第26話 ゴブリンロード
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ゴブリンロードに突撃した俺は一気に勝負を掛けるべくゴブリンロードの首目掛け切りかかる。
しかしゴブリンロードも素早く反応する。
剣と剣が激しくぶつかり火花が飛び散る。
激しい鍔迫り合いはほぼ互角。俺とゴブリンロードの力が拮抗して体力だけが奪われていく。
仕方なく、一旦距離を取り剣の打ち合いに持っていく。
激しく剣が交錯し火花が飛び散る。
剣での激しい打ち合いになった。
スキルレベルは同等だが【武の神才】が有る分、俺の方がわずかに有利に進めている。
だが隙を突きゴブリンロードに傷を負わせてもゴブリンロードが持つ【超回復】スキルにより、簡単に傷は回復してしまう。
このままでは埒が明かないと再び大きく距離を取る。
一気に勝負をつけるべく、『ファイヤー・ボール』を5発瞬時に展開して、ゴブリンロードに向けて放つ。
ゴブリンロードは全く避ける事も出来ず、全弾直撃する。
よし! このまま一気に
そう思った瞬間、爆炎の中から巨体が飛び出してきた。
咄嗟に剣を構えゴブリンロードの攻撃を受ける事に成功するが、完全に体勢が崩れゴブリンロードに押し込まれる。
完全に体勢が崩れた俺にゴブリンロードは追い打ちをかけるように蹴りを繰り出してきた。
「ガッ!!」
俺はそれを全く防ぐ事が出来ず、もろに喰らい吹き飛ばされた。
体は地面と平行に飛び、やがて地面に激突、数度のバウンドののち地面を転がりながら岩に激突して止まった。
「うっ!!!」
背中を強かに打ち付け息が詰まる。
追い打ちをかける為、動けない俺に向けゴブリンロードが突っ込んでくる。
「グギャヤヤヤヤヤーーー!!」
しかし止めを刺すべく振りかぶったゴブリンロードが突然身体から血しぶきを上げ悲鳴を上げた。
「レオン様、ご無事でしょうか?」
見上げるとゴブリンロードと対峙しながら心配そうに俺に問いかけるウイの姿がそこに在った。
「ありがとう、助かった」
「いえ、私はレオン様の奴隷として当然の事をしたまでです」
奴隷としてか。俺としては仲間と思っているんだけどな。
しかし、このままではまずい。
ウイではゴブリンロードを抑える事すら無理だ。
「ウイ、俺は大丈夫だから下がれ、お前ではゴブリンロードの相手は無理だ」
「嫌です。私はこの命に代えてもレオン様をお守りすると決めたんです」
「ガアアアアアアア!!!」
そんな事を話しているとゴブリンロードは怒りの咆哮をあげウイに襲い掛かる。
ホントにまずい。
クソ、俺の身体動けよ!!
しかし、その思いもむなしく、思うように動かない身体。
そしてゴブリンロードがウイに向け剣を薙ぎ払う。
ウイはその剣を何とか2本の剣を交差させ受けるが、その剛剣の威力までは殺せず、吹き飛ばされて、木に激突する。
ゴブリンロードは完全にターゲットを俺からウイに移し、動けなくなったウイに止めを刺しに行く。
「ウイーーー!! 聞こえるか!? すぐにその場から逃げろ!!」
俺の叫び声もむなしくピクリとも動かないウイ。
不味い、気を失っている。
くそ!! 俺の身体、動けよ!
その時何とか身体が反応し始める。
間に合うか?
すぐさま俺は軋む身体を無理やり動かしゴブリンロードの頭に向けて『ライト・レーザー』を放つ。
光線がゴブリンロードの頭に吸い込まれるように鋭く飛翔する。
しかし視界の外からの完全な不意打ちにも拘らず『ライト・レーザー』をゴブリンロードはギリギリ躱してしまう。
クソ!! あれを躱すのか。
ゴブリンロードは『ライト・レーザー』を放った俺を睨みつけ、ウイに向かうのを止め俺に向け歩き始めた。
攻撃は失敗したがどうやらターゲットを俺に変更させる事には成功したようだ。
迫りくるゴブリンロードを見据える。
ターゲットが俺に変更された事で少し冷静になった俺は、『ライトヒール』を全身に掛け少しでもダメージの回復をはかる。
右手よし、左手問題なし、右足大丈夫、左足……これならいける。
身体の回復具合を眼前に迫るゴブリンロードを見据えながら確認する。
動かない俺をみて、動けないと勘違いしたかゴブリンロードは止めとばかりに何の工夫の無く剣を振り下ろしてきた。
その一撃を紙一重で躱しカウンターにゴブリンロードの腹を深く斬り裂く。
大きなダメージを負ったゴブリンロードは体勢を崩す。
ここが好機と俺は一気に畳み掛ける。
一気に形成が変わりゴブリンロードは防戦一方。全身が切り刻まれ【超回復】スキルでも回復しきれなくなってきている。
行ける! このまま押し切る!
そう思った矢先、追い込まれたゴブリンロードは俺を威嚇するように、森を震わすような咆哮をあげた。
俺は一瞬身体が竦み反撃が出来ない。
なんかヤバイ!
嫌な予感がし、俺はゴブリンロードと一旦距離を取る。
直後、ゴブリンロードの身体は突然赤色化していく。
全身真っ赤に変色したゴブリンロードはまるで我を失ったように所かまわず大剣を振り回す。
そしてうつろな眼は獲物を探すように視線を彷徨わせている。
やがてその視線は俺に向けられた。
俺をターゲットと見定めたのか狂気に溢れた咆哮を俺に浴びせ、俺に突撃してきた。
俺はすぐさま【闘鬼術】を最大出力で使い限界以上に力を引き出す。
次の瞬間、剣と剣が激しい金属音を響かる。
「くっ!! なんてパワーだ」
クソ、明らかに前よりパワーアップしている!!
