第67話 坑道迷宮
ブックマーク&ポイントありがとう御座います。
リアルが忙しく更新が遅れました。申し訳ないです。
翌朝、俺達は新居の裏庭に集合していた。
理由は勿論、新装備の試着会だ。一通り動いてもらい問題無ければ、そのまま『坑道迷宮』に挑戦する予定となっている。
という事で、ウイ達全員に新装備を装着してもらったのだが……
うん、良い。凄く良い。創っている時は少々派手ではないかと思ったが、彼女達が装備する姿を見ると思ったよりも派手さが気にならない。それよりも、装備している彼女達の美しさと相まって、まるで戦女神のように見えてくるから不思議だ。
これは予想以上の結果だ。俺的に、とても満足している。後は装備してみての着心地だが……
「装備した感じはどう? 違和感とか動き難かったりはしない?」
「私は問題無いです。それよりも装備品を着けているのに、なにも装備をしていない時よりも身体が軽く感じます」
うん、それは【付与魔法】による瞬発力強化の重ね掛けのおかげだろう。これにより元々速いウイは、より高速に動ける事になるのは間違いないだろう。迷宮での活躍が大変楽しみだ。
「ボクも問題無いかな。前に使っていたガントレットやグリーブに比べて、かなり軽いから手足がすごく動かし易いよ」
ティアナの装備変更はガントレットとグリーブのみだから問題は少ないだろう。後は戦闘の際に手足が軽くなったのがどう影響するかだが、その辺は実戦の中でといった感じか。
「わたしも特に問題無いです。それにこの胸甲という装備。初めて装備しましたが、殆ど着けている感じがしないですね。それでいてすごく安心感が在って、とても良いです」
着けた感じが殆どしないのは、胸甲の素材が、軽量のクイーンリーパーアントだからだろう。また、胸甲の裏張りにトロール亜種の皮を使って着心地を良くしているのも、安心感につながっているのかもしれないな。
「わたくしも大丈夫そうですわ。凄く軽いし、それになんだが魔力が少し上乗せされている感じがするわ。まるで迷宮産の特殊な装備品みたい」
流石ハイエルフのエヴァといったところか。【付与魔法】で掛けてある魔力強化を感じ取っているようだ。だがしかし、【付与魔法】で掛けてあるのは魔力強化だけではない。エヴァはそこまで気が付いているか分からないが、エヴァとニーナ、2人の装備には魔力強化だけでなくMPの消費削減や回復上昇が当然のように付与してある。これで今まで以上に継戦能力が上がるのは間違いないだろう。
概ね4人とも装備した感じは問題無いようだ。これなら今から『坑道迷宮』に挑んでもまず問題無いだろう。まあ、一応、初日だから無理はしないように、様子を確かめながらといった感じにはなるだろうが。
おっと、迷宮に向かう前に1つする事が有ったんだ。
みんなで迷宮に行くとなると、屋敷が留守になってしまう。高級住宅地とはいえ、空き巣なんかも出るかもしれない。まあ、盗まれて困るようなものは無いが、それでも泥棒に入られたら気分が良くない。
ここはやはり守衛が必要だろう。そして、その守衛だがやっぱりアレがいいだろうな。――アレ。それはワルター邸で見たソフィアさん謹製の魔法生物、ゴーレムだ。まだ、試した事は無いがソフィアさんから創り方は聞いてあるし、今の俺の能力なら問題無いはずだ。
という事で早速試してみる。
使う魔法は【七元魔法(土)】と【死霊魔法】だ。
先ずは【七元魔法(土)】を使ってゴーレムの形を創る。ここで少し一工夫。
俺の【神倉】の中に余っている大量の魔鋼のインゴットを【七元魔法(土)】で生成した石に混ぜる。これが中々いい。【七元魔法(土)】で生成した石にも、魔鋼のインゴットにも、どちらにも俺の魔力が大量に含まれている為、凄く相性がいい。
その為、最初は只の石だった物が今では魔鋼その物になっているように見える。
