第36話 コボルト部屋
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「やっぱり多いね。2人とも大丈夫?」
「はい、問題ありません」
「ボクも大丈夫だよ」
倒しても、倒しても、次から次へと現れるコボルト達を、瞬殺しながら俺達は迷宮を移動していた。
3階層に入ってから既に1時間は経過しただろうか?
コボルトも既に40体以上倒しているが、一向に減る気配が無い。
【マップ】と【探知術】を使って、コボルトの動向を見ているのだが、何処からか次々に湧いているとしか思えない状況だ。
ただ何処から湧いているのか分からない。
【マップ】と【探知術】の探索範囲外である事は間違いないと思う。その為、迷宮内を移動して探索範囲を広めているところなのだ。
「これは、氾濫の予兆なのでしょうか?」
「ん~、どうだろう? この人魔迷宮は王都の側に在るだけ有って、常に冒険者や騎士が迷宮内の魔物を掃除している。そんな迷宮で氾濫なんて起こるのかな?」
「確かにそうだよね。実際この迷宮、前回氾濫を起こしたのは300年以上前の事らしいしね」
「ティアナ、そんな事良く知っていたな」
「へへ~、ボクは色々物知りなんだよ」
そういいながら、無い胸を張る。残念!
「そんな事より、探索を進めましょう」
「そうだな、もうそこまでコボルト達が近づいてきているみたいだしな」
「そんな事って、ウイちゃん、ヒドイ……」
そんな感じで3階層の探索を再開した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それから30分後、コボルトが大量に集まっている場所を発見した。
【マップ】&【探知術】で確認する限り、特に強力な個体はいないようだ。
なんか、ここ原因臭いな。
取りあえず、部屋にいる大量のコボルトを掃除するとして、
広範囲攻撃魔法を使えば、すぐに殲滅出来そうだけど。多数に囲まれた時の近接戦闘の訓練に丁度良さだし、どうしよ? 2人に聞いてみるか。
「なぁ、ここから15分くらいの場所に、今まで戦った事のあるコボルトが50体以上、大量発生している部屋が有るんだが、そこを殲滅がてらみんなで近接戦闘の訓練をしたいと思うのだけど、2人ともどう思う? もし無理なら、俺が広範囲魔法で殲滅してくるけど」
「私は大丈夫です。むしろ戦いたいです」
ウイは当然問題無しと、
「今まで戦ってきたコボルトと同じなんだよね。それならボクも大丈夫だよ」
ティアナも問題無いみたいだ。ここにきてから大分実力も自信もついてきたみたいで大変結構である。
「分かった。ただもし危険と判断したら、すぐに転移で撤退するからね」
「はいです」
「は~い」
そして15分後、俺達は大量コボルト部屋の前に到着した。
「確かに、すごい多くの気配を感じますね」
【気配感知】を持っているだけあって、ウイは多少なりにも中の様子が分かるようだ。
「不安になった?」
ウイの表情を伺いながら聞くと、
「いえ、むしろワクワクしてきます」
そういい、ニヤリと笑う。やっぱり獣人族は戦闘が好きなのね。
「ティアナは大丈夫か?」
「うん、平気だよ。ボクもウイちゃんと同じでワクワクしているよ」
そういえば、龍人族(ティアナは竜人族だけど)は獣人族以上に戦闘を好む種族だったわ。
「じゃあ、2人とも行くよ」
2人に声を掛けて大量コボルト部屋の扉を開けた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
戦闘はすぐに始まった。
扉を開けると同時に、ウイとティアナが部屋の中に突撃していく。
鮮血が飛び散り、3体のコボルトがその場で崩れ落ちる。
コボルト達も必死に迎撃しようとするが、2人の動きに着いてこられず、次々と命を失っていく。
俺も2人に負けじとコボルトの中に突っ込む。
俺達が剣を振るう度に、数体のコボルト達がその場で躯に変えられる。
それでもコボルト達は逃げようともせず、俺達を囲んで次々と襲い掛かってくる。
「なぁ、ウイ、こいつら全く怯む様子が無いんだけど、迷宮の魔物って恐怖を感じたりしないのかな?」
戦闘中にもかかわらず、まるで街中をぶらつきながら雑談するようにウイに話しかける。
「どうでしょう? 私も迷宮に付いて、あまり詳しくありませんので」
ウイも普通に返してくる。
【ロラ】は分かるか?
