第57話 召喚魔術師
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今回は説明回です。
翌朝、朝食を終えた俺達は、早速召喚魔術師の家に向かっていた。
俺達が歩いているのは中流階層の人達の住宅が立ち並ぶ閑静な住宅街だ。そんな閑静な住宅街を俺達5人はゾロゾロと歩いている。
俺はソフィアさんに書いて貰った地図と【マップ】を照らし合わせながら、召喚魔術師の家を探していた。
この地図を見る限り、この辺で間違いなさそうなのだが――この辺りの家はどの家も似たような造りで、どれが召喚魔術師の家か分からない。
「さてと、どの家だろう? 歩いている人もいないし、これは一軒ずつ訪ねてみるしかないかな?」
俺が一言そう漏らすと――
「レオン様、アレを」
ウイがそう言って指をさす。俺がウイの指さす方に視線を送ると1羽の梟がこちらを見ていた。
「梟だな。なんで梟がこんな時間に街中にいるんだ? それにこの感覚……もしかしてあれは召喚獣か?」
「私もそう思います。あの梟からは精霊に近い気配を感じます」
「わたくしも同感ですわ。確かにあの梟からは精霊に近い気配を感じますわ」
2人の【精霊魔法】使いが言うのだから間違いないのだろう。それに俺の【魔力感知】にも独特な気配を感じている。
「あの家で間違いなさそうだな」
「そうですね」
「じゃあ、行こうか」
俺がみんなに声を掛ける。
「ようやく召喚魔法を使えるようになるんだね。楽しみだね」
とティアナの弾む声と共の俺達は早速家の玄関に向かった。
玄関の前に立つ俺達を梟はまるで監視しているように見ている。
その視線に居心地の悪さを感じながら俺は扉のノッカーを手に取りコン、コン、コン、コンと4回鳴らす。
――しばらく待つが反応が無い。俺達の事を、梟を使って監視しているんじゃないのか?
そう思いながらも、もう一度ノックする。すると――
「何度もうるさいのぉ、ちゃんと聞こえとるわい。ちょっと待っとれ」
家の中から、しわがれた女性の声が聞こえる。
しばらく待っていると、ガチャリと音がして扉が開き小柄な女の子が姿を現した。
ん? 女の子?
その少女は肩まで伸びたぼさぼさの金髪をポリポリとかきながら、無気力で精気のない目でこちらを見ている――お弟子さんかな?
「何用じゃ?」
少女は、見た目に似合わないしわがれた声で問いかけてくる。
「あの……こちらで召喚魔法を教えてもらえると聞いたんですが――あっ! 俺はレオンハルトといいます。召喚魔術師さんはいらっしゃいますか?」
そう俺が少女に問いかけると、少女は俺を睨み――
「ふむ。召喚魔術師はワシじゃが……召喚魔法を学びたいのはお前たち全員か?」
えっ? この子が召喚魔術師? どう見ても7、8歳くらいの女の子にしか見えないんだが……
ウイ達も同じで少女を戸惑いながら見ている。
「なんじゃ? ワシの姿が珍しいか?」
俺達が答えに窮していると少女が不機嫌そうに聞いてくる。
いや、姿が珍しいというか子供というところが困惑の原因なんですが……
「はぁ……えっと、はい、そんな感じです」
「ん? 奥歯に物が挟まったような言い方じゃのう。まあ、いい。ワシは小人族とエルフのハーフでな、こんななりじゃが、これでも百年は生きておるぞ。分かったか?」
マジですか!? この見た目で俺達よりもはるか年上とは……
「はい、すみません。大変失礼な事を……」
「まあ、よくあることじゃてかまわんぞ――で、学びたいのはお前ら全員か?」
顔は不機嫌のままだが許していただけたようだ。
「はい、全員教えて頂きたいです」
俺が答えると。
「「「「お願いいたします」」」」
後ろに立つウイ達全員が頭を下げる。
「そうかい……」
見た目少女の魔術師はそこまで言うと俺達全員を頭のてっぺんから爪先まで舐めるように視線を這わせる――なんとも居心地が悪い……
「ふむ……取りあえず中に入るのじゃ。話はそれからじゃ」
そう言うと見た目少女の魔術師は家の奥に入っていく。俺達のそれに続き家の奥に入っていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
案内された部屋はソファーと長テーブルが置かれているだけの飾り気の無い部屋だった。
俺達はその部屋のソファーに好きに座るように言われ俺がまず座るとみんな思い思いの席に座った。
「さてと――自己紹介がまだじゃったの。ワシは召喚魔術師のカミラじゃ――早速じゃが、残念なお知らせがある」
召喚魔術師――カミラさんは自己紹介をしたと思ったらいきなり話しを進め始めた。
「残念な――お知らせですか?」
「うむ、誤魔化しても仕方がないからの――そこのお前とお前」
そう言うと、カミラさんはティアナとニーナを指さす。
「はい?」
「何でしょうか?」
急に指を刺され困惑する2人。
「お前らは龍人族と天人族じゃろ」
「そうだけど……」
「その通りですが……」
2人とも更に困惑気味だ。
「お前ら2人は、残念ながら種族的に【召喚魔法】を覚える事が出来んぞ」
「なっ!!」
「そうでしたか」
ニーナは落ち着いた反応だったが、ティアナは相当ショックなのか驚いた顔のまま固まっている。
念の為【ロラ】に確認を取ってみると――
『あまり一般的ではありませんが、事実です。2種族とも【召喚魔法】と相性が悪く取得する事は出来ません』
なるほど……じゃあ、俺の【召喚魔法】スキルを共有したらどうなる?
