第43話 氾濫(4)
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3体のミノタウロスが登場した事で右側面の戦線が徐々に崩壊し始めている。
俺達3人は【転移魔法】を使い一気に右側面の戦線に移動した。
眼前に迫る3体のミノタウロス。鑑定の結果は先ほど見たミノタウロスとほぼ同じ。若干スキル構成が違うくらいだ。
現状を見る限り、3体のミノタウロスは連携する事無く、やや距離を置いて各々が好き好きに暴れているみたいだ。
ただ個々の能力が高い上、近くにザコの魔物がウロウロしているので、撃退出来ず後退を余儀なくされているようだ。
「順々に各個撃破していこう。先ずは右の牛頭からだ」
2人はそれぞれ返事をし俺に続いて走り出す。
俺は先制攻撃に『ファイヤー・ランス』を10個展開して同時に放つ。
10本の炎の槍は冒険者に襲い掛かろうとしていたミノタウロスに全弾直撃する。
それに続くように、ウイとティアナはミノタウロスに急速接近。顔を焼かれもがき苦しむミノタウロスの両足に一気に斬りかかる。
もがくミノタウロスはその攻撃を躱す事が出来ずまともに食らい、そのままその場で崩れ落ちた。
それをチャンスと見た多くの冒険者が、止めとばかりに一斉に襲い掛かる。しかし何処からともなく複数の火球が現れ、ミノタウロスの側にいる冒険者達に襲い掛かった。そして激しい爆発と共に冒険者達を無力化してしまった。
幸いウイとティアナは危険を察知して距離をとっていたらしく、直撃を免れたようだ。
しかし、今の攻撃は何処からだ?
ミノタウロスには魔法系のスキルは無かった。それなのに魔法攻撃が有った。そういえばミノタウロスの襲撃に気が付いたのも爆発だった。という事はつまりこれだけの攻撃魔法を使える魔物がそばにいるという事か。
【マップ】&【探知術】を使い周辺を調べる。
すると、いた! いました!
【種名】リッチ 【種別】アンデッド
【レベル】50(B-)
【スキル】純魔法 :レベル3
火魔法 :レベル4
闇魔法 :レベル4
死霊魔法 :レベル4
魔力操作 :レベル3
再生 :レベル2
リッチだ! 魔法特化のアンデッドタイプの魔物。正直厄介この上ない相手だ。
でもこんな昼間から出てきてよく平気だな。もしかしてリッチの周りにある、あの黒色のモヤモヤが関係しているのかな?
『はい、その通りです。【闇魔法】で結界を張り、日の光を防いでいます』
やっぱりそうなんだ。アンデッドのくせに考えて動いているんだな。
取り敢えず、広範囲攻撃が出来るリッチを早めに倒さないと被害が広がるばかりだな。
どうする? ミノタウロスに止めを刺さないのはもったいない。ならば効くかどうか分からないけど、
リッチに魔法で牽制しつつ、ミノタウロスを先に止めを刺そう。
では、先ずはこの魔法でどうだ。
「クロス・ライト!」
腕を十字にし、光の魔力を凝縮して撃ちだす魔法。『ライト・レーザー』の強化版として創った。スピードはやや落ちるけど威力はかなり強化されている自信作だ。
『クロス・ライト』を撃ち終わった俺は、そのまま傷を負い動きが鈍っているミノタウロスに向かう。
ウイとティアナも俺の動きの連動するように同時に動き始める。
動き出しに合わせて撃ちだした『クロス・ライト』は狙いたがわずリッチに直撃した。
激しい爆音と共の光の柱が出現する。
その光景を横目で見ながら、ミノタウロスに突撃して行く。
ミノタウロスは俺の突撃に気が付くと、邪魔だとばかりに側にいる冒険者達を殴り飛ばし、俺を睨みつける。誰が強敵か本能的に分かっているみたいだ。
さてと、このまま突撃しても倒せそうだが、ここはひとつ最近練習し始めた戦い方の実践練習に付き合ってもらおう。
俺はそのまま突撃する。ミノタウロスもそれを迎え撃つ為、大剣を構える。そして間合いの入ると同時にミノタウロスは俺に向け必殺の一撃を放ってきた。しかし、その場所には俺はおらず、その必殺の剣撃は俺に触れる事無く空を斬る。
次の瞬間、俺はミノタウロスのすぐ後ろに現れた。そして、
「サンダー・ランス!」
力強い言葉と共に雷の槍が現れ、ミノタウロスの体を貫いた。
ミノタウロスはそのまま感電し、動けない状態になる。
そこにウイとティアナが飛びかかりミノタウロス太い首を2人掛かりで刎ねた。
