第52話 オークション
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「では、最初の出品される奴隷は人族の女性。年齢は16歳でございます。最低入札価格は50万コルドからでございます。それではこれより入札を開始致します」
司会者の男が紹介した女性は目鼻立ちの整った黒髪の美少女。それもちょっと街中では簡単にお目に掛かれないようなかなりの美少女だ。流石オークションに出されるだけの事はあるな。
「50万」
早速入札が始まった。
「60万」
「70万」
「75万」
…………。
……。
「107万」
「108万」
「109万」
金額が上がるにつれ会場全体が盛り上がってくる。
「110万」
…………。
110万の声が上がってからは他の入札の声が上がらない。
「110万、110万。他にございませんか? ……無いようですのでこちらの人族の奴隷は110万コルドにて18番様の落札でございます」
一斉に上がる拍手の音と共に周りから「今回はいきなり高額が出ましたな」などの声が聞こえてくる。
俺もちょっとビックリだ。確かにすごく容姿が優れていたと思うが、同じような容姿の娘だったとしてもレベロ商会で買うなら100万を超える事は無い気がする。まあ、相場をそんなに分かってないので何となくそう思うだけだけど。
「続いては龍人族の男性。年齢は35歳……」
そうやって次々とオークションは進んでいく。そして奴隷のオークションが始まってから約20分が過ぎた頃、ようやくニーナの順番になった。
「続きましては天人族の女性。年齢は17歳でございます。回復系のスキルを有しておりますのでの冒険者の方々にもお勧めでございます」
おいおい、今までそんな煽り文句みたいな事言わなかったのに今回に限り何でそんな事言うんだよ。
「最低入札価格は70万コルドからでございます。それではこれより入札を開始致します」
最低入札価格が70万コルドとは。今まで出ていた奴隷の中で一番高いな。これは心して臨まないとな。
「70万」
誰かが最初に声を上げるのを聞き俺もすぐさま声を上げる。
「105万」
いきなり入札額が上がり会場から驚きの声が上がる。
10万刻みも良いがここは入札限度額まで入札する。ちなみに入札限度額は最低入札金額の半額までとなっている。つまり今回の場合は70万の半額、35万を足した105万までなら入札出来るという事だ。
…………。
「115万!!」
俺が入札してからやや時間を置いて誰かが大きな声を張り上げ入札してきた。
「150万」
だが俺はすぐに再び入札限度額を提示する。それと同時に周りから歓声が上がる。
「くっ! ……くそっ! 無理だ」
「現在の入札額は150万。150万でございます。他にございませんか? ……無いようですのでこちらの天人族の奴隷は150万コルドにて34番様の落札でございます」
落札を決めた瞬間、会場が今日一番の盛り上がりになる。どうやら入札限度額を連続で提示した俺の入札の仕方に、天晴といった感じで拍手喝采となったようだ。
こんな入札の仕方をして白い目で見られないか少し心配したが、かえって喜んでもらえたようでよかった。
そんな事を考えていると、落札後すぐ係りの人がやって来た。
「これから、すぐに落札いただいた奴隷を引き渡す事も可能ですが、引き続きオークションに参加されるのでしたらオークション終了後でも結構ですがどうされますか?」
引き渡しにどれくらい時間が掛かるか分からないし、こういう事は後でまとめてやった方が面倒が無くていい。
「じゃあ、オークションが終わった後でお願いします」
「畏まりました。では、引き続きオークションをお楽しみ下さい」
そう言って係りの人は去っていった。
「レオン様。天人族の娘を無事落札出来て良かったですね」
「そうだね。ちょっと強引な落札だったけどね」
「これでボクにも後輩が出来るんだね」
ウイやティアナも新しい奴隷が増えたからといって、雰囲気を害するような感じはないようだ。奴隷を複数所有するのは上流では結構当たり前の事のようだし、2人とも自然に受け入れてくれているのだろう。ただ、ちょっとくらいヤキモチ的な雰囲気があった方が俺としては嬉しかったりもする。複雑な男心だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
オークションが順調に進んでいる。現在16人目の奴隷のオークションを行っているので、ようやく次が念願のハイエルフの娘の番になる。
