第56話 迷宮都市へ
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目標だった人魔迷宮10層も2日目できっちり到達した。
ニーナのレベルは21まで上がったが流石にエヴァのレベルまでは上がらなかった。だがまあ、上々の出来だろう。
こうして目標を達成した翌日、俺達は迷宮都市ノヴァリスに向け王都を出発した。
迷宮都市ノヴァリスへ向けての乗合馬車の旅は、至って順調にきている。
王都を出発してから7日。旅の行程としては約3割を過ぎた。
ここまで順風満帆に来ていた旅もここからはそうは行かないだろう。何故なら――いよいよここから竜の領域に入るからだ。
竜の領域――ウインザー王国東部に広がる広大な平原とその平原の北に聳える山々を人々はそう呼ぶ。
竜の領域にある山々には数千の竜が生息していると言われ、山の麓の森と目の前に広がる平原は、その竜たちの狩場となっており、頻繁に竜を見かける。
その為、街道はこの竜の領域を避けるように、大陸の海岸線をなぞって引かれている。
そして俺達の目的地である迷宮都市ノヴァリスは、この竜の領域の東の地域に存在する。
ちなみに、この竜の領域には3つの大きな街があり、それぞれに竜の部位を表す別名が付けられている。
今朝、出発した街もその一つ、竜の平原入口の街で街名はケイルーンシティ、別名竜の尾と呼ばれる街だ。そして迷宮都市ノヴァリスは竜の眼と呼ばれ、竜の平原に引かれた街道の最奥にある。残る1つが今、俺達が向かっている街、リーベックシティ。竜の爪と呼ばれる竜の平原の中継都市だ。
竜の平原はどことなく竜の形に似ており、この3つの街の位置からこの別名が付けられたらしい。――竜の形と言われているが、この広大な平原を誰が上から見渡したのかは疑問だが――
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「……何かいる」
順調に進んできた乗合馬車の中でのんびり過ごしていると、突如索敵に反応があった。
しかも戦っている? 魔物は3体――反応を見る限り2対1で戦っているように見える。【マップ】を見ると、3体の内2体はトロールのようだが、残り1体は不明と表示されている。――見たことが無い魔物ということか。
魔物は街道沿いにいる為、このままいくと後30分程で接触する事になりそうだ。
「レオン様?」
俺の言葉に反応するようにウイが声を掛けてくる。
「魔物が3体いる――が、2対1で争っているみたいだ。2体はトロール。もう1体は不明。馬車を守る為、俺達が先行して、魔物の排除を行う。不明の1体は何が出るか分からない。充分注意してくれ」
「はいです」
「は~い」
「畏まりました」
「了解しましたわ」
それぞれが思い思いに返事をしてくる。
早速俺達は御者の人に事情を話し、直ぐに現場に向かう。
一番移動速度が遅いニーナのペースに合わせて移動しているとはいえ、高いステータスを誇る俺達が、本気で高速移動を行えば、馬車の移動速度の倍以上のスピードが出る。この速度差を利用して馬車が到着するまでに魔物の排除を行う――予定だ。
「――デカイな……」
「竜――では無いようですね」
俺のつぶやきにウイが答える。
他のメンバーも一様にその魔物を見ている。
その魔物は体長10mほどあるだろうか? 胴体の太さも1mはありそうだ。全身竜の鱗のような物に覆われており、黒光りする細長い体は、まさに蛇といわれる姿だ。
その大蛇は先ほどまでトロールと呼ばれていた死体のハラワタを貪っている。
あのトロールが飯扱いとは、中々強敵のようだ。――さて、鑑定の結果は――
【種名】ドラゴンバイパー[幼体]【種別】蛇竜種[亜竜]
【レベル】50(B)
【スキル】身体強化 :レベル 3
鉄壁 :レベル 3
皮膚強化 :レベル 3
竜咆哮 :レベル 2
幼体の為かスキルレベルは低いが、かなり強力な魔物だとは思う――だが、今の俺達なら苦戦はしないだろう。それどころか新人2人のレベル上げに丁度良さそうだ――いや、レベル50なら全員にレベルアップの可能性があるかも。
やがてドラゴンバイパーも、俺達の事を認識する。
今までトロールのハラワタを貪っていたドラゴンバイパーは食事を止め、俺達の方にゆっくりと近づいて来る。
どうやら俺達を次の標的と決めたらしい。
「みんな準備はいいか?」
「はいです」
「は~い」
「大丈夫です」
「問題ありませんわ」
各々が自信を持って答える。
再びドラゴンバイパーに視線を向けると、突如ドラゴンバイパーはなんの前触れもなく猛スピードでこちらに突っ込んできた。
一気に距離が縮まる。すぐに俺が迎撃に移ろうとする――と。
「ご主人様! ボクに任せて!」
ティアナはそう言うと突撃してくるドラゴンバイパーの前に立ちふさがる。
ドラゴンバイパーはティアナに構う事無くさらに加速してこちらに突っ込んでくる。
「行かせないよ!!」
ドラゴンバイパーは立ちふさがるティアナを弾き飛ばそうとした瞬間、ティアナは飛び上がり猛スピードで突っ込んでくるドラゴンバイパーの頭をカイトシールドで殴り飛ばす。
ガッゴォォォォン!!
