第59話 召喚獣
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「これでおぬしも【召喚魔法】が使える様になったわけじゃが……、おぬしいったい何者じゃ? この仕事を始めてから70年以上経つが、召喚契約を最初の一回で成功させた奴は初めてじゃし、さらにあれほどの魔力を持った者も初めて見たぞ」
カミラさんは後半まくしたてるように話して来る。
まあ、俺の魔力量は異常なのは分かっていたし、それを殆ど注ぎ込んだのだからそりゃ驚くだろう。
「そうなんですか? まあ、魔力量に関しては自信がありますからね。一回で成功したはたぶん運が良いからでしょう」
適当に答えておくが、おそらく一回で成功したのは【召喚魔法】スキルを既に持っていた上、召喚獣と契約していなかったからだろう。
「隠し事が有りそうじゃがまぁいいわい。では、最後に召喚方法と【召喚魔法】について少し話をしておくぞ」
俺の適当な説明に納得したのか分からないが、カミラさんは【召喚魔法】について説明を始めた。
「まずは召喚方法じゃ。――召喚したい召喚獣をイメージして召喚と唱え最後にその召喚獣の名前を呼ぶのじゃ。小僧なら召喚、ルルといった感じにな――ちょっとやってみよ」
俺はカミラさんの言われるままにルルを召喚してみる。
「召喚、ルル」
すると目の前に直径1mほどの魔法陣が浮かび上がり、その魔法陣から黒い子狐が浮き出て来るように現れた。
「キューン」
召喚されたルルは、俺の足にすり寄り甘えて来る。愛い奴じゃ。
頭やあごの下を撫でてやると気持ち様に目を細める。
それを見ていたウイも――
「召喚、アルス」
とアルスを召喚する。
ルルとは違い4mほどの大きな魔法陣が現れ、その中から巨馬が姿を現す。
ウイはアルスを愛おしそうに見つめながら首を撫でている。まるで母親が子供を撫でているようだ。
「うむ、2人とも上手く呼び出せたようじゃな。では、次に注意点じゃが、召喚獣は召喚する時もそうじゃが、召喚している間も常に魔力を消費する。とは言っても微々たるもんじゃから魔力の回復量の多い者じゃと回復速度が遅くなるくらいじゃろうけどな。――まあ、お前ら二人の魔力量なら消費量より回復量が多くなりそうじゃが……」
確かに今の俺だと回復量が落ちているのかどうかすらも分からないな。これならずっと召喚状態にしておいても良さそうだ。
「それとこれは注意点ではないのじゃが、しばらくは2体目の召喚契約はよした方が良いぞ。今まで長年この商売をやって来て分かったのじゃが、【召喚魔法】スキルを得てしばらくは2体目の召喚は成功しないようなんじゃ」
【召喚魔法】のレベルの問題か?
『はい、その通りです。レベルが上がるごとに契約出来る召喚獣の数が増えます』
なるほど、そうするとスキルレベルは7までだから召喚獣の最大契約数は7体という事になるのか。
まあ、まだレベルが1だし、新たに契約するのはまだ先になるだろうな。
「【召喚魔法】を鍛えて自信が付いたらまた来な。そしたらまた召喚契約をさせてやるからの。それじゃ、ワシはもう上に行くから、お前らはここで召喚獣の状態を確認したら帰りな」
そういうとカミラさんは全て終わったとばかりに部屋から一人出ていてしまった。
最後までマイペースな人だったな。
さてと、カミラさんのお言葉通り早速新人の状態チェックをするかな。
先ずはウイの召喚したアルスからだ。
【名前】アルス 【年齢】1歳
【種族】キャリッジホース 【職種】召喚獣 (所有:ウェンディ)
【レベル】14(D-)
【HP】182/182
【MP】182/182
【筋力】122 (C)
【耐久】122 (C)
【俊敏】120 (C)
【器用】26 (F)
【知力】25 (F)
【魔力】121 (C)
【幸運】40 (E)
スキル一覧
【上位スキル】
:風壁 レベル 1
【通常スキル】
:風装衣 レベル 1
筋力強化 レベル 2
危機感知 レベル 1
牽引 レベル 2
……ちょっと微妙か? いや、ステージ1のスクロールだったしこんなものか。実際まだ【創造神の加護(下位)】設定していないし……あっ! そういえばウイの召喚獣に対して【創造神の加護(下位)】って設定出来るんだろうか?
『可能です』
どうやら出来るらしい。なら早速【創造神の加護(下位)】を設定して眷属に設定するか。
――という訳で、アルスがこうなった。
【名前】アルス 【年齢】1歳
【種族】キャリッジホース 【職種】召喚獣 (所有:ウェンディ)
【レベル】14(C-)
【HP】289/289
【MP】182/283
【筋力】163 (B)
【耐久】163 (B)
【俊敏】160 (B)
【器用】41 (E)
【知力】40 (E)
【魔力】161 (B)
【幸運】81 (D)
【加護】創造神の加護(下位)
スキル一覧
【上位スキル】
:風壁 レベル 1
【通常スキル】
:風装衣 レベル 1
筋力強化 レベル 2
危機感知 レベル 1
牽引 レベル 2
あれ? ウイ達に【創造神の加護(下位)】を付けた時には素質ランクは2ランクアップしたハズ、それに確か説明でも、2ランクアップとなっていたはずだけど……
『キャリッジホースのアルスは、ウェンディの召喚獣である為、直接マスターの従属には当たりません。ただ、ウェンディがマスターの従属関係である為、効果が劣化した状態ではありますが【創造神の加護(下位)】を与える事が可能となりました』
直接の従属にならないから半分の効果になってしまうのか……じゃあ、共有や経験値はどうなるんだ?
