第37話 ギルドマスター再び
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翌朝、いつもよりも遅めの起床。
だが、充実した朝を俺達は迎えた。
先日の反省を活かし、3人が同じベッドで寝られるように、宿屋の主人に部屋を替えてもらった。
宿屋の主人から「ミスリルランクの冒険者となると流石ですな」と言われてしまった。
何がとは聞かない。その通りだからね。
それから3人のんびりと朝食をとり、冒険者ギルドに向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「昨日も思ったけど、やっぱりすごく大きいよね」
俺達は只今、冒険者ギルドの前にいる。
王都の冒険者ギルドは、石造りの3階建ての建物のはずだが、他の3階建ての建物と比べても明らかに高さがある。もしかしたら1.5倍くらいあるかも。
横にもかなりの広さがあり、ちょっとした砦くらいあるのでは? と思ってしまう。
「さすがは冒険者ギルドの総本部、といったところでしょうか」
「そうだね」
「ね~、ね~、昨日も同じような話してたよね。もういいから、早く入ろうよ」
それもそうだ。でも何度見ても、すごいものはすごいと思ってしまうのだよ。
ティアナに催促され早速冒険者ギルドの中に入る。
午前中とはいえ、やや遅い時間という事もあり、昨日来た時よりもだいぶ空いている。
それでもエルセンギルドの混雑時間より、冒険者の数が多いんだけどね。
早速10箇所ある受付から空いている受付を探すと、昨日対応してくれたエルフの受付嬢さんのところが空いていた。
早速、エルフの受付嬢さんのところに向かう。
「おはようございます。昨日登録された方ですね」
そう言ってティアナを見る。
「はい、そうです。覚えていてくれたんですね」
毎日かなりの数の冒険者が来るはずなのに、この人1回見ただけで俺達の事、覚えているんだな。流石王都の受付嬢さんだ。
「そりゃ、15歳でミスリルランクなんて見た事無いですから、嫌でも覚えちゃいますよ」
俺のランクの所為だったみたいです。
「今日はどうされました?」
「先日、エルセンのギルドで報告をしたゴブリンロードの件で、ギルドマスターに面会をしたいのですが。あっ、これギルドカードです」
そう言ってギルドカードを受付嬢さんに渡す。
「お話は伺っております。一応ギルドカードを確認させて頂きますので、少々お待ちください」
ギルドの中をしばらくぼんやり見ながら、受付嬢さんが戻ってくるのを待つ。
やっぱり広いよな。酒場スペースが分離されているにも関わらず、エルセンのギルドの5倍の広さはあるんじゃないかな?
それでも昨日は結構込み合っていたんだから、ここ王都に冒険者ってどれだけいるんだろう?
「こんなに冒険者がいて、そんなに仕事あるのかな?」と俺が呟くと、
「王都での冒険者の主な仕事は、隊商や旅人の護衛が殆どみたいです。その為多くの冒険者は王都に留まらず、依頼を受けては王都と他の街を往復する生活をしているようですよ」とウイ。
なるほど、確かに王都なら人の流れの中心だし、護衛の仕事も多いわけだ。納得だね。
「大変お待たせ致しました」
そんな事をウイと話していると受付嬢さんが戻ってきた。
「確認が取れました。それではご案内致します。どうぞこちらへ」
受付嬢さんの後に続いて階段を上がっていく。
3階まで上がり、一番奥の部屋まで移動すると
「こちらです」
と一言俺達に伝え、部屋をノックする。
「フィーネです。レオンハルトさんをお連れしました」
「どうぞ」
受付嬢さん改めフィーネさんが声を掛けると、部屋の中から軽い返事が返ってくる。
「失礼します」と声掛けをしてフィーネさんは扉を開け、俺達に入るように促す。
「おはようございます。こんな忙しい時間に伺って申し訳ないです」
取りあえずギルドマスターだから、失礼のないように挨拶をしておく。
ウイもティアナの俺に続いて挨拶をしている。
「いやいや、こちらこそ、わざわざ王都まで来てもらって申し訳ない」
「いえ、王都には元々来る予定でしたので問題ないです」
言葉遣いが分からんから、どう答えたらいいか分からない。失礼な言い回しになってなければいいんだけど。
「そう言ってもらえると助かるよ。早速だが、君に報酬を払わないといけないね。立ち話という訳にもいかないから、そこのソファーに座ってくれ」
俺は言われるままにソファーに腰掛ける。
ウイとティアナは俺の後ろに立つ。俺がソファーに座るように言おうとすると、ウイは首を横に振る。
やっぱり人前では奴隷として行動するらしい。
「さあ、早速話を進めさせてもらうよ」
そんな俺達のやり取りに気にする事なく、ギルドマスターは話を進める。
「で、これが君への報酬だよ」
そう言ってギルドマスターは3つの布袋を取り出す。
「じゃあ、説明するよ。先ずは『魔皇石』と『魔晶石』の買い取り分だけど。白金貨45枚、4,500万コルドだ。内訳は魔皇石が白金貨33枚、魔晶石が1つ白金貨6枚だよ。確認してくれ」
