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第46話 氾濫収束へ

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 サイクロプスを倒しそして残敵を掃討した、俺達は意気揚々ともう一つの砦に移動を開始した。とは言ってもまだ何が起こるか分からないので砦にも相当数の戦力は残してある。現在、もう一つの砦に援軍に向かっているのは、約千人の冒険者だ。

 この中にはアダマンタイト冒険者のワルターさんを始め、オリハルコン冒険者10名も加わっている。戦力としては充分だろう。


 向こうの戦況は分からないが、もう一人の化け物、ギルドマスターのハリー・クラムさんもいる事だし、まずやられている事は無いだろう。そこに俺達が援軍に駆けつければ、この氾濫騒動も一気に収束に向かうはずだ。


 俺も勝利の余韻に浸りながら歩いていると、エリアスさんとカルラさんが近づいてくるなり話しかけてきた。

「よっ! レオンハルト」

「こんにちはレオンハルト君」

 気軽に声を掛けてきた2人に。

「こんにちは、エリアスさん、カルラさん。あっ、そうだ2人とも、俺の名前レオンハルトなんて呼ぶの長いからこれからレオンって呼んで下さいよ」

 などと返してしばらく雑談をしていると。エリアスさんが、

「レオンに一つ聞きたいんだが、途中で使ったあの、異常な威力の広範囲魔法、あれ、どうやったんだ? いや、言いたくないならいいんだが」

「あっ! それ私も気になるわね」

『スーパーノヴァ』の事だな。どうしよう。言ってもいいんだけど偶々出来た魔法なんだよな。まあ、この2人だしやり方くらいいいか。

「いや、あれは狙ってやった魔法じゃないんですけどね。最初に俺が使った魔法って覚えてます?」

「あぁ、あの広範囲に多重展開して使ってた爆炎系魔法だな」

「はい、そうです。あの魔法を20個同時展開して、さらに一つに纏めただけなんですよ。あっ! 後で16個追加したから36個か」

 …………。

 俺の発言に固まる2人。

「一つに纏めたって、お前簡単に言うけど、それとんでもない事しているぞ!!」

「そうよ!! それがどれだけ難しいか分かってないの!?」

 えっと、そんなに興奮する事なのかな?

「そんなにすごい事なんですか?」

「すごいなんてものじゃない! 魔法の結合自体かなりの高等技術だ。高位の魔導士でも精々結合できる魔法は5つ、それを36個だぞ!!」

「良くそれだけの数の魔法を結合させて制御出来たわね」

 恐らく【魔道術】と【ロラ】がスキルにあるからだろうな。後はステータスの高さかな。

「いやぁ、でもあれ以上は流石に制御出来ないですよ。結構ギリギリでしたから」

 俺の言葉に何故か溜息を吐く2人。

「お前なぁ……。まあいいや。これからはあんまり無茶な魔法は使うなよ。制御に失敗したらお前だけでなくこの可愛いお嬢ちゃん達も巻き込む事になるんだからな」

 そう言ってエリアスさんはウイとティアナを見る。

 ウイとティアナは俺達の会話を邪魔しないように静かに後ろを付いて来ていたのだが、突然自分達に視線が集まったので驚いている。

「あの、私はレオン様と一緒なら死んでも構いません。いえ、レオン様のいない世界など考えられません」

「ボクも、ご主人様と何処までも一緒に行きます。たとえあの世でも構わないよ」

 ウイはいつも通りの発言だが、いつの間にティアナもこんなに俺に忠心を持つようになったんだ?

「2人ともありがとう」

 そう言って2人の頭を撫でて上げる。2人ともすごく嬉しそうにしているので俺も満足だ。

 「何この娘たち。すごく可愛い! 2人ともレオン君が嫌になったら、お姉さんの所に来なさい。いつでも歓迎するから」

 人の仲間を勝手に勧誘しないでいただきたい。2人も困ってるじゃないか。

「俺は2人が嫌がるような事はしませんよ」

「もしもよ。もしも!」

 そんな感じでしばらく5人で和気あいあい話して歩いていく。



 ◇ ◇ ◇



 約2時間後、俺達はギルドマスター、ハリー・クラムが指揮する砦に到着した。


 えっと、まず状況から伝えよう。戦いは俺達が着いた時には既に終わっていた。冒険者側の勝利で。周りに広がる魔物の無数の死体、そして多数の巨大クレーター。各所で火の手が上がり、場所によっては地面が真っ赤に溶けている所まである。そして俺達が倒したのと同種のサイクロプスも頭が吹き飛んだ状態で死体の中に倒れている。


