第50話 ニーナ
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「レオン様。起きて下さい」
「もう少し……」
「明日はオークションの日だから7時に起こしてくれって言ったのレオン様ですよ。だから昨日、早く寝ましょうって言ったのに、明日は迷宮に入らないから大丈夫とか言って夜更かしするからいけないんですよ」
あっ、確かにそんな事言った記憶が……。仕方がない、起きるか。ベッドの上で体を起こし一つ伸びをする。
「ん~! ウイも一緒に夜更かししていたのによく平気だね」
「そ、それはティアナもいたからレオン様ほどには……。って、いいから早く起きて下さい!! ほら、ティアも起きなさい!」
横を見るとティアナもまだ夢の中にいるようだ。ウイの雷が落ちないうちに、ティアナを起こすと、3人で着替えて食堂に移動した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ワルターさんと試合をしてから半月が過ぎた。この半月の間はほぼ迷宮に入り浸り。迷宮の攻略にも成功したりもしたのだが氾濫でみんなのレベルが上がり過ぎて、なんの盛り上がりもなく守護獣を撃破してしまいちょっぴり不完全燃焼だったりもする。ただ、ワルターさんとの試合後、何度かワルター邸に遊びにいきその度試合をすることでその不完全燃焼感も発散していたが。ちなみに試合は全敗でした。
でだ。今日が以前奴隷商のルパートさんから聞いたオークションへの日だ。もちろん参加予定だ。目的はハイエルフの購入。今の俺達のパーティーは基本、俺を除き前衛タイプばかりだ。そこで後衛能力の高い仲間がどうしても欲しい。この戦いは負けられない戦いなのだ。とは言っても予算はいっぱいあるし問題ないだろうけど。
朝食を済ませた俺達は一度ギルドに寄った後、その足でオークション会場に向かった。
オークション会場は、王都有数の歌劇場であるディ・ゾネ・グロース劇場だ。
ディ・ゾネ・グロース劇場は、王家御用達である12歌劇場の中でも一番新しい劇場で歌劇だけでなく多くのイベント事を行う事でも有名な所謂革新派の劇場だ。
ディ・ゾネ・グロース劇場に着いた俺達はその外観に美しさに思わず見とれてしまう。白大理石を贅沢に使ったその外観は白亜の城のようにその美しさを誇示している。入口にはアーチ状に白いバラの花の彫刻が飾られ、より美しさを演出している。何度かこの劇場の前を通った事が有るがその度に見とれてしまう。そんな美しさを持った建物だ。
「何度見てもすごいよな」
「そうですね。流石は王家御用達の歌劇場ですね」
「今からここに入ると思うと緊張しちゃうね」
3人でそんな会話をしていると、
「レオンハルト様。お久しぶりです」
と、突然声を掛けられた。声の主の方を見ると。
「ルパートさん」
そこにいたのはレベロ商会の番頭であるルパートさんだった。
「ウェンディやティアナはお役に立っておりますか?」
「ええ、凄く助けられていますよ」
「それは何よりでございます。私どももレオンハルト様のご活躍を聞く度に素晴らしい方にウイ達をご紹介出来たと喜んでおりました」
ご活躍って、氾濫の時の話かな。まあ、その後も色々目立った事をしたのは事実だけど、商人のルパートさんにまで噂が届いていると思うと、嬉しい反面ちょっと恥ずかしい。
それからしばらく4人で近況報告などをした後、一緒にオークション会場に入る事になった。
会場に入ると、受付に案内され参加登録するようにルパートさんに言われる。そこまで俺達に伝えるとルパートさんは仕事の為、俺達から離れていった。
「参加登録ですね。招待状をお持ちですか?」
受付の赤毛ショートの美女が俺達に話し掛けてきた。招待状の事をすっかり忘れていたが【神倉】に入れっぱなしになっていた事を思い出し、慌てて【神倉】から出して招待状を渡す。
「レベロ商会のご紹介ですね。ではこちらにお名前をお書きください」
言われるままに書類に名前を記入する。
「レオンハルト様ですね。ではこちらの札を持ち下さい」
受付嬢さんが34番と書かれた柄の付いた札を渡してきた。
「入札の際は司会のものにこの札の番号を見せ金額をお伝えください。落札が確定致しますと係りの者がお声をお掛けします。その際は係りの者の指示にしたがっていただきますようお願い致します」
「分かりました」
「では、オークションは2時間後より開始します。それまで本日出品されるアイテムや奴隷が展示会場にてご覧いただけますので一度ご確認いただくと良いでしょう。あと、こちらが本日出品のリストでございます。是非参考にしていただければと思います」
早速、展示会場に移動を開始。
展示会場には多くの人が目的の商品を見て回っている。1人1人身なりが良く王都中の貴族や豪商が集まっているんじゃないかと思ってしまう。
「2人とも俺から離れないように気を付けて」
「はいです。レオン様」
「は~い」
そういうとウイは俺の右手、ティアナは俺の左手にそれぞれ腕を組むように掴まってきた。2人とも、こうしていてもいいですか? と言わんばかりの上目づかいでこちらを見てくる。
