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第95話 その後とルル

 ブックマーク&ポイントありがとう御座います。

「今、紅茶を用意させていますので、少々お持ちください」

「ああ、ありがと」


 俺は自宅リビングのソファに体を預け、ウイに答礼を言った。

『黒衣の鬼』との戦いから三日が経ち、俺はようやく雑多諸々ドワイトさんより押し付けられた雑務から解放され、やっと家に帰ってきたところだった。


「あの後、どうなりました?」


 そんな俺に、少々気遣い気味にウイが問いかけてきた。


「ああ、ドワイトさんの話だと、ガイは、回収した書類の検分の結果、さらに罪状が増え死刑がほぼ確定だろうということだ。まああんな酷い事をしていたんだし当然の報いだな。カーターは、まだ事情聴取が続くだろうが、鉱山行きは免れないだろうってことだから、正直死刑と変わらんだろうな」


 ちなみにカーター商会は、息子のエディ・カーターという男が事業を引き継ぐそうだ。そう、この家の権利書を受け取る時に、髭面オヤジ(カーター)から怒鳴られていた男だ。

 どうやら彼は、かなり真面目な性格で、髭面オヤジ(カーター)のやり方に意見して、少し前に閑職に回されていたそうだ。そんな彼だから、父親が行っていた不正にも関与しておらず、それどころか、ドワイトさんたち官憲の捜査にすこぶる協力的だったということで、今回の抜擢となったそうだ。まあそれでも、国の役人が出向という形で、カーター商会に監視に入るらしいが、それは仕方ないことだろう。商会自体がお取り潰しにならなかっただけマシというものだ。


「あのような輩たちには、当然の結末ですね。それと捕らわれていた女性たちは、どうなったのでしょうか?」


 あの後、捕らわれた女性たちを、ウイたちがほぼ丸一日保護&世話をしていた。だからか、自分たちの手を離れた後の事が、気になるのだろう。


「そちらは問題ないよ。例の二人を除いて、全員俺が希望の場所に送り届けたからな」


 こういった点は、【転移魔法】様さまである。

 というかMPが余裕がある分、ドワイトさんにいいように使われた気がするが、まあ最初からそうするつもりだったから、それくらいは問題ない。

 それよりも、人のよさそうに見えるドワイトさんが、なかなか強かな人間だと分かった方が俺としては大きいと思う。


「それに、彼女たちには、『黒衣の鬼』から回収した金を分配して渡してあるか、しばらくは金で困る事もないだろう」


 要は慰謝料みたいなものだな。

 ガイたちを捕縛した後、俺たちは手分けして、犯罪の証拠品と合わせて、金や財宝、美術品に至るまで根こそぎ回収した。そして、そのほとんどをドワイトさんたち官憲に渡し、捕まっていた女性たちや、これから捜索を始める、違法奴隷として売られていった女性たちへの慰謝料に、充ててもらうようにお願いしておいた。

 もう一つ言うと、あの後、ノヴァリスにある他の『黒衣の鬼』の関連施設も襲撃し、同じく金目のものを回収、さらには、それらの物件を競売にかけるように手配してもらい、売却益はそのまま同じように女性たちのために使ってもらうようにお願いしておいた。

 当然、違法奴隷になった女性全員が助かるとは思っていないが、例え偽善だろうが、やらないよりはやった方が絶対いいだろうと手配しておいた。

 あっ、ちなみに、ガイたちが持っていた刀だけは俺が貰う事にした。色々働いたのだから、それくらいの役得はあってもいいだろう。こいつは、後で自分たちで使えないか研究しようと思っている。今から楽しみである。


