第42話 氾濫(3)
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爆発の余韻から立ち直った冒険者達が一斉に俺に詰め寄ってくる。
「おい。今のはなんだ!?」
「どうやったんだ!?」
「アレはお前がやったのか!?」
など一気に質問攻めになってしまった。とはいえ、俺自身予想外過ぎる事だったので説明のしようがない。
どうしたものかと悩んでいると。
「おい、お前ら。まだかなりの数の魔物が残っているんだぞ。人の能力の詮索する時間が有ったら、このチャンスに打って出て、このまま一気にケリを付けるぞ」
グラハムさんが助け舟を出してくれた。
そして、グラハムさんの言葉で再び士気が高まり、追撃戦の狼煙を上げる事になった。
とは言ってもこの氾濫が終わった後が大変そうでちょっと憂鬱だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その後、砦を出た追撃隊は、半死半生の魔物に止めをさしながら魔物を追う。
砦の防衛戦で殆ど役にたたなかった近接戦特化のオリハルコン冒険者3人を先頭に追撃隊は進軍していく。
ちなみにこの先頭にいるオリハルコン冒険者の一人は、王都にいる冒険者の中で最もアダマンタイト冒険者に近い男と言われる男らしい。そしてその脇を固める2人もオリハルコン冒険者として王都でも指折りの実力を持った冒険者だ。
という事で気になったので鑑定。
【名前】 ケヴィン 【年齢】 28歳
【種族】 龍人
【職種】 冒険者
【レベル】67(B+)
この人が王都にいる冒険者の中でアダマンタイト冒険者に一番近い男と言われている人だ。実質王都の冒険者の中でNo.2の実力者らしい。
龍人だけあって近接戦闘特化の冒険者だ。
【名前】 ニック 【年齢】 29歳
【種族】 龍人
【職種】 冒険者
【レベル】60(B)
ケヴィンさんの同郷で、パーティーメンバーだ。龍人特有のゴリゴリの力押しタイプの戦士だが、後輩想いで、頼りになる兄貴と言った感じだ。
【名前】 クレメンス 【年齢】 42歳
【種族】 人族
【職種】 冒険者
【レベル】62(B)
冷静沈着。経験豊富な戦士。それほど目立った実績は無いが、どんな仕事もそつなくこなす職人肌の冒険者。ギルドやベテラン冒険者からの信頼が厚く、常に重要な仕事を任される男。
今回は鑑定した結果に合わせて。俺が得たそれぞれの冒険者の簡単な情報を入れてみた。
さすが全員オリハルコン冒険者だけあって、レベルも素質ランクも高い。Bランク以上の素質ランクなんて、ウイとティアナ意外だとあのギルドマスター以来、初めて見た。
オリハルコン以上の冒険者は、化物の集まりだとはよく言ったものだ。
折角なのでこの機会に実力者の戦いってのを、しっかり勉強させてもらおう。
それからしばらく、瀕死の魔物に止めを刺しながら移動していたが、やがてちらほら攻撃を仕掛けてくる魔物が現れる。
しかし、3人のオリハルコン冒険者を始め、最前線にいる冒険者は全員ゴールドランク以上の冒険者ばかり。レベル20前後の魔物など相手もならず、現れる先から次々と討伐されていく。
そしてその中でもやはり先頭を進むオリハルコン冒険者の3人だ。20体や30体の魔物が同時に襲ってきても、鎧袖一蝕、まさに一瞬で殲滅してしまう。はっきり言って相手が弱すぎてまったく参考にならない。せめてトロールクラスの魔物じゃないと瞬殺されて見ていても意味がない。
これだけ魔物がゴロゴロ出てきているんだからそろそろ高レベルの魔物が出てこないかな。
そんな事を思っていたら現れました。
4mを超える巨体の牛頭の巨人が。
見るからに強敵、漂う気配が他の魔物とは明らかに違う。すぐに鑑定を。
【種名】ミノタウロス 【種別】牛頭族