ミノタウロスの巨体がまるで巨木が切り倒されるようにゆっくりと後方に傾き、やがて土煙を上げ倒れた。
よし、まず1体。
【転移魔法】の中でも扱いが難しい戦闘中の短距離転移。今回初めて使ったが思いのほか上手く行った。ただ、今回は運よくイメージ通りの所に転移出来たが、正直もう一度同じ場所に転移しろと言われてもまず無理だろう。だけど、完璧じゃなくてもかなり使える戦い方なのは間違いない。これからも大いに使ってもっと練度を上げて行こう。
次はリッチか。そう思いリッチの方を確認すると、そこには全身焼けただれ既に事切れたリッチが倒れていた。
あれ? 既に死んでる。
『先ほどの『クロス・ライト』が直撃した事により、死亡しました』
……。あれ? 思ったより強力だったのか? それとも思ったリッチが弱かったのかな? 兎に角これで厄介なリッチがいなくなった事に変わりはない。後は2体のミノタウロスを倒せばここは大丈夫そうだ。
残っているミノタウロスを見ると、相変わらず冒険者達を圧倒的な力で次々蹴散らしている。
ここはもう一度短距離転移で不意打ちかますのがいいか。
ここからなら落ち着いて転移出来るから、全然違う所に出てしまう事は無いだろう。
「ウイ、ティアナ。今から短距離転移で右のミノタウロスの後方に出て不意打ちを掛ける。2人はそれに合わせて攻撃を掛けてくれ。もし不意打ちが失敗したら、無理に攻撃をしかけないように」
2人に指示を出すと、「はいです」「はい」の2人の返事を耳のしながら素早く短距離転移を実行した。
視界は一気に変わり。目の前に現れるミノタウロス。それも何故か正面。
ヤバイ。少し座標がずれてミノタウロスの真正面に転移してしまった。
ただミノタウロスも突然現れた俺に対し戸惑いを見せている。
まだ何とか間に合うか。すぐさま準備していた『サンダー・ランス』を撃ち込 む。それと同時に戸惑いから立ち直ったミノタウロスも俺に向け蹴りを放ってきた。
直撃はほぼ同時。
雷の槍が当たったと思った瞬間俺は強い衝撃を受け、魔物を巻き込みながら吹き飛ばされていく。
「レオン様!!」
「ご主人様!!」
俺を心配する2人の叫び声が良く聞こえる。
吹き飛ばされながら俺は体勢を整え、なんとか着地に成功する。それを見てウイとティアナは安心したのかすぐさまミノタウロスに攻撃を仕掛ける。
ミノタウロスもどうにか迎え討とうとするが、感電の為上手く体が動かせず、ウイとティアナの攻撃を次々にくらいやがてその場で崩れ落ちた。
よし、少しミスもあったが無事2体目も倒せた。
「大丈夫ですか?」
直撃を受けた事を心配して、ウイとティアナが近くに寄って来た。
「ああ、結界を張っていたから問題ない。心配かけたね。それより、2人ともずいぶん動きが良くなったね。ビックリだよ」
2人を褒めると「まだまだです」など答えながらも少し嬉しそうに見える。特にウイに至っては尻尾をブンブン振っているので嬉しいのがもろバレだ。
「さあ、後1体。集中していくよ」
「はいです」
「は~い」
で、残りの1体だが、巨大なハンマーを振り回し冒険者隊を殴り飛ばしている。
取り敢えず、この距離からミノタウロスの頭に向けて『サンダー・ランス』を放ってみる。案の定不意打ちでも至近距離でも無い為あっさり躱されてしまう。
しかしこの隙に、窮地に陥っていた冒険者達が一時的に撤退する。そこへ入れ替わるように、俺達がミノタウロスの正面に立つ。
最初に攻撃を仕掛けたのは俺。それに続いてウイとティアナが続く。ミノタウロスは俺の攻撃に対応するので手一杯なのか、ウイやティアナの攻撃には全く対応が出来ず次々に傷を増やしていく。
「このまま一気に押し切るよ」
俺が2人に言うと返事と共に更に攻撃を激しくしていく。
やがて、2人の攻撃に動きが鈍ったミノタウロスは、俺の攻撃で頭をかち割られ、その場で崩れ落ちた。
よし、完璧だ。これでここは大丈夫。
「2人とも前線に……」
全てのミノタウロスを倒した俺は2人の前線に戻ると伝えようとした時、それは突然に現れた。
俺の視線の先。冒険者軍の最前線に10mを超える巨体が突然姿を現したのだ。
「な、なんだあれ?」
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