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第44話 氾濫(5)

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 それは突然現れた。一瞬空間が歪んだように見えたその時、10mを超える1つ目の巨人が突如として空中に出現し、真下にいる魔物を踏みつぶし着地した。周りに土煙が舞、冒険者達の視界を奪う。

 巨人は着地と同時に持っているメイスを一振りし、近くの魔物諸共に視界を奪われた冒険者達を弾き飛ばす。

 その一撃に10人の冒険者が吹き飛ばされ戦闘不能に陥っている。仮にも最前線で戦っている冒険者だ。弱い訳が無い。少なくともゴールドランク、もしかしたらミスリルランクの冒険者も混ざているかもしれない。そんな上位の冒険者をメイス一振りで戦闘不能にしてしまうとは……。


 すぐに鑑定を行う。


【種名】サイクロプス  【種別】巨人族

【レベル】80(A)

【スキル】槌術     :レベル5

     闘神衣    :レベル4

     身体能力強化 :レベル5

     剛力     :レベル5

     鉄壁     :レベル5

     皮膚硬化   :レベル4  

【ユニーク】

     殲滅の魔眼


 こいつがギルドマスターが言っていたAランクの魔物か。

 レベル80の上、素質ランクがA。まさに化け物だ。こいつは俺達だけでどうこう出来る相手じゃない。オリハルコン冒険者達と連携して戦わないと、とてもじゃないが勝てない。

「先ずはあの巨人のそばまで移動しよう」

 ウイとティアナの声掛けをして、早速サイクロプスの下へ向かう。

 

 近くで見るとその巨大さに息を呑む。しかし、このまま眺めている訳にも行かないので、すぐさま一番近くにいたオリハルコン冒険者のクレメンスさんに声掛ける。

「クレメンスさん!」

「おっ! 君は確かレオンハルトだったか?」

 王都に来てからまだそんにたってないのに、この人俺の事をちゃんと知っているみたいだ。

「あれは、個々で攻撃してどうにかなる相手じゃないと思います。ミスリルランク以上の冒険者で連携しながら戦わないと、とても倒せる相手じゃないと思います」

 俺の提案にクレメンスさんは、

「ああ、オレも同意見だ。あれは流石に不味い。ただミスリルランクの連中もこいつに掛かりっきりのなってしまうと戦線が崩壊しかねない……。そうすると、オリハルコンランク6人全員と今自由に動けている君とでやるしかないぞ」

 戦力的に心もとないが仕方ないか。

「彼女達も一緒に戦ってもいいでしょうか? 決して足手まといにはなりませんので」

 ウイとティアナならは俺と連携が取れる。足手まといどころか充分戦力になるはずだ。

 クレメンスさんはウイとティアナを見ながらしばらく考え、ウイ達も「お願いします」と頭を下げる。

「先ほどから何度か彼女たちの戦いを見たが、確かに能力は高そうだ。……分かった。許可をしよう。ただし、死んでもしらんぞ」

「「「ありがとうございます!」」」

 許可は出してもらった。だが問題はここから、相手はあの化け物だ。どうやって戦うか。

 そこでまずクレメンスさんは指揮官であるグラハムさんにお願いして、やや戦線を引き下げてもらう。それによりサイクロプスとの距離が出来、俺達とオリハルコン冒険者達は一時的に最前線から引き、なんとか集まる事が出来た。



 メンバーはクレメンスさんを筆頭にケヴィンさん、ニックさんの近接戦闘組と、エリアスさんとカルラさんの魔法戦闘組、そして弓使いのオイゲンさん。この6人のオリハルコン冒険者に俺達3人を加えた9人が今回のサイクロプス討伐隊となる。

 では、まだ紹介していないオリハルコン冒険者の面々を簡単に説明しよう。


【名前】 エリアス  【年齢】 98歳

【種族】 ハイエルフ     

【職種】 冒険者(オリハルコンランク)

【レベル】65(B)


 エルフとの上位種にあたるハイエルフ。高い魔法特性を持ち、王都№1の魔法使いと言われている。年齢は98歳だが、見た目を人族に例えると20代半くらいにしか見えない。かなりの美男子で、緑の髪をかきあげる度に悲鳴が上がるほど貴族の奥様方から人気を集めている。



【名前】 カルラ   【年齢】 30歳

【種族】 人族     

【職種】 冒険者(オリハルコンランク)

【レベル】59(B)


 6人のオリハルコン冒険者の中で唯一の女性。黒髪黒眼で整った顔立ちをしているのだが、表情は暗く、全身黒ずくめの格好をしている為、印象はまさに魔女といった感じだ。



【名前】 オイゲン  【年齢】 42歳

【種族】 人族     

【職種】 冒険者(オリハルコンランク)

【レベル】60(B)



 クレメンスさんのパーティーメンバー。斥候索敵の職人。また弓の達人としても知られており、ウインザー王国最高の弓使いと言われている。見た目は赤毛に髭面の暑苦しいオッサン。


 

 と言った感じだ。みんなさん高レベルで素質ランクも、もちろん高い。こうやって見ると、ウイやティアナが特別素質ランクが高かったわけじゃない気がしてくる。実際はオリハルコンまでなれる冒険者なんて千人に1人いるかどうかと言われているのだから、やっぱりこれだけの素質ランクを持っている人は少ないんだろう。