『その際は【召喚魔法】を使用する事も召喚獣と契約する事も可能です――ただし、【召喚魔法】の共有を解除した瞬間、契約した召喚獣は完全に消滅してしまいます』
……それじゃ、結局ダメだな――共有は3つしか設定出来ないし、その1つを【召喚魔法】で使用するのはもったいないからな。
「そ……そんなぁ……」
ティアナの姿を確認すると、この世の終わりのような表情をして涙を流し項垂れている。
随分楽しみにしていたからな……今はそっとしておいてあげるのが優しさか――
「では、話を続けるぞ」
カミラさんは落ち込むティアナを無視して話を進める。
「残る3人には、【召喚魔法】を取得できる可能性はある――ただし、取得出来る可能性は1割以下じゃ」
えっ? そんなに低いのか?
「次に取得方法じゃが――」
もう次に行くのかよ!
「2つある。先ず一つは、スクロールを使用して召喚契約を行う方法。そしてもう一つが、知性の高い魔物を倒し召喚契約を行う方法じゃ――ただし、どちらにしても一長一短があるがの」
そこで一旦カミラさんは俺達を見渡す。
「それでは、それぞれの方法について詳しく話していくぞ――先ずはスクロールを使用して契約する方法じゃが、こちらの利点としては、比較的簡単、安全に契約を行う事が出来る事じゃな。欠点としては契約するのに高額な金が掛かる事と、強力な魔物と契約する事が出来ない事かの」
「一ついいですか?」
「何じゃ?」
「スクロールで契約するのに高額な金額が掛かるというのは、いくらくらい掛かるのでしょうか?」
お金には困っていないが一応確認しておく。
「人それぞれで違うので正確にいくらとは言えんが、少なくとも20万コルド、掛かる時は50万でも100万でも掛かるかの――ただしそれだけ掛けても素質が無ければ契約は出来んがの」
「なんで、そんなに差が出るんでしょうか?」
「それは、スクロールを使った契約の場合、たとえ素質がある者だとしても何度も失敗するのが当たり前なのじゃ。大概10回くらい失敗するのは覚悟しておいた方がいいの。ちなみにスクロールの値段じゃが、一番安いステージ1のスクロールで2万コルド、ステージ2じゃと5万、ステージ3になると10万コルドじゃな」
「質問ばかりのすみません。ステージというのは?」
「構わんぞ――ステージというのはスクロールの格のようなものじゃ。ステージが高いほど強力な魔物と契約出来る可能性が高くなるのじゃ」
なるほど……大体理解出来た。
「分かりました。話の腰を折ってすみませんでした」
「うむ、よいぞ。では、話を戻す。続いて魔物を倒して召喚契約を行う方法じゃが、こちらの利点は金が一切掛からない事と強力な力を持った召喚獣と契約が可能な事じゃな。欠点としては、危険が伴なう上契約が完全に運任せな所じゃ――この契約を行うのに【召喚魔法】のスキルが絶対必要な上、魔物の方から契約を求めて来る必要がある。しかしこれが滅多に魔物から契約を求めてくる事は無いのじゃよ。つまりこの方法は完全に運次第ということじゃな」
なるほど、今回はこの2つ目の方法は論外というわけだ。
「ここまで聞けば分かると思うが、ワシが貴様らに教える方法は1つ目のスクロールを使って召喚獣と契約する方法じゃ。この方法で召喚獣と契約に成功すれば【召喚魔法】のスキルも習得できるから、今後迷宮などに潜った時、運が良ければ魔物の方から契約を求めて来る事があるかもしれんぞ」
俺は既に【召喚魔法】のスキルを持っているけどね――あっ、そうだ――
「【召喚魔法】のスキルを取った後はスクロールでの契約の成功率は上がるのでしょうか?」
「それに関しては寧ろ落ちるといえるの。理由は契約している召喚獣が多いほどスクロールでの契約成功率が落ちるからじゃ」
なるほど、普通は【召喚魔法】スキルを持っている時点で1体は召喚獣と契約しているのが当然。その為、成功率は落ちるという事か。じゃあ、【召喚魔法】スキルを持っていて契約召喚獣がいない俺ってどうなるんだろう? まあ。試せば分かるか。スキルもあるし契約出来ないという事はないだろう。
「では、早速、スクロールの契約のやり方について話していくぞ」
そう言ってカミラさんは召喚契約の具体的な話に移っていた。
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