うん、素晴らしい。
そしてそれに依って出来たのが魔鋼製の騎士6体だ。当然装備も魔鋼製のフル装備だ。中々いい感じではないだろうか。まあ、装備品は【匠創魔法】製じゃない分、俺達が使う装備品と比べるとおもちゃみたいな物だが、今はこれで充分だろう。
次に【死霊魔法】を使うのだが、通常の使い方をしてはいけない。ここで戦闘能力の高いアンデッドを召喚するのだが、召喚するのは気魂だけ。身体は生成しない。
本来【死霊魔法】でアンデッド召喚すると、始めに気魂がこの世に召喚されその後、身体がそのアンデッドに合わせて生成されていく。これを身体が生成する前に止め、残った気魂を創ったゴーレムの身体に宿らせれば完成だ。
これにより気魂はアンデッドだが、身体は【七元魔法(土)】で創られた入れ物の為、昼間が弱点のアンデッドでも昼夜関係なく動けるようになるわけだ。ただし、身体が破壊されると気魂は抜け出し簡単に消滅してしまう弱点はあるらしいが。
というわけで、今回【死霊魔法】で呼び出すのは、今呼び出せるアンデッドの中で一番強いと思われるスケルトンナイトにする。
では早速スケルトンナイトを1体召喚してみる。すぐに魂が召喚され、続いて身体の生成を開始しようした所で中断。そのまま気魂を一体の魔鋼の騎士に入れてみる。――待つ事しばし……
おお、動いた。
魔鋼の騎士は、胸に手を当て片膝をつき頭を下げた。
あっ! そういえば、スケルトンナイトを召喚した時も確か同じような所作をした気がする。まさに騎士だな。そしてどうやらゴーレム製作に成功のようだ。強さも、見た感じソフィアさんが使ったゴーレムよりかなり強くなっている気がする。取り敢えず今は迷宮に早く行きたいから強さの確認は今度でいいかな。まずはこれで問題無さそうだな。早速残りの5体も完成させよう。
そして6体の魔鋼の騎士が完成した。なんというか、意外に簡単だったな。良い事だ。
早速それぞれの魔鋼の騎士に命令をする。2体には門番として門の前に立ってもらい、残りの4体には屋敷の敷地内の巡回をしてもらう。そしてもし不届きな侵入者があったら撃退するように命令しておく。勿論、門から入ってくる者には手出しをしないように伝える。今回は簡易的な指示だが、迷宮から帰ったら指示を考え直すとしよう。
これで、取り敢えずだが後顧の憂いは無くなった。では『坑道迷宮』攻略に邁進しようではないか。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『坑道迷宮』は、ノヴァリスから馬車で約1時間北上した所に在った。
周りは既に森の中、巨木とまではいかないが、立派に木々に囲まれる中『坑道迷宮』の入口はあった。
入口の見た目はまさに坑道。自然に出来た洞窟ではなく、何者かの手によって掘り進められたような感じだ。ただ、坑道とは思えないくらいその中は広い。
迷宮の通路の幅は7、8mはあるだろうか? 高さも5m以上はあるように見える。これなら前衛が二人並んで戦っても問題ないだろう。
ちなみにこの『坑道迷宮』だが、ランクとしては3級ランク迷宮にランク付けされている。以前、攻略した『人魔迷宮』よりも1ランク上がるのだが、魔物の強さはいかがなものだろうか。
『人魔迷宮』の魔物のレベルは15~35。素質ランクではD~Cといったところだった。守護獣クラスでもレベル40を少し超える程度だった。さて、1ランク上の『坑道迷宮』に出現する魔物がこれより弱いという事は無いだろうが、いったいどれだけの強さを持った魔物が出て来るか今から楽しみだ。
【種名】ストーンゴーレム・ホース 【種別】鉱物生物
【レベル】27(C)
【スキル】咬みつき :レベル 2
筋力強化 :レベル 1
耐久力強化 :レベル 3
鉄壁 :レベル 2
硬化 :レベル 2
最初に出現した魔物は石の馬だ。
