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第48話 ワルター邸にて

 ブックマーク&ポイントありがとう御座います。

「本日はお招きにいただきありがとうございます。新人冒険者のレオンハルトと申します。よろしくお願いします」


 貴族でもあり、王都最強の冒険者に対して失礼が無いよう、自分なりに精一杯の丁寧に挨拶を試みた。ウイやティアナも緊張な面持ちで挨拶している。ティアナなんて普段「ボク」とか言っているのに今日は「私」と言ってちゃんと挨拶をしていた。まあ、普段は俺がいいって言っているからなんだけどね。


「ワルターだ。俺も君たちと同じ冒険者なんだから、そんなに畏まらなくてもいいぞ。それとレオンハルト君だったか? 君の噂は色々聞いている。是非、話をしてみたいと思っていたんだ。そんな緊張しないで普通に話してほしい。では、向こうで食事の準備をしてあるから移動をしよう」


 それから俺達はワルターさんの案内でダイニングルームに移動を開始した。



 ダイニングルームは想像よりも広く、俺達が泊まっている部屋の4倍くらいはありそうだ。天井も高く、豪華なシャンデリアが薄暗い部屋を煌びやかに演出している。直射日光を避けるように北向きに造られた窓からは、ウインザー王国の王城が見え、まるで一枚絵のように俺達の目を楽しませてくれていた。


 流石冒険者とはいえ、貴族様の屋敷のダイニングルームだ。豪華過ぎて余計緊張してしまう。


 ダイニングテーブルの上には今まで見た事が無いような美しい料理が並んでいる。俺達が普段食べるような粗野な料理とは食材からして違う気がする。


 ワルターさんに席を勧められ、緊張の面持ちで席に座ると、ダイニングルームの扉が開き3人の女性が入って来た。

 その内の2人はいかにもメイドさんといった出立だ。歳は20歳前後くらいだろうか? 中々の美人さんだ。そしてもう1人の女性は、明らかに他の2人とは違う出立で、シンプルだが趣味の良い美しいドレスを纏った30歳前後の絶世の美女だ。

「いて!」

 黒い艶やかな黒髪をなびかせワルターさん隣に向かう美女に見とれていると、隣に座るウイに軽くけられてしまった。

 くっ! ヤキモチとは愛い奴め。そんな事考えているとワルターさんが黒髪の美女の紹介を始めた。

「彼女は俺の妻で、名をソフィアという。彼女も冒険者で俺のパーティーメンバーだ。ちなみにランクはオリハルコン冒険者だ。怒らせると怖いから、取り扱いに注意してくれ」

 そう言いならワルター豪快に笑う。いや、笑うところかもしれないけど、ソフィアがワルターさんの事をすごい目で睨んでいるから笑えないです。

「ワルター。後で話しが有ります」

 氷の微笑をたたえ、ワルターさんにそう言ったソフィアさんを見みて、ワルターさんの表情が固まりこめかみから汗がタラリと流れる。

 なんかワルターさんって、もっと迫力があって話しにくい人かと思ったけど、気さくというか憎めない感じの人かも。

 

「ごほんっ! えっと、まあ、食事でもしながら話そう。マナーとか気にせず好きに食べてくれ」

 そういうとワルターさんは率先して目の前の料理を豪快に食べ始める。それを見て、エリアスさんとカルラさんも同じように食べ始めた。

 正直マナーとか分からないからそう言ってもらえると助かる。俺達も早速目の前の料理に手を伸ばした。


 

「で、レオンハルト君。君まだ若く見えるが、もうオリハルコンランクまでなったんだよな? 人族に見えるが実はハーフエルフか何かか?」


 ハーフエルフは言葉の通り人族とエルフのハーフだ。エルフは人族の4倍の寿命があり、ハーフエルフはその半分の人族の2倍の寿命が有ると言われている。見た目も人族に近く耳がやや尖って見えるくらいしか見分けがつかない。

 つまり俺の見た目は10代半ばに見えるがハーフエルフなら20代半ばの可能性もある。それならオリハルコンランクという話もなくはないから聞いてきたんだろう。


「いえ。俺は人族です。歳も見た目通りまだ15歳です」

「ほお、まだ15って事は登録して1年も経たないうちにオリハルコンまでランクアップしたのか」

 俺の言葉に一瞬驚いた顔をしたワルターさんだったが、すぐに俺の事を興味深そうに見ながらそう言ってきた。

「色々運が良かっただけです」

「別に謙遜なんぞいらんぞ。オリハルコンランクまで上がるのに運だけで上がれる訳がないだろう。特にミスリル以上になるには、運だけでは倒せん魔物の討伐実績が必要だからな」

 そうだったんだ。俺でいったらゴブリンロードかトロール亜種がそれに当たるのかな?