確か相場だと3つ合わせて4,000万コルドだったはずだから500万コルドも上乗せしてくれたのか。ギルド太っ腹だな。
ギルドマスターは3つある袋のうち1つを俺の方に滑らせる。
中を見ると白金貨がじゃらじゃらと入っている。
すごい! 白金貨すら今まで見た事なかったのに、こんなにたくさんの白金貨を拝める日が来るとは思ってもいなかったよ。
取りあえず【神倉】に収納すると、頭の中に白金貨45と浮かんできた。ちゃんと45枚あるようだ。
「確かに」
俺の言葉に1つ頷きギルドマスターは話を続ける。
「続いてこれがゴブリンロードの特別討伐報酬だ。金貨60枚、60万コルドだ。確認してくれ」
普通なら60万コルドなんてすごい大金なのだが、4,500万コルドの後だから、なんか大した金額じゃない気がしてしまう。
こちらも渡された袋を【神倉】に収納する。すると金貨60枚と浮かんでくる。
「大丈夫です」
「じゃ、最後になるが、これがゴブリン達の通常討伐報酬分と素材売却分の金だ。通常討伐報酬は普段より1.2倍で計算させてもらった。金額は合わせて791,400コルドだ」
ゴブリン種ばかりなのに、思ったより高額になったな。
同じように【神倉】に収納して、金額を確認する。
しかし今回の収入はすごいな。合計すると4,600万コルドを超える。
これだけ有れば王都の一等地に豪邸が建てれそうだ。もちろん建てないけど。
でも、折角だしノヴァリスに着いたら、家を買ってもいいかもね。
「さてと、これで報酬の件は全て終わった。君から何か質問はあるかい?」
質問か……。『魔皇石』の件、何か分かったか聞いてもいいのかな? ダメならダメって言われるし聞いてみるか。
「あの、答えられる範囲でいいのですが、『魔皇石』の件って何か分かりましたか?」
ギルドマスターはしばらく考えると、
「君たちは一応関係者だからいいか……、って、後ろの新しい子は君の奴隷だよね」
ティアナの事だな。
「奴隷ですが、仲間です。安心して下さい。今日聞いた事は口外させませんから」
「まあ、そんなに極秘って事でもないからいいか。
実はあれから君たちが倒したような、異常成長種の魔物の報告が新たに3件上がってきたんだ。でだ、その報告には、皆同じように『魔皇石』と『魔晶石』の存在が記されていた」
うわ、明らかに誰かが『魔皇石』と『魔晶石』をばら撒いているな。
「ただ、『魔晶石』に関しては、場所によって数が区々なんだよ。君たちの現場だと2個だったが、他の場所では3個だったり2個だったりと数が違う」
何か意味があるのかな?
「何かそれぞれの共通点って有るんですか?」
「有る。一言で言えば最上位種の存在だ」
「最上位種? ゴブリンロードのような存在の事ですか?」
「そう。『魔晶石』の数が3個の場所には最上位種が現れておらず、2個の場所には必ず現れている……。まだ例が少ないから確証は得られていないが、『魔晶石』は魔物を最上位種に進化させる為の媒体になっているじゃないかと考えている」
ここまでの話ならそれが一番可能性が高そうな考えだ。
ただ、その推理正しかった場合、状況によっては同じ場所に3体の最上位種が同時出現する可能性もあるって事だよな。
「それって、後手に回ると危険ですね」
「そうだね。ただ、こればっかりはどうしようもないからね」
確かに、今度は何処に仕掛けるのか、そんな予想が出来ない事に、前もって対応するのは無理だよね。
「また同じようなものを見つけたら、報告してくれればいいよ」
軽い感じで話を締める。
「分かりました」
「他はもうよかったかな?」
一応迷宮の事も報告しておくか。
「あの、話は変わるんですが……」
「なに?」
「昨日『人魔迷宮』に入った時の報告です。一応魔物が誤差の範囲で多くなっているとは聞いていたのですが、3階層に発生していたコボルトの量が、とても誤差の範囲とは思えないくらい多かったように感じまして」
俺の報告にしばらく顎に手をあて考えている。
「ちなみに多いって、どれくらい?」
「私達が倒しただけでも、150体以上はいました」
「えっ! そんなにいたの?」
「はい、ちなみにおそらくですが、4階層も同じくらい、いると思います」
俺の報告にギルドマスターはひとつため息を吐くと、
「報告ありがとう。一度ギルド内で精査してみるよ」
報告を終えた俺達はギルドマスターに挨拶をして部屋を後にした。
ちなみに1階に戻った俺達は、素材買い取りカウンターに赴き大量のコボルトの素材を売ったのだが、そのあまりの量に終始注目の的になってしまった。まあ、エルセンで慣れてるし、今更だけどね。
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新連載を始めました。
【僕の装備は最強だけど自由過ぎる(仮)】
『 http://book1.adouzi.eu.org/n7839db/ 』
こちらの作品も読んでいただけると嬉しいです。
本作品は今までと同じペースでアップして参ります。
両作品共々よろしくお願い致します。




