第41話 氾濫(2)
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「い、今のは何だ……」
俺が放った魔法のあまりの威力に、周りに冒険者達は言葉を失う。
しかしその間も魔物たちが次々に押し寄せてくるため、冒険者達の驚いてばかりもいられず、グラハムさんの指示の下すぐに戦闘に戻る。
俺も周りを気にしている余裕は無く、再び『スーパーフレア』を20個同時展開し、魔物の密集地帯に撃ち込む。
再び轟音が響き巨大な火柱があがる。
一気に数十体の魔物がその爆発に巻き込まれ消滅していく。
ウオオオォォォォォオオオ!!
砦の中から一気に歓声が上がる。先ほど驚愕で言葉を失っていた者たちが、その威力に興奮し、叫び、士気を高める。
「レオン様! すごいです」
「ご主人様、カッコいい」
俺のすぐ脇で同じように魔法を撃っている、ウイとティアナが尊敬の眼差しを向けてくる。
ちなみに戦闘が始まる前に、2人の共有スキルを【七元魔法】【魔道術】【魔の神才】に換装し、魔法特化にしてある。
接近戦になった時に、元に戻す予定だが、この砦の中で戦う以上魔法特化で戦った方が何かと都合がいい。
実際、2人の魔法攻撃は、俺のスキルを共有してあるだけ有って、他の冒険者と比べてもかなり強力な攻撃が出来ている。
ただ俺達だけが目立っているかと言えば、そうでもない。
この砦には6人のオリハルコン冒険者がおり、その内2人が魔法特化の冒険者だ。
この2人がさすがと言っていい実力者で、すごい勢いで魔物を殲滅している。
事実、この2人の冒険者と俺達3人が現在攻撃の中心になっている。
しかし、どんなに倒しても、後か後から次々の魔物が押し寄せてくる。
見た感じ、殆どの魔物のレベルは15~30弱といったところだ。だがしかし、如何せん数が多すぎる。
実際みる4万5千という数はそれだけで、心胆寒からしめる。
だがこちらも2500名を数える冒険者がいる。
それに簡易とはいえ砦もある。
何体もの魔物が砦の防壁にとりつこうとしているが、防壁に近づいただけでも次々と弓で射殺されていく。
戦況はまだどちらに傾くか分からないが、充分戦えていると言える状況だ。
そんな中俺は余りあるMPを活かし、次々に広範囲魔法を連発し、その度に、数十という魔物が打倒され、消し炭に変えていく。
ウイとティアナも負けじと、魔法を撃ち込み戦線を支えていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
しばらく戦況は膠着状態が続いたが、1時間が過ぎた頃、戦況が少しずつ悪い方に動き出す。
いくら倒しても勢いが弱まらない魔物に対し、守備側の冒険者には、疲れが見え始めた。
今まで戦線を支えていた魔法隊のMPも尽きはじめ、魔法攻撃の勢いが開戦当初の半分にも満たさなくなている。
流石にきつくなってきたか。
魔物は王都に向かおうとせず、この砦も包囲するように動き始めている。
もう一つの砦はどうなんだろう? そんな疑問が頭をよぎるが、それよりもこちらの砦だ。
現状MPに余裕が有るのは、俺とウイ、それに2人のオリハルコン冒険者くらいだろうか。比較的MPが多いはずのティアナも、既にMPに余裕が有るとはとても言えない状況だ。
「くそっ! この囲まれた状況では打って出る訳にも行かん」
グラハムさんの悔しそうな声が俺にも聞こえてくる。
状況がかなり切迫し始めている。
どうしたもんか? 頭で何かないかと考えながらも、押し寄せてくる、魔物の群れに次々と『スーパーフレア』を撃ち込んで行く。
【ロラ】、魔物の残存戦力はどれくらい?
『現状、魔物は二手に分かれ、2つの砦を同時に攻撃しております。こちらの砦を攻め入っている魔物の数は残り約1万8千です』
あれ? いつの間にか二手に分かれていたんだ。これじゃあ、今まで何体倒したか分からないな。
『現在、こちらの砦で倒した魔物の数は、約4300です』
ちょっと微妙。もう少し倒していたと思うんだけど……。いや、1時間で4千以上ってかなりハイペースで倒しているな。そりゃ、みんなMP尽きるわな。
状況は何となく分かったが、実際どうしたものか。
今の俺の最大威力の攻撃方法が『スーパーフレア』20発同時展開だ。これでは、精々一回の攻撃で多くても50体弱を倒すのがやっと。普通ならこれで充分なのだが、今回は正直これでは心もとない。
何か新しい魔法を考えるか? いや、今から考えていても間に合わないか。
なら現状の魔法でどうにかするしかない……。
【ロラ】、『スーパーフレア』20個を一つの塊にする事は出来るか?
『現在のマスターの能力なら可能です』
その場合の威力は別々の撃った場合と比べて上がと思う?