「良かった。それならもう安心ですね」


 そう言ってほっとしたようにウイは笑った。その時、俺たちの会話がひと段落するのを待っていたかのように、リビングの扉をノックする音が聞こえてきた。


「旦那様、紅茶をお持ちいたしました」

「どうぞ」

「失礼いたします」


 入ってきたのは、メイド姿の二人の女性だった。

 一人はダークブラウンの髪をハーフアップにした三十前後の女性。もう一人は、明るい茶色い髪を三つ編みにした二十歳前後の女性。

 彼女たちは、『黒衣の鬼』で捕らわれていた女性陣の中で、先ほどちらりと会話に出た、除かれた"例の"二人だ。

 ダークブラウンの髪の女性の名はエマ。夫婦で行商をしていたのだが、『黒衣の鬼』に夫も財産も全て奪われ、頼る先もないという事だったので、うちでメイドとして雇う事となった。ちなみに、彼女は結婚前、中級貴族の下でメイド長をしていたという経歴もあり、俺としても願ってもいない人材だった。

 続いて、明るい茶い髪を女性の名はマリー。まだ新婚だったらしいが、村を『黒衣の鬼』に襲われ、夫を失ったらしい。元々身寄りがない彼女だったため、今は行くところがなく、しばらくうちでメイドとして預かることになった。

 一応二人には、もしいい人が出来たら、いつ辞めても大丈夫だと伝えてある。二人ともなかなかの美人さんだから、そのうちいい人も出来るだろうとの思いからの提案だ。まあそれまではうちで、しっかり面倒を見ようと思っている。

 その後彼女たちは、紅茶とケーキを俺とウイの前に置き、一礼して部屋から出ていってしまった。

 そして、それと入れ替わるように、一匹の黒い獣が、開いた扉の隙間から部屋の中に滑り込むように入り込んできた。

 その黒い獣は、そのまま俺が座るソファに乗ると、俺に甘えた感じで体を擦り付けてきた。


「しばらく構ってあげれなかっけど、元気だったか? ルル」


 そう、その黒い獣はルルだ。体は以前よりも少し大きくなり、顔つきも大人びたように見える。

 あの日、進化を終えたルルは、体長五メートルほどまで巨大化していた。

 屋敷に戻った後、巨大化したルルを見てどうしようかと悩んでいると、それを察したルルが、見ての通り中型犬サイズまで小さくなってしまったのだ。その後、ルルに頼んでいろいろと大きさ変えてもらったのだが、どうやら元の子狐サイズから、あの五メートルサイズまで自由に大きさを変えられる事が分かったのだ。ちなみにルル本人(本狐?)としては、最大サイズか今の中型犬サイズが一番楽らしい。

 正直、あのルルの巨体を見た時、さすがにこのまま屋敷に置いておくわけにもいかないし、どうしようか本気で悩んでいたのだが、これで一発解決だった。

 という事で普段は、この中型犬サイズでいてもらうことにして、俺の愛玩動物の地位を守ってもらったわけである。


「そうだ、ウイ。ルルはどうだった?」


 俺がドワイトさんの所に行っている間、ウイたちにはルルを連れて『坑道迷宮』に潜ってもらっていたのだ。目的は当然、進化したルルがどう変わったか見てもらうためだ。


「そうですね。速さは以前と変わらず、攻撃力が上乗せされたと言った感じですね。特に肉体の強化はかなりのようで、ウーツゴーレムナイトを殴って倒せる程でした。もう魔法特化の後衛とは言えませんね。それに、新たに得たスキルが、かなり強力です。戦闘中に、一瞬で魔物の背後に正確に回り込める使い勝手の良さは、【転移魔法】以上に感じました」

「あー、【影渡り】ってやつか」

「はい。あのスキルを使えば、ほぼ奇襲は成功すると思っていいレベルです」

「へぇ、なるほどねぇ」


 俺はそう呟きルルのステータスを確認する。



【名前】ルル       【年齢】1歳

【種族】ダークネス・フォックスロード

【職種】召喚獣 (所有:レオンハルト)


【レベル】50(S-)

【HP】1690/1690

【MP】25776/25776

【筋力】1071 (S)《2UP》

【耐久】 893 (A)《2UP》

【俊敏】1255 (SS)

【器用】 717 (B)

【知力】1077 (S)《1UP》

【魔力】1428 (GS)《1UP》

【幸運】 722 (B)


【加護】創造神の加護(下位)


