一度どこかで皆に説明する必要がありますね……」
シオンの言葉に他の者達も頷く。
そして最後はアレスが口を開く。
「『龍の目』の話では、もう西では戦が秒読み段階に入ったそうだ。そして……東方にも変化があるらしい……おそらくこの半年で世界は大きく動き始める。乗り遅れるわけにはいかない。皆……僕に力を貸してくれ」
その言葉にその場にいた者達は力強く頷くのであった。
四月より気分を一新して再開いたします。
年末年始あたりにて体調を崩し、まさかのドクターストップ。
原因は過労でした。
ちょっと心が病み、それでも責任ある立場ではあったので、無理くり仕事に向かった事で体調に影響したみたいです。
仕事も強制的にドクターストップがかかり、ケータイもネットも触るの禁止と当初は家族から言われ……
とにかく心と身体を休める事となりました。
おかげさまで多少元気は取り戻したみたいです。
ご心配おかけして申し訳ありませんでした。そして、暖かいお言葉をいただきありがとうございました。
職場の方にも心配されて、上司や部下後輩からも助けてもらいました。
このように、身近な人から読者の方々まで、多くの方々に助けられ……本当に私、周りの人に応援してもらいながらやっているのだと改めて思いました。
本当に感謝しております。ありがとうございました。
正直、またどうなるかはわかりませんが、五日おき、ゆっくりと更新していきたいと思いますのでよろしくお願いします。
ちなみに一月ほどはリハビリがてら書いていた間章が続きます。前の章とも違うのでサブタイトルを微妙に変えつつ笑
お付き合いいただけると幸いです。




