第24話 リッカ村
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翌朝、俺達は眠い目をこすり冒険者ギルドに来ていた(眠いのは俺だけですが)。
目的は、折角温泉のあるリッカ村に行くのだからついでにリッカ村方面の依頼が無いか調べる為だ。
まぁ、飽くまでもついでだから、無いようだったらさっさとリッカ村に向かうつもりだ。
まだ早朝だった事もあり、冒険者はまばらなようだ。
早速掲示板を確認していくが、リッカ村方面の依頼が中々見つからない。
依頼の多くがウインザー王国の王都方面や西部小国群方面への護衛依頼が殆どであとは素材収集だろうか。
5分ほど見て、探すのに飽きそろそろ諦めようとしていた時、
「レオン様、これなんてどうでしょう?」
俺と同じように掲示板を見ていたウイが1つの依頼を指さした。
「おっ! どれどれ」
依頼を見ると丁度リッカ村からの依頼だった。
内容はゴブリンの討伐、数は20体以上、上位種も数体確認、報酬は金貨1枚と書いてある。依頼ランクは丁度シルバーランクの依頼だ。報酬は少ないがついでだし特に構わない。
早速この依頼を受けるべく受付カウンターに向かう。
「おはようございます」
こんな早朝にも拘らずいつものように笑顔で対応してくれるエレーラさん。
この人いつ来てもいるけどいつ休んでいるんだろ?
色々疑問はあるが今日はそれよりも温泉だ。
「この依頼を受けたいのですが」
「ゴブリンの特別討伐依頼ですね。畏まりました。ではお二人のギルドカードをご提出ください」
ギルドカードを渡すと、エレーラさんは依頼書と共に何やら魔法的な処理を行っている。
「お待たせいたしました。ギルドカードをお返しいたします」
ギルドカードを確認すると、受注依頼という項目が増え、そこにゴブリン討伐、依頼者・リッカ村、討伐期限・受注より10日と書かれていた。
「こちらの依頼受けて頂きありがとうございます。実はこの依頼中々受けてくれる方がいなくて困っていたのです」
俺がギルドカードを確認していると、エレーラさんが話しかけて来た。
受けてからそんな話をするなよ。まぁ、今回はついでだからいいけどさ。
俺の事はお構いなしに更に話し続けるエレーラさん。
「ゴブリン討伐って実入りが少ない上にリッカ村まで乗合馬車も出ておりませんし、歩くと半日以上掛かるじゃないですか。それだったら周辺の魔物を討伐した方が、効率が良いって10日も前に出された依頼なのに誰も受けてくれず困っていたんです。本当に受けていただいてありがとうございます」
悪気はないのだろうけど、依頼を受ける俺にはあまり言わない方が良い気がする。まぁ、いいんだけどね。
「リッカ村の温泉に入りに行くついでですから」
「そうでしたか。私も1度入りに行った事がありますよ。とっても良い所です。レオンハルトさんならゴブリンなんて相手にならないでしょうし良い骨休めになると思いますよ」
「そうですか、楽しみにいってきます」
「はい、お気を付けて」
エレーラさんと挨拶を交わしリッカ村に出発した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
リッカ村までの旅は至って順調だった。
途中ゴブリンやオーク、ブラックウルフなどを倒しながらだったが、時間的には午後3時半頃にリッカ村に到着した。
早速村の入口に立っていた20代半ばくらいの門番の男に声を掛ける。
「冒険者ギルドの依頼で来た、冒険者のレオンハルトとウェンディです。ゴブリンのついて詳しい話を聞きたいので村長さんの家を教えてもらいたいのですが」
「あっ! 冒険者の方か、来てくれてありがとう。早速村長の家に案内するよ」
そう言うと村の中心に向けて歩き出す。
門番の仕事は良かったのだろうか?
しばらく歩くと村でも一際大きな家の前で止まる。
見るからに村長の家だな。
門番の男はそのままズカズカと村長の家に入って行く。
「おい! アヒム爺さん! 居るか? アヒム爺さん!」
すごい大きな声を上げて村長(?)を呼び始める。
「クルトか! うるさい!! そんなデカい声で呼ばんでも聞こえとるぞ」
そう言いながら60歳を少し過ぎたくらいだろうか。痩せ気味の、爺さんが中からゆっくり歩いて現れる。
「お~、アヒム爺さん居たか。良かった。ゴブリン討伐に冒険者の人達が来てくださったぞ」
「お~、本当か? それならそうと早く言わんかい。冒険者の方々は何処におられる」
「ほれ、そこだ、今家の入口で待っておられるぞ」
門番改めクルトさんに指さされる。
おい、兄ちゃん! 子供の頃人を指さしちゃいかんって言われなかったか。
「これはこれは、こんな遠くまで足を運んでいただきありがとうございます。私はリッカ村の村長をしておりますアヒムと申します」
俺達に気付き慌てて近づいてきて頭を下げるアヒム村長さん。
「私は冒険者のレオンハルトです。それとこの娘は同じく冒険者のウェンディです。確認して下さい」
そう言って俺とウイのギルドカードを見せる。
アヒム村長がギルドカードを確認すると驚いた表情になり
「まだお若いのに既にシルバーランクになられているとは、かなり優秀なのですな」
どうやら年齢と冒険者ランクに驚いたようだ。
「いえいえ、まだまだですよ。それよりもゴブリンについて詳細を伺いたいのですが」
「おお、これは失礼した。こんな所で立ち話をする内容でも在りませんので奥で詳細を話しましょう。どうぞこちらへ」
アヒム村長についていくと奥の部屋に通される。クルトさんもついてくるみたいだ。門番の仕事はいいのだろうか?