ちなみに今回の奴隷オークションで一番の値段が付いたのが15番目に出てきた人族の女性で、容姿はもちろんの事、元ミスリルランクの冒険者らしく戦闘能力も高いという事で190万コルドというすごい金額が付いた。王都じゃなければ小さな家を建てられる金額だ。まあ、俺的にはいくら優秀で容姿が良くても賭博で借金こさえて奴隷落ちした人をあまり買う気にはならないんだけどね。
そんな訳でオークションはつつがなく進み、ようやく16番目の奴隷のオークションも終わったようだ。
「140万コルド。他にございませんか? ……無いようですので、こちらのエルフの奴隷は140万コルドにて29番様の落札でございます」
どうやらまた高額の金額が付いたようだ。今回のオークションは久しぶりにハイエルフが出品されるとあって普段以上にオークションの参加者が多くなっている。その為なのか自然と他の奴隷の金額もいつも以上に上がっているようだ。
しかし、今までの傾向を見るとハイエルフの娘の金額もすごい事になりそうだ。出来れば2人合わせて500万以内で済ませられればいいんだが難しいかも。
「それでは本日のメインイベントでございます。最後に出品される奴隷はハイエルフの女性。年齢はハイエルフ中でも若く82歳。数多くの魔法スキルを持ち、戦闘でも期待以上の活躍を見せてくれるでしょう。また、類稀な絶世の美女とあってはまさに今回のオークションの取りを飾るにふさわしい奴隷でございます」
司会の男が会場を煽ると、会場全体に響き渡るような歓声が上がる。これはマジでかなりの高額になるのを覚悟する必要がありそうだな。
「では、最低入札価格をお伝えします……」
会場が一瞬で静まりかえる。
「最低入札価格は……。150万コルドでございます」
再び盛大に盛り上がる会場。というかスタートで150万コルドってどういう事だよ? いきなり高過ぎないか?
「おそらく、今回はかなり高額になる事が予想されている事から、最低入札価格が高額に設定されたのだと思います」
ウイが冷静に最低入札価格について分析している。
まあ、元々150万コルドは最低ラインと思っていたからいいんだけど。
「それでは、本日の最終オークションを開催致します」
司会の男がスタートの合図をすると同時に、あちらこちらからに入札の声が上がる。俺はしばらく落ち着くまで様子を見る事にしたのだが、これが中々すごい。ガンガン金額が跳ね上がっていき、ようやく落ち着いてきた時には、金額が。
「350万!!」
である。既に会場はお祭り騒ぎ。そこら中から入札者を煽る声が上がっている。
さてと、既に予算もクソも無い状態になっているが、俺もそろそろ参戦するか。という事で。
「400万!」
今まで10万刻みで上がっていた金額を一気に50万跳ね上げる。周りからもどよめきが起こる。すると今まで入札の為上がっていた札が一気に減る。残りは俺以外に後4人。
「410万!!」
11番の札を上げた男が振り絞るような声で叫ぶ。
「450万!」
更に俺が金額を一気に上げると札がまた下がり残るは俺以外に後2人。
「よ、460万!!」
44番の札を上げた男の声は悲壮な叫び声になっている。そりゃそうだ。だってこれだけの金額があれば王都でも庭付きの一戸建てが購入出来る。
次が最後くらいになりそうかな?
「500万!」
「おおっと、ついに出ました。500万コルド!! 過去このオークション会場で出た奴隷の最高入札額に並ぶ金額です!」
500万コルドが今までの最高額なんだ。かなりの高額になっているらしい。
…………。札を上げた2人の男から声が上がらない。2人とも俯き唸っている。
「500万! 500万! 他はございませんか?」
司会の男の声が響くがそれに応える者が出てこない。例の2人も悔しそうにしているばかりで入札しようとはしない。
「……無いようですので、こちらのハイエルフの奴隷は500万コルドにて34番様の落札でございます」
過去最高額と同額の落札額が出た事により、会場内は一気に歓声が上がる。その歓声に手を上げて応えながら、俺は心の中で無事落札出来た安堵感と、あまりの高額にちょっとやり過ぎた感で複雑な気持ちになっていた。
ただ、今回のオークションは目的の2人を無事落札出来、大変満足のいく結果に終わる事が出来た。
では次はいよいよ2人を引き取りの向かうか。
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