【レベル】55(B)
【スキル】剣術 :レベル5
闘神衣 :レベル4
身体能力強化 :レベル4
剛力 :レベル4
鉄壁 :レベル3
皮膚硬化 :レベル2
おお、ゴブリンロードクラスだ。以前戦ったゴブリンロードよりレベルは低いが、アレは異常成長種。おそらく本来のゴブリンロードより魔物の格としては若干上かな。
この魔物なら、オリハルコン冒険者の本来の戦い方が見れそうだ。
案の定、ミノタウロスを強敵と見た3人のオリハルコン冒険者は、示し合わせたようにミノタウロスに突っ込んでいく。
最初に攻撃に出たのはクレメンスさん。ミノタウロスの前で急加速&跳躍をし、一気に牛頭に斬りかかる。
ミノタウロスも素早く反応し、クレメンスさんの剣擊を、その図体に似合った大剣で受け止め弾き返す。しかしその隙を突いて、ケヴィンさんとニックさんがミノタウロスの両脇をすり抜けながら腹部を斬りつける。
腹部を斬られた事による痛みの為かそれとも怒りなのか。ミノタウロスは咆哮をあげ、攻撃を仕掛けた2人を睨みつける。
しかし、それがミノタウロスに決定的な隙をつくった。その隙を見逃すクレメンスさんではない。
自分がミノタウロスの視界から外れたと分かった瞬間、クレメンスさんは音もなくミノタウロスの牛頭に向け再び跳躍し一刀のもとその首を刎ねてしまった。
お見事! 能力的には俺とそんなに変らないはずなのに、阿吽の呼吸というやつだろうか。それとも一流同士が感じる何かなのか、すごい連携だ。
あの戦い方はすごく勉強になる。ウイやティアナはまだ実力的にあそこまでの事は出来ないかもしれないけど、今からお互いの連携力を高めて行けば、いずれ自分たちより強力な魔物と対峙した時でも有利に戦える。
2人にもあの3人の戦い方を見て勉強しもらうようにしよう。
それからも3人の戦いを参考にしながら、俺たち3人も自分たちの連携を高めるよう練習をしながら突き進んでいた。
襲い来る魔物の数は時間が経つにつれ増えていき、魔物のレベルも高くなっていく。
その中でもより強力な魔物を優先的にオリハルコン冒険者の3人が倒し、その次に厄介に魔物を俺たち3人が仕留めるという形がいつの間にか出来上がっていた。
「魔物たちも、どうやら混乱から立ち直ったみたいですね」
戦いながらウイが話し掛けてくる。
確かに時間を追うごとに、さっきまでバラバラに逃げていた魔物達が、徒党を組んで俺達冒険者に襲い掛かってきている。
ただ、冒険者の方も組織立って行動し、しっかりと対応できている。
「そうみたいだね。でもこの程度なら特に問題ないよ。2人とも、このまま落ち着いて対応していこう」
そう伝えるとウイとティアナは元気に返事を返してくる。
まだまだ、元気のようだ。いや、今回の戦いで2人とも一気にレベルが上がっているようだから、実際に力が湧き上ってくるような感覚で元気なんだろう。
そんな会話をしていると、右の方で激しい爆発が起こり数名の冒険者が吹き飛ばされる。
「何んだ!?」
【マップ】で確認をすると、爆破が起こった周辺にミノタウロスが3体襲い掛かってきていた。
不味いな。あの辺りにはゴールドランク冒険者しかいなかったはず。オリハルコン冒険者の方を見るとこちらも複数体の高ランクの魔物と戦っておりとても援護に行けそうにない。
ここは俺達が行くしかないか。
「ウイ、ティアナ。右側面からミノタウロスが3体、襲撃を掛けて来た。今から援護に向かう。付いて来てくれ」
2人の伝えると
「はいです」「はい」とそれぞれ返してくる。
ミノタウロス3体と聞きティアナはやや緊張気味か?
「間に合わなくなるといけない。急ごう」
そう言って右側面の新たな戦場に向け俺達は急いだ。
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