第40話 氾濫
ブックマーク&ポイントありがとう御座います。
前回、主人公次回活躍します。と書きましたが、そこまで書けませんでした。
次回にはホントに活躍します。
ギルドでの集会から4日が過ぎた。
集会の翌日。迷宮付近に行き、迷宮の入口やその周辺の4箇所に【マーカー】を設置して、【ロラ】を介して監視を行っているが今のところ特に変化は起きていない。
ギルドにも毎日足を運び、新しい情報はないか確認していたが、何体かBランクの魔物を討伐したという情報以外たいした情報は得られていない。
ただ、日に日に迷宮内の魔物の数が増えているらしく。これ以上調査隊の原因究明が遅れれば氾濫の発生は避けられないだろうと言われ始めていた。
そんなモヤモヤした日々を過ごしていた俺たちだったが、それは突然に始まった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
昼食を終え、3人で宿屋の部屋にて食後の時間をのんびり過ごしていると、それはなんの前触れの無く突然に始まった。
『マスター! 迷宮周辺に突如、大量の魔物が出現しました』
突如頭の中に【ロラ】の報告が響く。
ついに始まったか。
俺の様子の変化に敏感に感じたのか2人の表情に緊張が走る。
【マーカー】を通して迷宮周辺の様子を伺ってみる。
なっ……、なんだこれ……。
視界一杯に広がる魔物、魔物、魔物。これ、いったいどれだけの数がいるんだ?
『推定数、5万以上と思われます』
5万……。ちょっと洒落にならに数だな。
「あの……。レオン様?」
緊張した面持ちのまま喋らない俺にウイが話しかけてきた。
「ああ、すまない。いよいよ氾濫が始まったようだ。数は5万以上のようだ」
「「…………」」
多少予想はしていたと思うが、それでも2人は5万という言葉に息を呑む。
「これからすぐにギルドに向かう。2人ともすぐ準備をしてくれ」
そう伝えると、2人とも緊張した面持ちで返事をしながらも素早く準備を始めた。
すぐに準備を整えた俺たちはギルドに向かって移動していた。
その間も【マーカー】を通して魔物の動向を確認しているが、今のところまだ動きはないようだ。しかし、人魔迷宮と王都の距離はゆっくり歩いても3時間掛からない。もし魔物どもが動き出したら1時間も掛からずここ王都に攻め入ってくる。
兎に角急いで、ギルドに行かないと。
カンッ、カンッ、カンッ。カンッ、カンッ、カンッ。
突如王都中に鐘の音が響き渡る。
カンッ、カンッ、カンッ。カンッ、カンッ、カンッ。
その音は止まることなく鳴り続ける。
「どうやら、気付いたようだね」
「そのようですね」
さすがに早いな。俺が氾濫を確認してからまだ15分と経っていない。
騎士団か冒険者ギルドか分からないけど、それ相応の監視体制をとっていたみたいだ。
街の様子を見ると、多くの騎士と思われる人たちが街壁や城門に向けて走っていっている。
「俺たちもギルドまで急ごう」
2人の返事を聞き足早にギルドに向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ギルドにはまだ冒険者はそんなに集まっていないようだ。
それもそうか。今さっき鐘が鳴り始めたばかりだから、元々ギルドにいたものか、ギルド周辺いた者がここに今いるのだろう。
受付を見ると何人もの冒険者が受付嬢さんに詰め寄っている。
とはいえ、今始まったばかりの氾濫だ。受付嬢さんもまだなんの情報も持っていないだろう。
ギルド内の様子を確認していると、その間にも次々に冒険者がやってくる。
誰もが情報を求めているようだ。
「この状態だとギルドマスターと話すのは無理かな」
「そうですね。しばらく様子を見て、ギルドからの報告を待つ方が良さそうですね」
ウイが言うようにしばらく様子をみて待つことにする。
ふとティアナを見ると顔色が良くない。
そういえは先程からなにも喋っていない。明るいティアナにしては珍しい。
「ティアナ。大丈夫か?」
「あっ! ご主人様」
急に名前を呼ばれ、ビックリしたような反応をする。
「ホントに大丈夫か?」
「ごめんなさい。なんだか急に不安になってきて……」
大量のコボルト相手に平気で闘っていただけに今のティアナの反応はすこし意外に感じたが、普通に考えて5万もの魔物が攻めてくるかもと思えば誰でも不安になるか。
「大丈夫。俺やウイがいる。それにティアナも自分が思っているより充分実力がついている。無理はダメだが、俺やウイから離れないように一緒に戦えば大丈夫だ」
「うん、頑張る」
これで、不安がなくなる訳ではないだろうが、少しでも緊張がほぐれてくれればいい。
実際ティアナは他の冒険者と比べても充分強いと思う。後は経験を積めば自信もついてくるとだろう。
まあ、人の事を言っている場合でもない。自分も今までの戦いで何度も危ない目に合っている。いい加減学習しないとホントに死ぬかもしれないからな。
そんな事を思っていると、騒がしかったギルド内が急に静まる。
