第38話 嵐の前
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なんか中途半端な時間だな。
午後から迷宮に入る予定だが、ギルドから出て来た時点で11時だった。
遅めの朝食だった為、早めに昼食をとる気にもならない。いっそ今から迷宮に入ってもいいけど……。
よし、決めた。
「2人とも今から12時半まで自由時間にするから、王都観光でもしてくるといいよ」
2人とも王都にしばらく住んでいたみたいだけど、殆ど外に出た事がないと思うし、丁度いいだろう。
「はい、これで好きなもの買うといいよ」
金貨を1枚2人に渡す。
「えっ! こんなにも……、多すぎます」とウイ。
ティアナも目を見開いて驚いている。
「そんな事無いよ。いままでの稼ぎを考えると、それでも少ないくらいだよ」
まあ、これ以上渡しても、おそらく2人は受け取らないだろう。
「はあ……」
「気にしないで使って。じゃあ、12時半に宿屋の食堂に集合ね」
抗議は受け付けません。
「あの、ご主人様はそれまでどうされるのですか?」
「ん~、俺は宿屋でもうひと眠りするよ。今日は寝不足気味だしね」
俺の言葉に顔を赤くする2人。なんとも可愛い。
「じゃあ、そういう事で、解散!」
そう言って、俺は宿屋に向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
さてと、どうしようかな?
ベッドに横になりながら考える。
このまま寝てしまってもいいが、実はあまり眠気が無い。
今回は、2人が奴隷という事もあり、今まで自由時間が殆ど無かったはず。と思い、短い時間だけど自由に行動する時間をもって貰いたくて考えた事だ。
もっと時間がある時にでも、とは考えたが最初は慣らしの意味合いも込めて1時間半の自由時間にした。
定期的に自由時間を設けて、早いうちに、丸一日の自由時間を作って上げよう。
という事で自分が暇なのだが……、しまった。俺も観光してこればよかった。
しかし、寝て過ごすって言ってしまったからな。外で2人に合ってしまった場合にかっこ悪い。
さてと、何か作るか、それとも魔法の訓練でもするか……。
でだ、しばらく考えて、取得してからずっと放置状態だった【召喚魔法】について考える事にした。
で【ロラ】に【召喚魔法】について聞いた。
【召喚魔法】を使うには、召喚する魔物と契約をしなければならない。
で、その契約方法だが、大きく分けて2つ。
1つは、【召喚魔法】のスキルを持った者が、人と意思疎通が可能な魔物と戦い、勝利し契約する方法。
この方法は、ハッキリ言って運だ。倒した魔物が自分から召喚獣になる意思を示さなければならない。
そして、魔物から召喚獣になる意思表示をする事など殆どない。まさに運しだいだ。
2つ目は魔導書による契約だ。
これは、召喚師と呼ばれる魔道士が創った魔導書を使用して召喚獣と契約する方法だ。
メリットとしては、お金さえ有れば誰でも召喚獣を得る事が出来る事。
デメリットとしては、強力な召喚獣がいない事と、魔導書による契約には失敗がつきものであるという事。
ただ契約失敗に関しては、何度失敗しても魔導書を購入するお金さえ有れば、何回でも挑戦出来る為、いずれは取得する事が出来るから、それほど大きなデメリットじゃない。
とはいえ魔導書1つ買うのに、安くても金貨5枚、そこそこの召喚獣の魔導書となると1つ金貨30枚は必要になってくる。その為、お金持ちじゃないとやっぱり難しい。しかも成功の確率は10回に1回ほどだというから、とても一般人には手が出せない。
まあ、今の俺なら簡単に買えるけど。
その魔導書ってどこで買えるんだ?
『魔導書は一般的に魔道具屋で販売されていることが多いですが、店頭に並ぶ事は殆ど有りません』
そうなんだ。でもなんで?