「それに、氾濫の時の活躍も聞いているしな。確か超広範囲の爆炎系魔法で数千の魔物を一瞬で消滅させたとか。後はサイクロプス戦で最初の大ダメージを与えたのも君だったよな」

 そういえば氾濫の時はかなり目立っていたかな。

「あれはまぐれに近いです。自分でもちょっと出来過ぎでした。それにサイクロプスの時はエリアスさんと一緒に使った魔法ですよ」

「何をいう。戦闘にまぐれは無い。それにエリアスさんから話を聞いたが、あれは殆ど君の力だと聞いたぞ。だからあれが君の実力なのは確かなんだろう。そう言えば君の装備を見ると軽剣士のような装備だが、魔導士ではないのか? 確か氾濫の時はエリアスさんやカルラと同じ魔法部隊にいたと聞いていたし、実際魔法での活躍をよく耳にしているが」

 言われてみれば氾濫ではほぼ魔法しか使って無かったな。

「えっと。俺の本来の戦いとしては剣士に近いと思います。いや、剣士と言うより魔法と組み合わせて戦う魔法剣士といった感じですかね」

「ほお、剣も使えるのか。中々面白い奴だな」

 俺を見ながら何回も頷くワルターさん、するとさっきまで殆ど言葉を発していなかったソフィアさんが、ワルターさんに話かけた。


「ねぇ。この子じゃない? 聞いた名前と一緒だし、特徴も似てる。それに年齢も近いわよ」

「確かにそうだな」

 いったい何の話してしているんだろ?

「レオン様、ソフィア様たちは何の話しをしているのでしょうか?」

 ウイも俺と同じ疑問を持ったらしい。

「何だろな。なんか前から俺の事を知っているみたいな感じの話だけど」

 俺達が小声で話しているとワルターさんから質問が飛んでくる。

「レオンハルト君。出身はどこだ?」

 どうしてそんな事聞くんだろう? しかし出身地か。ラングスターと答えるべきかサリエル王国のリヨン村と答えるべきか。……無難に行くとリヨン村かな。

「サリエル王国にあるリヨン村という小さな村ですが」

 それを聞いてワルターさんはソフィアさんと目を合わせ一つ頷く。

「君は今サリエル王国のリヨン村と言ったが、もしかして生まれはラングスター王国じゃないのか?」

 やっぱりこの人達は俺の事を知っている。

 ふと周りを見るとみんなの視線が俺に集中している事に気が付いた。不思議に思い少し考えると。

あっ! なるほど。ラングスター王国って言葉にみんな反応しているんだな。


 ラングスター王国は今から5年前、巨竜の戦場となり滅びた国だ。たった5年前の話しなだけに、大陸中の人々に強烈な印象を残した事件だ。その国の出身と言うだけでも興味を引くのだろう。

「もしかして生き残りか?」

 エリアスさんが誰に聞くともなく言葉を発する。その言葉に一度みんなの視線がエリアスさんに動くが、再びその答えを聞こうと俺に視線が集まった。

まあ、隠してる訳じゃないからいいか。

「はい、そうです。俺はあの日の生き残りです」

 俺が素直に答えると、その場は異様に静まりかえる。エリアスさんは言ってはみたものの、触れてはいけないものに触れてしまったというような表情をしている。

 俺は特に気にしてないんだけどな。そんな事を思いながら頭を掻いていると。

「レオン様、大丈夫ですか?」

「ご主人様……」

 とウイとティアナが心配そうに声を掛けてきた。

「ああ、俺は特に気にしてないから大丈夫。みなさんも特に気を使わなくてもいいですよ。実際俺は孤児だったし、大切な人がいた訳でも、国に愛着があったわけでもないですからね」

 そう言うと少しだけだが場の空気が和らいだのを感じた。しかし、なんでワルターさんは俺がラングスターの出身だと知っていたんだろ? あっ! そこで一人の男の名前と一つのクランの名前が浮かんできた。

「ワルターさんはなんで俺がラングスターの出身だと思ったんですか? あ、いや違うな。誰から聞いたんですか?」

 俺がそう聞くと、ワルターさんは一つニヤリと笑い。

「レオンハルト君、いや、レオンと呼ばしてもらっていいかな? 君はマティアスという男の名を知っているかい?」

 やっぱりその名前が出てきたか。

「はい、もちろんです。あの日まだ幼かった俺を助けてくれたのが、マティアス達のクラン【シューティングスター】の人達ですからね。それに俺をリヨン村まで連れて行って、生活の場を与えてくれたのもマティアス達でした」

 俺の答えに満足そうに頷くワルターさん。

「やっぱり君だったんだな。実は俺とマティアスは同時期の同じ街で冒険になってな。お互い意識しあって己を高めあったライバルであり親友でもあるだが、4年くらい前にマティアスから、ラングスターで面白い少年を見つけた。今はリヨン村に預けてあるが、いずれ冒険者になるっと言ってたからノヴァリスに行くように伝えてある。リヨン村からノヴァリスに行くならその内王都にも寄るだろ。もし見かけたら気にかけてやって欲しい。と言われててね。君の事探してたんだよ」