前を見るとギルドマスターが階段から降りてきたようだ。
「え~、もうすでに気付いていると思うが、人魔迷宮にて氾濫が発生した。まだ魔物たちの動きは無いが、一度動き出せばここ王都まで1時間とかからずやってくるだろう。そこでこれより緊急討伐依頼を発令する。これにより王都及びその周辺にいる冒険者のギルドカードを緊急討伐依頼仕様に変更した。ギルドカードを確認してくれ」
緊急討伐依頼仕様? 取りあえずギルドカードを確認するとカードの色が赤色に変更されており、記入欄の一番上に緊急討伐依頼と表示されている。それ以外には特に表示が変わっている所はない。
「今見てもらって分かるように、ギルドカードが緊急討伐依頼仕様になっている。これによりカードの持ち主が倒した魔物の数と、魔物の危険度を記憶されるようになった。ただ記憶できるのは1週間だけだから、それまでに一度ギルドに戻って報告をしてくれ。この緊急討伐依頼仕様は緊急討伐依頼が完遂されたと判断された時解除される」
へ~、そんな機能が付いているんだ。すごい魔導技術だな。
「それでは作戦を伝える。今回は王都騎士団と合同の作戦になる。では内容を説明する……」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
現在俺達冒険者は王都よりやや迷宮側に造られた簡易砦に来ている。その数2500。現在王都に滞在している冒険者の約半数だ。そして残りの半分は同じく別の場所に造られた簡易砦に移動していた。
王都の防衛は騎士団が担当し籠城戦をする。そして俺達冒険者は状況に応じて、籠城ないし遊撃を試みる。
相手は魔物だけにどう動いてくるか全く予測がつかない。しかも迷宮からの距離があまりに近い為、陣を張って正面から叩くという訳にもいかない。そうすると作戦はおのずと絞られてします。
まあ、あの王都の街壁はそうそう突破できるものではない。
王都の事は騎士団に任せて、俺は俺の出来る事に全力を尽くすだけだ。
『マスター。魔物に動きが有りました。先ほどから何者かと戦闘を繰り広げておりましたが、その戦闘に関わっていない魔物、約4万5千が王都方面に向け移動を開始し始めました』
いよいよ、始まったか。一部誰かと戦っているみたいだが、おそらく調査隊の面々だろう。
15人で5千を受け持つ事になりそうだが、さすがに大丈夫だろうか?
とは言っても先ずは自分達だ。魔物の総数約4万5千。ギルドマスターは王都が落ちえる事は無いと言っていたが、それは俺達が安全であるとはイコールではない。むしろ最前線で戦う事になる俺達の命は全く保証されていないのだから。
「魔物に動き有り。現在約4万以上の魔物が王都に向けて移動を開始した。魔物到達まで約40分。それまでに各々準備をな」
今回の作戦で、こちらの砦の指揮官を任されているグラハム副ギルドマスターの声が砦中に響く。
一気に砦の中の緊張感が高まり、中には気合を入れるように叫び声を上げる者まで現れる。
「2人とも大丈夫か?」
俺も含めウイやティアナはこれほどの規模の戦闘にもちろん参加したことが無い。
先ほどティアナが不安を顕わにしていたのもその為だろう。
「私は大丈夫です」
「はい、ボクも覚悟を決めました」
さすがのウイも少し不安気な表情をのぞかせているが、今のところ問題なさそうだ。
ティアナも流石に不安の色は隠せてはいないが、先ほどに比べると幾分か顔色がいい。
「2人とも無理はしなくていい。出来るだけ俺から離れないように」
俺の側なら何かあったとしても、すぐに転移で撤退が出来る。だから出来るだけ俺の目の届く範囲で彼女たちにはいてもらう必要がある。
「はい、必ずお側に」
「はい、ご主人様の側を離れません」
そんな2人に頷き返えした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
地響きが響いている。
見渡す限りの魔物も群れと共に砂塵が舞い上がる。
「弓隊! 構え!」
グラハムさんの指示の下、一斉に弓を構える。
「魔法隊! 魔法準備!」
続く指示の下、砦の防壁に立ち並ぶ魔法特化の冒険者たちが魔法の準備をする。
俺は魔法部隊に混ざり自分の出せる最大に威力の魔法の準備にはいる。
いよいよ魔物の大群が近づいてくる。
「弓隊! 10秒前……、5秒前・3・2・1・放てー!!」
グラハムさんの号令と共に1000を超える矢が魔物の群れに殺到していく。
「魔法隊! 続けて撃てー!!」
矢が魔物を襲うと同時に魔法隊から無数に魔法が放たれる。
俺もその号令に合わせ、自分の持っている最大威力の魔法【七元魔法(火)】の『スーパーフレア』を20個同時展開して魔物の密集している所を目掛けて一気に放った。
各場所で、魔法の爆炎が上がり、魔物を打倒して行く中。俺が放った。20個の『スーパーフレア』は激しい轟音と共に巨大な火柱を上げ、周辺の魔物たちを一気に消し炭に変えてしまった。
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