『そちらに関しては、経験値は同じように獲得出来ますが、スキル共有出来るものは1つのみです』
経験値以外はどうやら劣化するようだ――まあ、仕方ないな。
後は、あっ! そういえばスキルを見ていなかったな。えっと……
なんか上位スキルを持っているな――このランクの召喚獣でも上位スキルって持つ事あるんだろうか?
『いえ、本来はあり得ません。今回はウェンディの風の属性の魔力の影響が、色濃く出ているのでしょう。【風壁】、【風装衣】はその為、取得出来たスキルです』
ちなみにスキルの効果は?
『風装衣は自身の周りを風の結界で守り、魔法や弓などの遠距離攻撃を防ぎ更に己の速度を増すスキルです。そして風壁は風装衣をより広範囲で行うスキルです』
なるほど、戦闘はもちろん馬車を引かせるにも有用そうなスキルのようだ。とはいえスキル発動中はMPも消費するだろうから長時間は無理かな……
まあ、戦闘要員というより、やっぱり移動時に活躍してもらおう。
では続いて俺の召喚獣のルルを見てみよう。
【名前】ルル 【年齢】1歳
【種族】ブラックサンダーフォックス(幼体)
【職種】召喚獣 (所有:レオンハルト)
【レベル】15(A-)
【HP】147/147
【MP】2275/2275
【筋力】173 (B)
【耐久】130 (C)
【俊敏】305 (SS)
【器用】174 (B)
【知力】217 (A)
【魔力】309 (SS)
【幸運】174 (B)
【加護】創造神の加護(下位)
スキル一覧
【特殊スキル】
:黒雷
【上位スキル】
:隠密術 レベル 3
【通常スキル】
:雷装衣 レベル 3
雷魔法 レベル 2
咬みつき レベル 2
瞬発力強化 レベル 2
危機感知 レベル 1
気配感知 レベル 2
暗視 レベル 3
……なんだこれ……
色々気になる所があるが先ず何で【創造神の加護(下位)】の設定をしてないのに【創造神の加護(下位)】が付いているんだ?
『マスターの召喚獣は、召喚契約した時点で完全な従属者となる為、【創造神の加護(下位)】は自動的に付与されます』
なるほど……まあ、それは良いや。それよりまずステータス値だ。
レベル15でMPが2000を超えるってあり得ないでしょ。
今うちのパーティーでMPが2番目に多いティアナでもレベル40を超えてようやく2000を超えたのに……第一ニーナやエヴァよりレベルは低いのにMP値はルルの方が上だという事は、純粋な魔法職のニーナやエヴァよりもルルの方が圧倒的にMP量に対する素質があるって事になる……とんでもないな……
それにスキルだ。何で【隠密術】を持っているんだ? これって俺のオリジナルだから、俺以外だと共有でしか持てないはずだが……
『ルルはマスターの魔力によって生まれた為、適性の有る能力に対しマスターの能力の一部が受け継がれています。それが【隠密術】です。またMP容量が多いのは召喚契約の際にマスターがMPを大量に注いだ事に寄る影響だと思われます』
当然、俺の所為のようだ。そうすると特殊スキルの黒雷ってのも?
『その通りです。本来黒雷は、ブラックサンダーフォックスが何度か進化した先で取得出来るスキルです。その為通常、幼体で取得する事は絶対に有りません』
……絶対ないんだ……というか進化とかするんだ……
まあいいや、取得出来たのだし文句は無いさ……ちなみに黒雷ってどんな能力なの?
『黒雷の能力は、大きく分け2つ。1つは自身を雷化し、戦闘を行います。その際大量のMPを消費しますが、物理攻撃無効や触れた者を感電させるなどの常時効果が表れ、また身体能力も上昇します』
1つ目だけでもとんでも無いスキルだな……
『2つ目は、黒い雷を自在に操り攻撃を行います。また、この黒雷は通常の雷魔法よりMPを大きく消費しますが、その分高い威力を持っています』
……やばいな……、こんな小さな子狐にそんな危なっかしいスキルが制御できるのだろうか……下手したら俺達も巻き込まれるかも……
いや、その辺は訓練次第か……、しばらくは実戦では使用しないように教えとかないとな。
しかし、癒し担当と思いきやいきなりとんでもない召喚獣が出てきたな……
何といいますか――嬉しい誤算だ。
これで俺達に新たな仲間が加わった訳だがニーナとエヴァも含めてまだ戦力としては数えない方がいいだろう。これからしっかり鍛えて、戦力になってもらおう。なんてったってこれか迷宮都市が主戦場になるのだから。
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