「なんだか、隕石群でも落ちて来たよう見えますね」

「おそらくその通りだろう」

「そうね。私もそう思うわ」

 …………。

「2人とも、それってどういう事ですか? 俺的には隕石は比喩のつもりで言ったんですが」

「言葉通りだ。おそらく、ハリーギルドマスターの仕業だとだろう」

「同感ね」

 ギルドマスターが……。何をどうすればこんな事になるんだ。いや、人の事言えないけど。

「じゃあ、これはギルドマスターの魔法ですか?」

「その通り。たぶんハリーギルドマスターが『シューティングスター』を使ったんだと思う。というか、それ以外考えられん」

『シューティングスター』か。隕石って事は火と土魔法の混合魔法だろうか? しかし、威力がすごい。ただ俺の『スーパーノヴァ』と一緒で広範囲過ぎて使い難そうだけどな。でも今度試してみよう。もしかしたら小さい範囲で出来るかもしれないし。



 それから俺達は早速砦の中に入った。

 しばらく、待つように言われ、俺達は近くの壁にもたれながら座り、雑談をしながら上からの命令が有るまで待つことにした。


 ふと砦方を見るとギルドマスターと俺達の指揮官グラハムさん、それにアダマンタイト冒険者のワルターさんが集まってなにやら話している。皆一様にその表情は明るい。それを見る限り状況が収束に向かっているのだろう。

 後はおそらく氾濫の直接原因を探る為迷宮にもう一度入るくらいか? それともワルターさん達が既に原因を掴んでいるかもしれない。例えば母体種とか。だとしたら、後は母体種の討伐で終わりそうだけど、俺達もその討伐に参加できないかな?


「おい、何を一人に考えている?」

 エリアスさんが俺に話しかけてきた。

「いやあ、今回の氾濫の原因って何だったんだろうなって」

「あぁ、たぶん、母体種の発生で間違いないだろ。あんなに人が出入りしている人魔迷宮に魔素が溜まり過ぎるって事はまずないだろしな」

 やっぱりそうだろうな。

「じゃあ、その母体種の討伐に僕達も参加出来ますかね?」

「なんだ。お前参加したいのか? まあ、まず無理だろう。普通母体種の討伐は現状で考えられる最高の戦力で臨む。ただし少数精鋭でな。そうなるとワルターを筆頭に、後5、6人のオリハルコン冒険者になるだろう。ワルターのとこのパーティーメンバーは全員オリハルコンだから。それでけで4人だ。そうするとあと2、3人って所だから、ミスリルランク以下のレオン達じゃ無理だな」

 ごもっとも。仕方ない今回は諦めるか。というか、もしかした、既にワルターさん達が倒してしまっているかも、しれないしな。


 などと思っていたら、どうやらその通りだったみたいだ。

 30分ほど続いた首脳会議は終わり、ギルドマスターより砦全体に向け報告がなされた。

 

「みなさん。先ず最初に、今回の氾濫ですが鎮圧に成功した事をここに宣言します。みなさんの力を借り、王都に被害を出さず鎮圧できた事をここに感謝します。ただまだ多くの魔物が周辺を徘徊していると思いますので、明日より10日間、特別討伐依頼として、王都周辺で倒した魔物の討伐報酬を通常の1.5倍出させていただきます。みなさん奮って魔物を狩って下さい」

 この宣言に、湧き立つ歓声。確かに1.5倍は美味しい。俺も狩に出るかな。

「ちなみにその間、人魔迷宮は立ち入り禁止としますので、みなさんは狩に集中して下さい。あっ! 後、今回の原因はやはり母体種の発生でした。女性型の巨人の魔物だったようですが、ワルター君のパーティーが討伐に成功しています。まあ、それが引き金になってどうやら氾濫が起きたようなんですが。こればかりは仕方ないでしょう。という事で、これで氾濫も無事乗り越えれることが出来ました。みなさんありがとうございます。そしてお疲れ様です。後、今後の行動は、ギルド職員がみなさんに指示をしますからそれまでその場で待機していて下さい。以上です」

 そう宣言してギルドマスターは奥に消えていった。

 

「どうやら、レオンの希望は早くも断たれたな」

「そうですね。さすがワルターさんってところでしょうか。一度母体種ってのがどんな奴だったか聞きたいですね」

「まあ、その内聞けるんじゃないか。お前ならワルターが気に入りそうだし」

 おお、それが本当なら嬉しいな。

「今度紹介して下さいよ」

「おっ、いいぞ。お前ならこちらからあいつに紹介してやりたいと思っていたくらいだからな」

「ちょっと、その話、私も混ぜてよね。ワルター君に有望新人紹介すると色々面白い情報教えてくれるのよね」

 カルラさんの発言からすると、ワルターさんに有望新人を紹介する事が紹介者にメリットがあるようだ。しかし、なんでワルターさんは有望新人なんか紹介して欲しいんだろ? まあ、会えば分かるか。


 そんな感じで俺達はギルド職員の指示が有るまでのんびりしゃべりながら時間をつぶすのであった。



 こうして、人魔迷宮氾濫騒動は幕を閉じた。今回は流石に魔力を多く使い過ぎて疲れた。しばらくのんびりして過ごしたいが、取りあえず特別討伐依頼があるうちはしっかり稼ぐかな。

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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 【僕の装備は最強だけど自由過ぎる(仮)】

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