激しい音が辺りに響きわたりドラゴンバイパーの巨体は小柄な少女のシールドバッシュにより弾き返された。
「ニーナさん、わたくし達も行きますわよ」
「はい、エヴァ姉様」
声を掛け合う後衛2人。そして――
「フレアアロー!」
「ホーリーランス!」
赤い光を纏った矢と白い光の槍が、2人の声と共に放たれドラゴンバイパーを襲う。
エヴァが放った赤い矢はドラゴンバイパーの額に直撃すると巨大な炎を噴き上げ頭部を包み込む。
ニーナの放った光の槍はドラゴンバイパーの体に突き刺さり肉を抉る。
痛みにのたうち回るドラゴンバイパー。そこに――
「止めです!」
ウイが突撃、そして一閃――シュンッと音が耳に届くと共に、ドラゴンバイパーの頭部と胴体は美しい切り口の残し切断された。
……アレ? 俺、何もしてなくない……
女の子4人であのレベルの魔物を圧倒してしまうとは……
特にウイだ。亜竜とはいえ、竜鱗ごとあの巨体を切断するとか信じられん。俺ならステータスでゴリ押しして強引に切断出来ると思うが、俺がウイのステータスだったら絶対切断は出来ない自信がある。
俺とウイが同じステータスで勝負したら、間違いなく俺が負けるだろう……
しかし、うちの娘達は全員純粋な戦闘能力が高すぎる気がする。
いずれ俺もそうなれるかな? 俺がちゃんと戦い出したのはまだ2ヶ月前からだ。俺だってこれから経験を積んで技術を磨いていけば――そしたら、俺もウイ達のように戦えるようになるはずだ……きっと……たぶん……出来るといいな……
そんなことを思いながらドラゴンバイパーの死体を【神倉】に収納し、乗合馬車に合流。俺達は再びリーベックシティに向け旅を続けた。
あっ! そうそう今回の戦闘で俺とウイ以外、予測通りレベルアップしました。パーティー強化も至って順調です。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「もうすぐリーベックだよね」
ティアナが嬉しそうに俺に話し掛けてくる。
「ああ、今日の夕方に着くらしいから、あと1時間ってところだな」
俺も少しワクワクしながら答える。
ウイも声には出さないが尻尾の振り具合を見ると楽しみにしているように見える。
何故俺達が、リーベックシティを楽しみにしているのか? それは――
「どんな子と契約出来るのかな? 出来るだけ可愛い子がいいな」
ティアナの言葉に頷くウイ。
新人2人は意味が分からず不思議そうな表情をしている。
「可愛い子かどうか分からないが、折角の召喚獣だ。出来るだけ能力の高い子がいいな」
そう、いままで放置扱いであった【召喚魔法】がこの街で、ようやく使えるようになるのだ。
何故か――ワルターさんの奥様、ソフィアさん情報で、このリーベックの街には召喚魔法の導師がおり、来るものは拒まずの精神で【召喚魔法】を教えているらしい。
俺にとっては願ってもない事である。
そう言う訳で、この話をを知らない新人2人を除いた俺達3人は、ややテンション高めになっていたのだ。
リーベックシティには夕日が沈む直前に到着した。
竜の平原にある街なだけに、外敵の侵入を阻むように高く分厚い街壁に囲まれており、王都並みの防衛力を誇っている。
街を歩く冒険者らしい人達を見ても、皆一様にレベルが高く、この街の冒険者の質の高さが伺える。
それだけにここは常に危険と隣り合わせの街だといえるのだろう。
さて、街に着いたのはいいが今の時間から召喚魔法を教わりに行くにはもう遅い。
という訳で今日は宿でゆっくり休み、明日朝から召喚魔法を教わりに行く事に決定した。
そうと決まった俺達はワルターさんおすすめの宿屋に向かう事に――
いよいよ召喚魔法が覚えられる。はやる気持ちを抑え暗くなりつつある街の中を俺達は宿屋に向かって歩いて行った。
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