その数5体。レベル的には『人魔迷宮』の中層階層で出てきた魔物と同じくらいだろうか? まあ、迷宮ランクが1ランク上がっただけなのだから、低層で出現する魔物はこの程度のものなのかもしれないな。
それよりこのストーンゴーレム・ホースのスキル構成だが、見るからに防御力重視といった感じだ。ちなみに【硬化】だが、自分の身体の表面を硬化し、鎧化するスキルのようだ。俺の【光鱗衣】の劣化版スキルのようなモノと考えればいいだろうか。
では早速、『坑道迷宮』の初戦闘と参りましょう。
戦闘開始して、まず飛び出したのはウイだ。
流石、ただでさえスピードのステータス値が高いのに、それを装備で更に上乗せされているだけあって、まさに目にもとまらぬ速さでストーンゴーレム・ホースとの距離を詰める。
それに続くは俺とティアナ。本来壁役のティアナが最初にストーンゴーレム・ホースに当たるのが正しいと思うのだが、まあ、レベルの差もあるし問題ないだろう。――というか、ウイのやつ一撃でストーンゴーレム・ホースの首を切断してしまったよ。普通、細剣って刺突中心で戦う武器で、斬る事は出来なくは無いが補助的なはずなんだが、あの硬いストーンゴーレム・ホースの首を簡単に切断してしまうとはなんとも恐ろしい。それとも思ったよりこのストーンゴーレム・ホースが脆いのか?
で、俺も同じ事をやってみたのだが、一応出来た。……出来たのだがこいつ、凄い硬いんですが……クイーンリーパーアントとまではいかないがかなり硬い。このレベル帯の魔物では今までで一番じゃないだろうか? それをウイはあの細剣で――それもあまり力を入れているように見えず斬っている。
俺もあの細剣で斬れるかな……、いや、おそらく出来る。出来るとは思うのだが、それはステータスでゴリ押しで斬るだけだから、ウイとはちょっと違うんだよな……
――っと、そんな事を思っていたら既にストーンゴーレム・ホースは全滅していた。戦果としては俺が1体、ウイが2体、ティアナが1体、ルルが1体といった感じだ。ニーナとエヴァは出番無しで終わった。まあ、まだ低層だしな。
「あまり手応えは有りませんでしたね」
「だね。というかウイちゃん速すぎ」
俺も同感だ。見た感じ装備の補正を入れても能力値以上に速い気がする。
「そうですわ。わたくし達の出番が全くありませんでしたわ」
「エヴァお姉様の言う通りです。ウイさんすごいです」
全員当然問題なさそうだな。では、どんどん行こう。
【種名】ストーンゴーレム 【種別】鉱物生物
【レベル】25(C)
【スキル】筋力強化 :レベル 2
耐久力強化 :レベル 3
剛力 :レベル 1
鉄壁 :レベル 2
硬化 :レベル 2
続いて登場したのは、普通のゴーレムが7体だった。強さはストーンゴーレム・ホース方が強いようだが【剛力】が有る分、やや攻撃力はストーンゴーレムの方が高そうだ。
とはいえ、所詮は低レベルのゴーレム、パワーは有るがスピードが足りない。全くといっていいほど、俺達の動きについてこられていない。まさに嬲り殺しである。見ていると少し可哀想に思えて来るから不思議だ。
――迷宮に入り既にストーンゴーレム系の魔物を40体は倒してきたが、正直色々な意味で美味しくない。魔物のレベルが低いからレベルアップにもつながらないし、動きが遅すぎて戦闘訓練にもならない。挙句の果てに素材が魔石しかとれない。というか魔石以外全てただの石って……
金属系のゴーレムが出るのは確か15階層以降からだ。今後の為にも、出来るだけ早く15階層を目指すとしよう。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
ブックマークや評価ポイントを頂けると、とても励みになります。
アルファポリス様でランキング参加する事にしました。下のバナーからよろしくお願いします。