『召喚師の人数が少なく魔導書を創れる者が極端に少ない為、滅多に世の中に出回る事がないのです』
なるほど、じゃあ、どの道あまり見込みがないのかな。
一応【召喚魔法】スキルを持っているから、いずれ魔物の方から契約してくれって言ってくるかも、それまで待つか。いや、取りあえず魔導書が売っていないか魔道具屋だけはこまめに見にいくかな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「どうだった? 短い時間だったけど楽しめた?」
只今、自由時間が終了し3人で宿屋の食堂で昼食をとっている。
「はい。奴隷になって初めての事だったので、始めはどうしてよいか戸惑いましたが、色々見る事が出来てすごく楽しかったです」
「ボクもウイちゃんと一緒に王都を散策出来てすごく楽しかったよ」
うんうん、2人とも短い時間でも充分楽しめたようだ。
「そっか、それならよかったよ。今度はもっと長めに自由時間を作るようにするね」
「そんな、申し訳ないです」とウイ。
「やった~! 楽しみにしてるね。ご主人様」とはティアナ。
反応は2人ともそれぞれらしいなと、思わず笑みがこぼれる。
「さてと、午後の予定だけど、食事がすんだら早速迷宮に行くよ。今回は王都を出たら転移で移動するからすぐに迷宮だ。そのつもりで準備をしておいてね」
そう伝えると、
「はいです」「は~い」といつのも元気な返事が返ってきた。
「よし、じゃあ、食事がすんだらさっそう出発しよう」
という事で現在、昼食を済ませた僕たちは、王都城門に向けて歩みを進めている。
「何か有ったのでしょうか?」
城門に並ぶ人たちを見て、ウイが俺に問いかけてくる。
「確かに珍しいね」
何が珍しいかと言うと。現在城門で外に出る者の列が出来ている事だ。
今までも列が無かった訳ではないのだが、明らかに今日の列の長さはおかしい。少なく見積もって今までの10倍は並んでいる。
「取りあえず、並ぼう」
列を眺めていても仕方が無いので取りあえず列に並ぶ。
並びながら列の先頭を観察していると、どうやら門兵が冒険者とみられる人達の番になるたびに、何か話し掛けて確認をとっているみたいだ。
そして冒険者の中には外に出ず、そのまま街中に戻って行く者もいたのだ。
「どうやら冒険者に用事があるみたいだね」
「そうですね。そうすると益々なにかあったのかと思ってしまいますね」
「ウイちゃん、何かって?」
「それは……」
ティアナの問いにウイも答えを見いだせない。
「2人とも、どの道すぐに分かるさ。もうすぐ俺達の番だしね」
その後はしばらく3人で雑談をしながら待っていると、ようやく俺達の番になった。
「君たちは冒険者だね?」
「はいそうです」
予想通り冒険者に用事があるようだ。
「王都から出る冒険者全員に聞いているのだが、外に出る目的は?」
目的? なんでそんなこと聞くんだ?
「『人魔迷宮』に潜る為ですが」
「そうか。ならば、申し訳ないが引き返してくれ」
「な? 何でですか?」
「それは、今日の昼の12時より人魔迷宮が一時的に閉鎖される事になったからだ」
一時的に閉鎖? 昨日のコボルト大量発生も何か関連しているのかな?
「どうしてですか?」
「今のところ正式な発表がされていない。知りたければ冒険者ギルドに聞いてみてくれ」
そうか、迷宮の管理はギルドの管轄になるのか。
「分かりました。ギルドで聞いてきます」
そうして俺達は列から離れ冒険者ギルドに向かう事にした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「多いな」
ギルドの前に多くの冒険者が集まっていた。
午後からの閉鎖と聞いたけど、それにしてはこの冒険者の数はどういう事だろう。
朝、来た時はそんなに多い事なかったのにな。
「取りあえず中に入って受付の人に事情を聞いてみよう」
「はいです」「は~い」
2人に確認を取り、中に入ると、こちらもいつもとは比べ物にならない数の冒険者がいた。
受付を見るとすべての受付が埋まっておりとても話を聞きに行ける状況じゃない。
どうしようかと考えていると一人の受付嬢さんがギルドに集める冒険者に向けて大声で話し始めた。
「みなさん聞いてください! この度は人魔迷宮閉鎖つき大変ご迷惑をお掛けしております。詳細につきましては、まだお話しできませんが、本日午後4時より、ここ冒険者ギルドの修練場にてギルドマスターより正式な発表がなされます。申し訳ございませんがそれまで解散頂き、午後4時にパーティーリーダーのみもう一度お集まりいただきますようお願いします」
これはただ事じゃないな。明らかに迷宮で何かあったか。いや、氾濫の可能性も高いか。
取りあえず4時まで待って、ギルドマスターより正式な発表とやら待つしかないな。
「じゃあ、4時までここで待つのもなんだし一度宿屋に戻ろうか」
2人に提案して俺達は宿屋に戻る事にした。
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【僕の装備は最強だけど自由過ぎる(仮)】
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