「今から半月くらい前でしょうか。村の作物が荒らされ、家畜が襲われる事が相次いで有りまして、その時に村の若い衆が調べたところゴブリンが犯人だと分かったのです。そこで村の男衆でゴブリン狩りをする事になりまして、10人ほどでゴブリンが向かった森に行ったのですが、そこで見たのが20体を超えるゴブリンの群れだったのです。更には普通のゴブリンの1.5倍はある上位種も数体混じっていたようで、とても村のものでは対応出来ないと判断して、エルセンの冒険者ギルドに依頼をしたわけです」
内容は依頼文に在った通りのようだ。それにゴブリンの巣の場所も分かっているみたいだし、これならそんなに苦労しなくて済みそうだ。
「状況は分かりました。では今から少し、様子を見に行きたいのですが誰か案内してもらえないですか?」
「俺が案内しよう、ゴブリンの巣を見つけたメンバーの一人だしな」
俺の言葉にクルトさんが名乗りを上げてくれる。
「もうすぐ日もくれますし、向かうのは明日でもよろしいのではないですか?」
心配そうに提案してくるアヒム村長。
まぁ、それでもいいんだけど、一度この目で確認して作戦を立てたいんだよね。
「現状を確認したらすぐに戻って来ますから安心して下さい」
「そうですか……、分かりました。くれぐれもお気を付けください」
こうしてアヒム村長を説得してゴブリンの巣に向かう事になった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
リッカ村を出て1時間が過ぎようとした頃、俺達は森の中にあるゴブリン巣に到着した。
そして、ゴブリンの巣を見て固まる3人。
いや~、そりゃ驚くっしょ。なんせ森の中に家が4軒も建っているんだよ。ゴブリンの巣って言えばだいたい洞窟を利用したものだ。廃村の家を利用して住み着くやつもいるがこんな森の中に村なんて在ったのだろうか?
「クルトさん、ここのゴブリンは廃村を利用して住んでいるんですか?」
俺の言葉に
「いや、前に来た時はこんな家無かった。後ろに見える洞窟を巣にしていたはずだ」
だと思いました。
だって、前に見た事が有るはずなのにクルトさんも一緒になって驚いていたしね。
しかし、ゴブリンが家を建てるなんて。
もしかしたら変異種か何かが発生した可能性も……。
「レオン様! ゴブリン達が妙な動きをしています」
俺とクルトさんが家の事で話をしていると、洞窟の方を見ていたウイが話に割り込んでくる。
「どうした?」
「多くのゴブリン達が洞窟から手に武器を取り次々と出てきているようです。中には上位種もいます」
ウイの言葉に洞窟の方に目をやると確かに洞窟から次々とゴブリン達が手に武器を取り現れている。
【千里眼】を使い洞窟の中を覗いてみる。
…………!?
「レオン様?」
俺の驚く表情を見て不安そうにウイが聞いてくる。
「どうしたんだ?」
クルトさんもその雰囲気を感じ取ったのか不安そうに聞いてくる。
「ウイ、それにクルトさん。落ち着いて聞いてくれ。あの洞窟の中にゴブリンロードがいる」
「なっ!!」
クルトさんは何とか言葉を抑えたものの明らかに動揺している。ウイも動揺はしていないものの今まで見せた事のない堅い表情をしている。
だが、それは仕方の無い事だ。
ゴブリンロードとは本来、災害指定種と呼ばれるほどの魔物で、一度現れれば緊急討伐依頼が発動されてもおかしくないほどの強力な魔物なのだ。
実際リオン村にいた頃、村の近くに現れ、緊急討伐依頼が発動して討伐されていた。俺もその際、遠くから戦いを見ていたが、その戦う様に恐怖したのを覚えている。
しかもゴブリンどもは何やら戦闘の準備をしているみたいだ。
この時点で既に嫌な予感しかしない。
そしてこの予感は間違いなく外れないだろう。そう【直感】が教えてくれている。
「クルトさん、ウイ。今から村に戻ってこの事を村長に報告してくれ。俺はここで奴らに奇襲をかけて村に向かわせないようにする」
「そんな、レオンハルト君、無茶だ!!」
「な~に、こう見えてもシルバーランク冒険者ですよ。引き際はわきまえています」
「私も残ります!!」
俺の言葉にウイも残ると言い出す。
どうする? 最悪ウイのスピードなら逃げ切れるか。
時間もあまりないし仕方がないか。
「俺が撤退と言えば必ず撤退する事。約束できるか?」
「はい!!」
力強く返事を返してくる。
「了解だ。じゃ、クルトさんは報告の方お願いします」
「分かった。しかし、無茶はするな」
渋々そう言い残しクルトさんは村の方に駆け出して行った。
さぁ、やれるかどうか分からないけどやるしかないな。
「ウイ! 行くぞ!」
「はい!」
そして俺達はゴブリンとの戦いに向かった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
ついに日間10位になりました。まさかベストテン入りとは夢のようです。
これも皆々様におかげです。本当にありがとうございます。
これからも『ご都合能力の冒険者は自重する気は無いようです』をよろしくお願いいたします。