スキル一覧


特殊スキル(ユニークスキル)

   :黒雷

    黒炎(NEW)

    影渡り(NEW)


上位スキル(エクストラスキル)

   :隠密術    レベル 5(UP)


通常スキル(ノーマルスキル)

   :雷装衣    レベル 5(UP)

    雷魔法    レベル 6(UP)

    火魔法    レベル 4(NEW)

    闇魔法    レベル 5(NEW)

    身体能力強化 レベル 5(NEW)

    魔力操作   レベル 3(NEW)

    咬みつき   レベル 4(UP)

    危機感知   レベル 4(UP)

    気配感知   レベル 4(UP)

    暗視     レベル 5(UP)


 見やすくするため、俺や装備で付与したスキルは除いて表示してみた。

 しかしこれは、どう言ったらいいものか……というか名前に"ロード"ってついてるんだが、これって、その種族で最上位ってことなんだろうか? それにサンダーが消えてダークネスに変わってるし、なんだかルルの種族が、そうとう凄そうなのに変わってしまった気がする……


 まあそれはさておき、まず能力値だが、【筋力】【耐久力】のランクが2ランク上がり、より近接戦闘型にシフトしている感じだ。ただ、近接戦闘力だけが強化されただけでなく、【知力】や【魔力】もきっちり1ランク上がっている。おかげで数値が凄いことになってきた。同レベルだとウイに次ぐ能力値じゃないだろうか?


 で、次にスキルだが、まず注目すべきは【特殊スキル(ユニークスキル)】が二つも一気に増えたことだ。

 一つ目は【黒炎】、一言で言えば【黒雷】の炎版だな。俺は実際見てはいないが、【黒雷】の威力を見て想像する限り、かなり強力なスキルであることは間違いないだろう。文字通りルルの火力がアップしたというわけだ。

 続いて二つ目が、先ほど話にも上がった【影渡り】だ。このスキルは、その名の通り影を渡り、他の場所に移動できるという、一種の転移系のスキルだ。基本影がある場所ならどこへでもいけるようだが、一応その距離は魔力値依存のため、ルルが今移動できるのはだいたい百キロ程らしい。(ロラ情報)。

【転移魔法】との特性の違いとしては、先に述べた影のみが出入り口になっていることをはじめ、他人と一緒に移動するときは、必ず体のどこかに接触していないといけないこと、そして、影から出る時に空間の歪みが生じないということだ。つまり、【転移魔法】のように、出現時の空間の歪みで相手にバレるという心配がないのだ。何という隠密性の高いスキル。まさにアサシン向きのスキルだな。なんかルルの能力値やスキルを見ていると、本当にアサシンとかできそうで怖い。

 ちなみに、ガイを捕まえる際に突然ルルが現れたのは、この【影渡り】を使ったかららしい。アドルフの話だと、進化が終わり繭から出てきた途端に、影の中に消えていったいということだ。間違いなく俺に会うためだろう。なかなか愛いやつである。

 で、その他のスキルだが、軒並みレベルアップした上に、新しいスキルが増えている。しかも最初からレベル高めだし。

 増えたのは【火魔法】【闇魔法】【身体能力強化】【魔力操作】の四つ。【身体能力強化】は【瞬発力強化】が消えていることから、統合されたか進化した、ってところだろう。それ以外は魔法系のスキルが増えている。なんか能力値といいスキル構成といい、随分と万能になったと思う。しかも魔法に関しては、魔法特化にも負けない能力&スキル構成だしな。近いうちに最強の魔獣とかになりそうな予感。

 そんなことを考えながら俺の隣で丸くなる、少し大人になったルルをなでる。

 しかしこれ、以前よりも毛並みの触り心地が良くなったんじゃないか? なんか癖になりそうなぐらい気持ちいぞ。

 などとどうでもいいことを考えながら、明日からまた『龍神迷宮』に行って修行を再開しようかな、とぼんやり思うのであった。

 


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是非手に取っていただけると嬉しく思います。

よろしくお願い致します。

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