先ほどまでパワーはほぼ互角だったのに今は完全に押し負けている。
いや、パワーだけじゃない。スピードも先ほどまでは俺が明らかに勝っていたのに今では逆にスピードでも押されている。
ちくしょう! いったいなんだってんだ!
その時ゴブリンロードのスキルリストに有った1つのスキルを思い出す。
【狂鬼化】か!?
『その通りです。【狂鬼化】は自分の理性を引き換えに筋力・耐久力・瞬発力を1.5倍に強化するスキルです。30分ほどで効果が切れその後は動くことも出来なくなります』
1.5倍ってマジかよ!! とんでもないスキルを使いやがって。
このままだとかなり不味い。どうする? 俺も【狂鬼化】のスキルを取るか?
いやダメだ、勝てたとしても理性を失えばウイをも殺してしまうかもしれない。
考えている間もゴブリンロード攻撃は激しくなるばかりだ。
畜生。このままじゃジリ貧だ。何とかしないと。
取りあえず先ずは距離を取る。
「喰らいやがれ『マジック・ランス』!!!!」
剣を打ち合いながら、『マジック・ランス』多重展開し、一気に10本もの魔力の槍をゴブリンロードに撃ち込む。
数だけ有ってもそんなに魔力を込められていなかった為、ゴブリンロードに大したダメージは与えられていない。
しかし、少しだが間合いは取ることは出来た。今はこれで十分だ。
ここからは一か八かだ。
剣に最大量に魔力をつぎ込み、更に【付与魔法】斬撃強化を掛け、更に更に、【七元魔法(火)】ヒートエッジを掛ける。
一気に過剰な魔力や魔法の多重に掛けた事より、剣から悲鳴のような共鳴音が響き渡る。
『マスター、いけません。このままでは剣が持ちません』
そんな事は分かっている。今だけ、この一瞬だけ持てばいい。
「行くぞ!! このデカブツがーーー!!!」
剣にすべての力をつぎ込み突っ込ん行く。
ゴブリンロードも鋭く剣を振り下ろし迎撃してきたが、その攻撃を肩をかすめながらもギリギリで躱し、その勢いのままゴブリンロードの胸に剣を突き刺す。
剣が刺さっていてもお構いなしに、痛みを感じないのか俺に向けて反撃を試みようとするゴブリンロード。
俺は慌てず、反撃を喰らう前に更に一撃を喰らわす。
「死にやがれ!!!『サンダー・ボルト』」
刺さった剣を伝わせ、最大量魔力をつぎ込んだ【混合魔法(雷)】の『サンダー・ボルト』をゴブリンロードの体内に撃ち込む。
『サンダー・ボルト』はゴブリンロードだけでなく俺をも巻き込み雷光を走らせる。
雷に打たれた俺とゴブリンロードは激しく痙攣し、体中が雷により焼け焦げて行く。
それでもゴブリンロードは痙攣しながらも大口を開け俺の首に咬みつこうとして来た。
くそが! なんてタフさだよ!!
悪態をつきながら。迫りくるゴブリンロードの口に左手を突き出し喰いつかせる。
「ぐがっ!!」
『フィジックス・スーツ』を纏っている為喰いちぎられはしないが激しい痛みが左手を襲う。
「くっ、喰いつきやがったな。ゴブリンの王様よ、身体は丈夫みたいだが口の中はどうだろうな?」
俺は咬みつかれた左手を見てニヤリと笑う。
「『ファイヤー・ボール』!!!!」
俺の叫び声と共にゴブリンロードの口の中で激しい大爆発が起こり、一気にゴブリンロードの上半身は炎に包まれた。
俺は爆発で吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。
「!! いって~!! くそ、どうだ? 殺ったか?」
最大魔力の『ファイヤー・ボール』を口の中に喰らわしたんだ、さすがに無事じゃないだろう。
すぐさまゴブリンロードを見ると上半身から煙を上げ大の字に倒れている。
殺ったか!! ん? 違う、死んでない。死でいるならこのレベル差だ。必ずレベルアップするはずなのに上がってないって事はまだ生きている。
俺は咄嗟に走りだし近くに落ちていたゴブリンロードが使っていた剣を拾い、止めを刺しに向かう。
ゴブリンロードを見るとうつろだった目に力が戻り俺を睨んでくる。
しかし、もう体が動かないのか、俺が剣を振り上げてもピクリとも反応しない。
「これで終わりだ」
俺はゴブリンロードの首を切り落とすべく振り下ろした。
俺の頭の中にレベルアップのメッセージが流れている。
体中いたるところに火傷の痕があり、切り傷や打撲の痕も目に付く、中でも左手は不自然なほど複雑に折れ曲がり、さらには焼けただれ原型をとどめていなかった。
殆ど自分でやった傷だが酷い状態だ。
いや、俺のことよりもまずはウイだ。
ふらつく足を無理やり動かしウイの下まで歩いていく。
ウイは意識が無いようだったが大きな傷は特に無いようだ。
念の為ステータスを確認するが、【状態】が失神となっているだけで【HP】も半分以上残っている。
良かった。命に別状は無いようだ。
安心したら、意識が遠のきそうになる。
最後の力を振り絞りウイの『ライト・ヒール』を掛けた。
ウイの【HP】がどんどん回復していく。
これで大丈夫だ。
安心した瞬間、俺の意識はそこで途切れた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
まさかまさかの日間2位、実力以上に順位がどんどん上がっていいてしまい少しパニック状態です。皆様本当にありがとうございます。