 これだけのメンバーがそろっていたら何とかなりそうだ。


 その後どう戦うか役割分担を決め、各々が役割を果たす為に持ち場に移動していった。

 ちなみに役割分担はクレメンスさん、ケヴィンさん、ニックさんが盾役として前線で相手の注意を引く。俺、エリアスさん、カルラさんが魔法攻撃部隊として攻撃の中心となる。ウイ、ティアナ、オイゲンさんは遊撃部隊として相手の隙を伺いつつ魔法攻撃部隊と連携して攻撃を仕掛ける。シンプルであるが一番効果的な戦術だ。


 俺は、エリアスさんとカルラさんと一緒にサイクロプスから約25m離れた場所へ移動すると早速魔法の準備を始める。それぞれが各々の得意な魔法を展開し始めた頃、盾役組が戦闘を開始した。流石は盾役組の3人、各々がスピードを活かし、サイクロプスを翻弄している。

 サイクロプスは見た目通り力と耐久力の特化した魔物のようで、3人を全く捉える事が出来ていない。よし、次は俺達の番だ。3人視線を合わせお互い一つ頷くと、盾役3人が一瞬サイクロプスから離れた瞬間を狙って同時に魔法を放った。

『フェザー。ストーム』『サンダー・ランス』『エクスプロージョン』

 最初に俺が放った15本の雷の槍が体を貫く。続いてエリアスさんが放った、風で創られた無数の羽根がサイクロプスの全身を襲う。最後にカルラさんが放った巨大な火球が頭部に直撃し、大爆発を起こす。

 そこへ追い打ちに、オイゲンさんが魔力で強化した矢を連続して頭部に撃ち込み、ウイ、ティアナ、そして盾役の3人が同時に体中を斬り刻む。更にみんなが離れた瞬間そこに再び魔法隊が止めとばかりに各々爆炎系の魔法撃ち込む。

 サイクロプス中心に巨大な火柱が上がり、その姿を炎が包み込んだ。


 全員やや距離を取り様子を伺う。

 これで終われば楽なんだが、Aランクの魔物だ。これで終わりって事も無いだろう。ただ無傷で済む攻撃でもなかったはず。


 やがて炎はおさまり、煙が引いていく。少しずつサイクロプスの状態が見えてくると、みんなの表情が明らかに曇る。

 煙が晴れたそこには殆どダメージを受けた様子のないサイクロプスが立っていたのだ。


 俺達が立て続けに攻撃した魔法や剣撃は、サイクロプスの皮膚を僅かに傷つけただけでとてもダメージを与えたように見えない。


「こ、これがAランクの魔物の実力……なの?」

 カルラさんのつぶやきが俺の耳に入ってくる。

 正直これでダメージを与えられないのなら、どうやって倒せばいいのか思い浮かばない。『スーパーノヴァ』なら効くかもしれないが、こんな所で『スーパーノヴァ』撃ってしまったら、ここにいる冒険者にもかなりの被害が出てしまう。もちろん俺達も無事ではいられないだろう。

 どうする? あのサイクロプスを倒せるとしたら、ここにいる9人だけだ。何とか方法を考えないと……。俺達がやるしかないんだ。


 他のメンバーも同じ考えなのか一様に決意の表情を見せている。

 先ずは盾役の3人が再びサイクロプスを挑発し始める。

 それを見てさっきと同じ展開ではダメージを与えるのが難しいと思い、エリアスさんに俺も前に出る事を伝える。

「何か方法が有るのか?」

 エリアスさんの問いももっともだ。俺がただ単に前線に加わるだけなら、連携が狂い前線で身を盾にサイクロプスを抑えている3人の足を引っ張る事になる。それならば後方から魔法で攻撃した方がいい。


「効くかどうか分かりませんが一つ案が有ります」

「どんな方法だ?」

「それは………………」


 簡単に要約した説明を聞いたエリアスさんは、

「中々面白そうだな。俺も付き合わせてもらうぞ」

 一緒になって聞いていたカルラさんは、

「これだから男は……、仕方ない。私が援護にまわるわよ」

 とあきれながら答えてくれた。

「ありがとうございます。結果はどうなるか分かりませんが精一杯やらせてもらいます」

「付き合わせてもらうぞ」

「2人とも、あのアホ面にぶち込んできな!」


 カルラさんの言葉を聞き俺とエリアスさんはサイクロプスに向けて走り出す。そしてそれと同時に2人の腕に濃密ま魔力がどんどん練り上げられて行く。それは魔法と言うより火属性魔力の塊。純粋な熱エネルギーの凝縮体のように見える。その魔力の塊は更に濃密に更に巨大に膨れ上がっていく。普通はこんな事は絶対しない。

 魔力にある一定のイメージを与え練り上げてこそ魔法だ。それを何のイメージを持たせずただ単に火属性の魔力だけをひたすら練り上げる。ハッキリ言って危険極まりない行為だ。イメージを与えられない魔力が恐ろしく制御が難しく、そして暴走しやすい。暴走した魔力は術者を巻き込み大爆発を起こす。俺達はそんな危険な事を走りながら行っていた。奇跡を起こす為に。



 これがダメならホントに手が無い。だが成功すれば例えサイクロプスでも無事ではいられないはずだ。

 他のメンバーには説明している時間がないが、彼らならきっと合わせてくれるはず。そう思いながら俺とエリアスさんはサイクロプスに向け更に加速した。

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 ブックマークや評価ポイントを頂けると、とても嬉しいです。


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