第27話 再生者
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なんだろう?
すごく体全体が暖かく癒されて行く感じがする。
柔らかい何かに包まれているような感覚だ。
あれ?
誰かが泣いている?
何処かからか、女の子がすすり泣くような声が聞こえる。
そして頬に雫のようなものが落ち伝い落ちていく。
俺はまどろむ意識の中、ゆっくりとまぶたを開けた。
女の娘が泣いている。
閉じたまぶたを涙で濡らしながら、俺を抱きしめ、体から淡い緑の光を放ち、その光は俺をも包んでいる。
その光はとても暖かく、優しく、体が少しずつ力を取り戻して行くようだ。
少しずつはっきりし始める意識の中、俺は手を伸ばし彼女の涙を拭った。
「ウイ、ありがとう。もう大丈夫だよ」
俺が掛けた言葉に、身体をピクリと反応させ、これでもかと言うくらい両目を見開くウイ。
「レ、レオン様、レオン様、レオン様~~」
そしてウイはそこから大粒の涙を流し俺の名前を何度も呼びながら俺を強く抱きしめる。
そんなウイを落ち着かせるように頭を撫でてあげる。
「良かったです。良かったです、ほんとに良かったです」
ウイそんな俺に今度は良かったですを繰り返す。
本気で心配してくれている事を知り、すごく嬉しくなった反面、こんなに心配させてしまった事に申し訳ない気持ちにもなってしまった。
「ごめん、ウイ。心配かけたね」
そう言うと、ウイは更に泣きじゃくり始めた。
ウイってこんなキャラだったかな?
そんなウイが落ち着くまでしばらく待つことにした。
やがて落ち着いたウイに手伝ってもらい身体を起こしてもらい現状を確認する。
よかった、ウイの傷は完全に癒えているみたいだ。
で、俺だが、小さなすり傷や火傷は既に癒えているようだが、左手はひどい状態のままだった。
更には体中至るところが骨折で軋むような痛みがある。
「ごめんなさい、一生懸命回復魔法を掛けたけど、私の回復魔法じゃ、ダメみたいです」
落ち込んで素が出ているのか、いつもと話し方が少し変わっているな。
「いいよ、自分でやったことだしね。それに多分だけどなんとかなると思うしね」
落ち込むウイに優しく声をかけ、早速自分の治療を始める。
ちなみにウイが使っていた回復魔法は【精霊魔法】の『癒しの風』という魔法で、本来人が持つ自然治癒力を高める魔法だ。その為自然治癒で治らないような怪我は当然治らないんだけどね。
これでなんとかなるかな?
先日魔法の訓練していた時に新たに作った『ライト・ヒール』の上位魔法『ライト・ハイヒール』を使ってみる。
「『ライト・ハイヒール』!」
白い光が、左手を包み込む。
爛れた皮膚が少しずつ再生していき、痛みもそれに伴い少しずつ和らいでいく。がしかし、表面の傷だけ癒えてとても完治するとは思えない。
このまま治療しても埓が明かないので一旦治療を止め別の方法を考える事にする。
【ロラ】、この怪我を治療できる強力な回復スキルはあるか?
『現状のマスターの怪我は四肢欠損に近い状態です。その怪我を再生させられるほどのスキルとなりますと特殊スキルの【再生者】や【上位スキル】の【神聖魔法】などがありますが、現状【神聖魔法】では取得してもレベル1からとなり、マスターの怪我を再生させる事が出来ないでしょう。取得するならば【再生者】を推奨いたします』
【再生者】か、じゃ~それを……。
と言うか、【神聖魔法】て、最初の魔法リストに無かったよな、レベルを上げれば四肢欠損を治せるようなスキルなら早く取得しとけば良かったんじゃないか。
『【神聖魔法】は本来、天人族か神官の洗礼を受けた者しか使用出来ません。またMPの代わりに聖気を使用して魔法を発動します。天人族や洗礼を受けた神官はMPが聖気になっており効率よく魔法を運用出来ますが、マスターが使用する場合MPを聖気に変換する必要があり、同等の効果を得るのに通常の2倍以上のMPが消費される事になります。これらの事を考慮してリストから除外いたしました』
なるほど、正直納得出来て無いけど一応了解した。
じゃ~【再生者】の効果は?
『【再生者】は通常の回復魔法に作用して治癒効力を格段に高め、対象者の傷等を本来あるべき姿に再生させるスキルです。その効果は対象者が死亡していない限り有効になります。また類似スキルとして、魔物が使用する【超再生】が在りますが【超再生】は自分自身のみを対象にしているのに対し【再生者】は自分以外の者に対しても有効です』
死んでなければ有効なんだ、これまたすごいな。
で、使い方は?
『特に使用方法というのはございません。【再生者】はパッシブスキルとなっており所有してさえいれば、後は回復系の魔法を使用した時点で効果が現れます。但し再生の効果を得るには通常の魔法よりもより多くのMPが必要となります。また魔法により再生スピードが異なります』
了解した。じゃ~【再生者】を取得してくれ。
『了解いたしました。これより【再生者】を取得します。
………………
【再生者】を取得しました』
よし、OKだ!
「……レオン様? ……大丈夫でしょうか?」
ふと気付くとウイが心配そうにこちらを見ている。
どうやら最初に『ライト・ハイヒール』を使ってから黙り込んでいるのを見て心配になったようだ。
「うん、大丈夫だよ。ちょっと、どうしようか考えていただけだから。もう大丈夫、今からそれを見せるよ」
そう言って再び『ライト・ハイヒール』を掛ける。
「『ライト・ハイヒール』!!」
俺の力強い言葉と共に左手がまるで逆再生のように傷が癒えて行く。
その様子をみて、俺の言葉に戸惑いを見せていたウイの表情は驚きの表情に変わって行く。
左手の再生が終わった後は対象を身体全体に移し体中の痛みを治していく。
みるみるうちに体の痛みが癒えていき、魔法を使い始めて1分後には体中の痛みはすべて消えていた。
うん。我ながらすごいな。
てか、傷の治り方が気持ち悪い。
グニャグニャに折れていた腕が治療を開始すると、ウネウネ動き出しやがて通常の腕の形に戻った時には気持ち悪くて全身から鳥肌が立ったくらいだ。
「すごい、すごい、すごいです、レオン様。まるで高位の神官様みたいです」
俺の回復魔法の効果を見て興奮気味のウイさん。
「うん、ありがとう。もう大丈夫だよ心配かけたね。ウイはどこか痛いところない?」
「はい、私は大丈夫です。ありがとうございます」
うん、いい笑顔だ。
立ち上がった俺は念のため身体を動かし状態を確認していく。
指を開いたり閉じたり、腕を伸ばし曲げ、屈伸をして足に痛みが無いか意識して確かめる。
よし、今のところ特に問題なさそうだ。
後は、ゴブリンの巣を確認してリッカ村に戻ろう。
「よし、それじゃ、まずゴブリンどもを回収して、その後、ゴブリンの巣を調査してからリッカ村に戻ろう。アヒム村長やクルトさんが心配しているだろうしね」
「はい!」
ウイの元気な返事を聞きゴブリンを回収しに戦場跡に戻った。
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