『予測では1.5~2倍の威力になる可能性が有ります。ただし、MPの消費はおそらく4倍以上になると思われます』
なるほど。まあ、MP4倍と言っても俺の今のMP値から行ったら余裕だ。
いっちょ、起死回生の攻撃となるか、やってみるか。
早速20個の『スーパーフレア』を展開し、次にそれを一つに纏め始める。
なるほど。この作業の魔力操作に、MPがかなり吸い取られるのか。
そんな感想を思いながら、次々と『スーパーフレア』をまとめ上げていく。
約30秒後、すべての『スーパーフレア』が合わさり、通常の『スーパーフレア』の約2倍の火球が出現した。
すごい魔力を内包しているのが嫌でも分かる。これはすごい威力になりそうだ。
でもまだ、魔力操作に余裕が有る。特に、『スーパーフレア』を一つに纏めた為か、このままもう一度同じ事が出来そうな気がする。
やってみるか!?
先ほど作った『結合スーパーフレア』をそのまま維持しつつ、再び『スーパーフレア』を多重展開、流石に今回同時に展開出来たのは16個と少なめ。この16個の『スーパーフレア』を纏めると今度は、先ほど創った物より、一回り小さい『結合スーパーフレア』が完成した。
この2つ纏めた方が絶対強力だよね。
という事で、今度な2つの『結合スーパーフレア』を一つに纏めた。
しかしこれが中々難しい。これ以上大きくなると制御しきれず、暴走させてしまっていたかも……。危なかった。
そして完成したのが、更に1.5倍ほどに膨れ上がった『巨大結合スーパーフレア』だ。見るからに危険な香りがする魔力の内包量だ。
周りの冒険者達もあまりにすごい魔力を放つ火球に唖然としている。
『マスター。耐熱結界を砦全体に展開する事を強く推奨致します』
耐熱結界? 火炎系の魔法に特化した結界だな。若干物理ダメージも弱めるみたいだが、殆ど物理攻撃は抜けて来るという代物だ。
まあ、【ロラ】が言う事だし一応耐熱結界を展開しておこう。エイッ!
よし、これで準備完了。では参ります。
そして、早速出来た『巨大結合スーパーフレア』を魔物の一番密集している場所に向け撃ち込んだ。
濃厚な魔力を漂わせ『巨大結合スーパーフレア』は赤い帯を曳きながら魔物の群れに飛び込んだ。
そして次の瞬間……。
一瞬周りの色が無くなり、そしてそれに一瞬遅れて大地を揺るがす轟音と、まるで竜の咆哮のような突風が押し寄せてくる。
暴風と砂煙で目も開けている事が出来ず。他の冒険者達も、各々、周りの物につかまり、爆風が収まるまで必死に耐えている。
どれくらい経っただろうか? ようやく爆風が収まり目を開け、『巨大結合スーパーフレア』の着弾地点を見ると、そこには巨大なキノコのような形の雲が立ち上っていた。
なんだこれ? 自分でやった事ながら信じられない光景が広がっている。
先ほどまで次々の襲い掛かっていた魔物が、着弾地点を中心にかなりの数、消滅してしてしまっていた。
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
…………
……
一体の今ので、どれだけの魔物を倒したんだ?
『推定討伐数5500。更に、行動不能になった魔物の数は約7000です』
なっ!? 一気に約3分の2にものぼる魔物を戦闘不能に追い込んだのか。
【ロラ】さん、ちょっと威力が予想より強力過ぎませんか?
耐熱結界張ってなかったら、俺らもかなりのダメージを受けていたよね。
『私が、予想した威力計算は、『スーパーフレア』20個を結合した場合の威力であって、それを更に2つ合わさった場合の威力ではありません。それに被害を予想し、耐熱結界の展開を推奨致しました』
くっ! 確かにその通りだけど、やる前に教えてよ。下手したら、冒険者を巻き込んで、この砦事消滅していたかもしれないよ。
『マスターが照準とされていた地点と今回の魔法の威力予想、そして耐熱結界の耐久力を計算し、特に問題なしと判断致しました』
【ロラ】の中では予想の範囲内だったわけだ。
まあ、この砦には一切被害が出てない訳だし、かなりの魔物を瞬時に倒した事で、一気に戦況が有利になったのは確かだけど。これは流石にやりすぎ感が有る。
周りを見るとグラハムさんを始めすべてと言っていい、冒険者が大口を開けて固まっている。
ウイやティアナも他の冒険者と同様口を開けたまま固まっている。
今、魔物が攻めて来たら不味いのでは? と思うほどだ。
まあ、砦周辺の魔物も同じような状態……、もっと酷いかな。すごいパニックを起こして、我先にと砦から離れようとしている。
確か迷宮産の魔物って、恐怖とか感じないって聞いたけど、なんでだろう?
しかし、取り敢えず、これで戦況がかなり良くなったのは間違いない。
ここからは打って出て掃討戦をしながら、もう一つの砦に援軍の向かうのもいいだろう。
こうして氾濫魔物討伐戦初戦は『巨大結合スーパーフレア』改め、『スーパーノヴァ』により大勝利(?)をおさめたのであった。
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