 マティアスがそんな事を頼んでいてくれてたのか。

「しかし、マティアスが、あれはいずれ大物になると褒めていたからどんな奴が来るかと楽しみにしていたが。まさか、15でオリハルコンランクになるほどとは、予想のはるか上を行く奴だな」

 マティアスに大物になると評して貰えた事に嬉しさがこみあげてくる。


「そうだ。君は魔法剣士だと言ったな。一度君の剣士としての力を見せてくれないか?」

 いきなりの提案だな。

「それは、ワルターさんと試合をするという事でしょうか?」

「それも面白そうだが、先ずはソフィアのゴーレムが相手だな。どうだ? やるか?」

 ゴーレムか。今まで戦った事がないな。イメージだと土や岩の人型の魔物だけど、まあ、特に問題無いだろう。

「はい。是非やらせて下さい」

「私のゴーレムは並みのミスリルランクの冒険者くらいの実力があるから覚悟しなさい」

 この人そんなに強いゴーレムを創れるんだ。凄いな、ちょいとどんなスキルがあるかスキル構成を見させてもらおう。


 …………?

 あれ? ゴーレムに関連しているぽいスキルがない? 一応それっぽいのだと【土魔法】くらいだけど、それだとただの動く土人形になりそうだけどな。それ以外は特にそれっぽいのは無いな。一度実際に使うところを見てから考えよう。



 という事でワルター邸の庭に移動。やっぱり踏み固められた土の庭は訓練場になっていたんだな。今度自分が家を買う時の参考にしよ。


「さあ、準備はいい? 今からゴーレムを出すわよ」

 そう言うとソフィアさんが【土魔法】と【死霊魔法】を同時に展開し始めた。

 なるほど、面白い。【土魔法】と【死霊魔法】の混合魔法でゴーレムを創るのか。今度、試しにやってみよ。

 そんな事を考えているうちに、4体のフル装備の騎士が現れた。

「あっ、門にいた」

「正解よ。屋敷の門で警備をしている騎士は全部私のゴーレムよ。どう? 強そうでしょ? でも恰好だけでなく実力もちゃんと見た目通りだから安心してね」

 確かにこの圧力、ミスリルランクの冒険者くらいの実力はありそうだ。

「お手柔らかにお願いします」


「ではいいか? 始めるぞ」

ワルターさんの声に合わせて剣を抜く。今回は魔法無しだ。ミスリルランク並みの実力のゴーレム4体。今の俺の剣士としての実力を測るには丁度いい相手だ。

「始め!!」


 ワルターさんの合図と共に4体のゴーレムが一斉の俺に突撃してくる。相手は4体。ゴーレムの初撃をまともに剣で受けていては、次の攻撃が受けきれなくなる。ならば……。

 俺もゴーレムに向けて一気に突撃する。そして先頭を走るゴーレムの胴体を最初の一撃で断ち切る。

「なっ! 速い!!」

 ソフィアさんの驚きの声が俺の耳に届く。その声を背に、更に突っ込んで来たゴーレムの攻撃を紙一重で躱し、すれ違い様に首を刎ねる。その時3体目のゴーレムが隙の出来た俺目掛けて剣を振り下ろしてきた。剣で受ける事は不可能。

 攻撃が当たると思った瞬間。ドゴッ!! と鈍い音がして剣を振り下ろしたはずのゴーレムの方が吹き飛ばされた。

「すごい! あの体勢から蹴りを出せるのか!」

 と誰かの声が庭に響く。


 俺が繰り出した蹴り攻撃を受けゴーレムは15mほど吹き飛ばされたが、その後何事も無かったようにむくりと再び動き出す。

 その光景を視界に捉えつつもう一体のゴーレムの攻撃を軽く剣で捌き、返す刀で斬り倒す。残りは先ほど蹴り飛ばした一体。

 ゆっくりとゴーレムが近づいてくる。そしてお互い間合いに入った瞬間、同時に剣を振りかぶる。そして…………。



「つ、強い! あのゴーレムを4体同時に相手にして圧勝とは。魔法だけで無く剣でもこれ程強いとは思わなかったぞ」

 エリアスさんの驚きの声が俺の耳に届く。ウイやティアナは驚いて声も出ないのか、これでもかと目を丸くしている。まあ、俺自身も今回の出来には驚いている。


「面白い! 実に面白いぞ!!」

 そう言ってワルターさんは豪快に笑い出す。

「ソフィアのゴーレムナイトをこうまで一方的に倒す奴は久しく見てないな。小僧! お前、既にアダマンタイトランクに匹敵する力を持っているぞ」

 何だか、ワルターさんの雰囲気が急に変わった。まるでドラゴンが獲物を見つけたような圧力を発している。

 その圧力にその場にいる者は誰も言葉を発する事が出来なくなる。

 

 俺自身もその圧力に身動き一つ出来ない。


「よし、決めた。喜べ小僧! 今度は俺が相手をしてやる!」


 そう言うと口元に笑みをたたえつつ、猛禽類のような鋭い目をして俺の前に立った。


 そしてワルターさんゆっくりと剣を抜いた。

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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