ちくしょう。なんて可愛いんだ! とくにウイの耳が恥ずかしそうに垂れているのがたまらない。凄く触りたい。しかし今は両腕にウイとティアナがくっ付いているので触るのは諦めよう。しかし後で必ず触らせてもらうとしよう。
そんな事をしていると、周りの男どもの視線が俺達に集まっている事に気が付く。いくら睨んでもこの娘達は誰にもやらん。他を当たってくれ。とは口には出さず、皆さんに一つ会釈をして俺達はその場を離れた。あまり目立つのは良くないしね。もう手遅れのような気もするが。
「入るのは難しそうですね」
「そうだな。他を先に見てみようか」
「賛成。ボクもあそこの行くのは遠慮したい」
俺達は今、ハイエルフが展示してある部屋の前にいる。今回の目玉商品であるハイエルフの展示部屋には多くの人でごった返していた。流石にこの中に入っていくのは遠慮したい。他も見てみたいし取りあえずここは後回しにする事にした。とは言っても直に見られなかった時の為に一応部屋の中心に【マーカー】をセットしていつでも見られるようにしておく事は忘れない。
それから俺達はリストを片手に他の出品物を見て回った。先ずはアイテム品からだが、迷宮産の強力そうな武器や防具が多いようだ。ただ中には変わった機能の魔道具などもあり中々面白い。ただ、正直あまり欲しいと思う物はなかった。いや、今度創ってみようかな、と思う物はあったのだが俺には【匠創魔法】があるから態々お金を出してまで買う気がしないといった方が正確かも。
そんな中、再び奴隷が多く展示されているエリアに移動すると、ある部屋の前にルパートさんを発見した。
「ルパートさん。ここはレベロ商会の展示部屋ですか?」
「おお、これはレオンハルト様。そうです。ここは当店一押しの奴隷が展示してあります。よろしければ一度見ていてくれませんか?」
レベロ商会の一押しか。ウイやティアナがいたような奴隷商の一押しだから、ちょっと興味が有るな。
「じゃあ、見させてもらいます」
「どうぞ、どうぞ。では中にお入り下さい」
ルパートさんに案内されるままに部屋の中に入ると、そこには一人の少女が座っていた。
美しく輝く黄金色の長い髪。深く澄み切った蒼氷色の瞳。白磁のような美しい肌。歳は俺達と同じくらいだろうか。ウイやティアナに勝るとも劣らない美少女だ。しかし、本当の意味で目を引くのはその容姿ではなく。背中から生えた一対の純白の翼だ。
「天人族ですか」
「左様でございます。この者の名はニーナ。歳は17、見ての通り天人族でございます」
天人族か。確か【神聖魔法】が得意だったよな。
『その通りです。天人族にはMPの代わりに聖気というものを体内に秘めています。その聖気こそが【神聖魔法】には必要不可欠なものとなる為、天人族と【神聖魔法】はとても相性が良いのです』
なるほど、そういえばいつだったかそんな話前にも聞いたな。
【ロラ】から情報を得ていると、ルパートさんは説明の続きを話し始めた。
「所有スキルは、【神聖魔法】【結界魔法】【杖術】【風魔法】【水魔法】【魔力操作】【聖気回復量上昇】そして固有スキルとして【神の使徒】がございます」
かなり多才だな。ルパートさんが当店の一押しというのがよく分かる。これなら素質ランクも期待できるかも。
では早速、彼女を鑑定してみるか。
【名前】 ニーナ 【年齢】 17歳
【種族】 天人族
【職種】 奴隷(所有:レべロ商会)
【レベル】12(B-)
おお、凄い。この娘、ティアナ並みの素質ランクだ。
では次はスキルだ。
【固有スキル】
:神の使徒
【上位スキル】
:神聖魔法 レベル 2
結界魔法 レベル 1
【通常スキル】
:杖術 レベル 2
風魔法 レベル 2
水魔法 レベル 1
魔力操作 レベル 1
スキルレベルは低いが魔法に特化したスキル構成だな。特に【神聖魔法】や【風魔法】【水魔法】と回復魔法を得意としているみたいだ。それに天人族固有スキルの【神の使徒】だ。このスキルは【神聖魔法】を使用する際に消費する聖気を3割削減してくれるスキルだ。これだけのスキルが揃っていると回復職としてうちのパーティーに入れたい人材に思えてくる。
「かなり優秀ですね」
「ええ、レオンハルト様のパーティーは回復職の方がおられませんよね。これから冒険者として上を目指すなら回復スキルを持っている者が必ず必要になって参ります。このニーナなら必ずレオンハルト様のお役に立てるかと、是非この者の購入も考えていただければと思います」
俺の反応を見て早速彼女の事を勧めてくる。まあ、確かにこれからの事を思うと必要だとは思う。
「そうですね。値段にも寄りますが、考えてみます」
「是非よろしくお願いいたします」
そんな会話をしながら彼女を見ると、こちらを見てニコっと微笑み「よろしくお願いします」とだけ言って頭を下げてきた。
やばい。可愛いな。ウイやティアナとはまた違った清楚系美少女だ。
うん、お金にも余裕はあるしこれは買うしかないかな。
そんな事を思いながらルパートさんに別れを告げて俺達は部屋を出たのであった。
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