『守護獣であれば、たとえ相手が強かろうと恐怖を感じる事なく、最後まで戦い抜きますが、そうで無い魔物は、恐怖を感じれば逃げていく事が殆どです』
やっぱりそうだよな。
じゃあ、通常の魔物が、自分より強い者を相手にしても逃げない理由って何かある?
『一般的な理由ですと、モンスタートラップでしょうか』
モンスタートラップ? って、侵入者を部屋に閉じ込め、大量の魔物を発生させる罠だよな。
『その通りです』
確かにこの状態、モンスタートラップに酷似しているのかな。
ただ、そうすると、あれはどういう事なんだろう?
俺の視線の先には、この部屋に侵入する際に開けられたままの扉見える。
罠が壊れていたって事も無いとはいえないけど、それは流石に無理あるよね。
まぁ、このまま考えても仕方ないか。先ずはこのコボルト達を殲滅して、部屋を調べる方が早そうだ。
「ウイ、ティアナ。殲滅速度を上げるよ」
「はいです」
「は~い」
俺が2人の声を掛けると、小気味良い返事を返し、更に攻撃速度を上げてコボルトを切り刻んでいく。
「さてと、俺もここからは本気で行きますか」
そして、一気にコボルトの密集地帯に飛び込む。そして次の瞬間、5体のコボルトが同時に血を吹き出し絶命した。
戦闘を開始してから15分を過ぎた頃だろうか。
そこには立っているコボルトは1体もいなくなり、その代り30体を超えるコボルトの死体が部屋中に転がっている。
最初の頃は戦いながら【神倉】に死体を収納していたけど、途中から段々面倒になり、邪魔な死体以外は放置しいたらこうなってしまった。
さっさと【神倉】に収納してこの部屋を調査しないとね。
更に5分後には全てのコボルトを収納し終え、さっそく部屋内を調査したのだが……。
「何もありませんね」
「こっちも何も無いみたいだよ」
3人で手分けをして部屋内を調査したのだが何も見つからない。
【探知術】を駆使してもこれといって反応が現れない。
「余計、謎が深まっただけだね」
「そうですね。これだけのコボルトが集まっていたのですから、何かあっても不思議ではないのですが」
「無い物は仕方ないよ。他にも何かあるかも知れないし、他も当たってみようよ」
ティアナの言う事も、もっともだ。取りあえず他の場所も当たって見よう。
「ティアナの言う通りだ。ここであれこれ考えても仕方ない。他の場所も調べてみよう」
それからしばらく3階層を調査したのだが、これといった物は何も見つからなかった。ただ、大量コボルト部屋を殲滅した為か分からないが、出くわすコボルトの数が一気に減ったという変化は有ったが。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その後粗方3階層の調べ終えた俺達は4階層に降りた。
「やっぱり、数が多いな」
4階層に降りて早速【マップ】と【探知術】を使い状況を確認したのだが、
「状況としては3階層とほぼ同じで、かなりの数のコボルトが徘徊しているみたいだね。3階層との違いは、俺達意外に冒険者が見当たらないという事かな」
「冒険者が全くいないのですか?」
「うん、たぶんだけど、3階層で大量のコボルトが出て低ランクの冒険者じゃあ、4階層までたどり着けていなかったんじゃないかな」
それに中ランククラスの冒険者は転移魔法陣を使って10階層より下に行っているだろうし。
「確かに、そうかもしれませんね」
「ボクもそう思う。あのコボルトの数じゃとても低ランクの冒険者では突破は無理だよ」
ティアナもまだ、低ランク冒険者なんだけどね。
「もう、時間も遅いし、今日は一度戻って後日また4階層から探索しよう」
「はいです」
「は~い」
そうして俺達は迷宮1日目の探索を無事終え王都に戻った。
明日はギルドマスターに会いに行く予定だから、迷宮探索に行けたとしても午後からになるかな。
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