第21話 解放者
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レベロ奴隷商会を出た俺とウェンディは服屋さんに来ていた。
「ウェンディ。買ってあげるから何着でも好きな服を選んでいいよ」
俺の言葉に戸惑いながら、お礼を言って服を見始める。しばらくするとウェンディは慌てて俺の所に戻って来て、
「ご主人様。あの~、こちらはすべて新品なのですが……」
「うん、分かっているよ。気にしないで選んで」
俺の言葉に目を見開いて驚いている。犬耳もピクピク反応している。可愛い。
まぁ、気持ちは分かるけど。
普通、新品を買うのは貴族や豪商など上流階級の者だけで、一般市民は中古品を買うのが当たり前で新品を買う事は殆ど無い。ましてや奴隷に新品の服を買い与えるなど聞いたことがないからな。
まぁ、俺的にはウェンディに可愛い衣装を着せたいだけなんだけどね。
「畏まりました」
そう言ってウェンディは再び服をオドオドしながら見始める。
しばらくすると、一着の地味目の上着を持ってウェンディがやって来た。
「あの~、これで……」
おずおずと服を差し出す。
はぁ、思わずため息が出てしまう。
「お金の事気にしているよね」
「あ、あの……、はい。私は奴隷ですし、今まで新品の服なんて買った事も無いですし……」
まぁ、仕方ないか。
ウェンディを連れて店員さんに話しかける。
「この娘に似合いそうな服と下着を何着か選んでもらえますか?」
「お綺麗な方ですね、喜んで選ばせていただきます。ご予算が如何程になりますか?」
店員さんウェンディを見ながらすごく嬉しそうだ。
少し考え
「そうだな、じゃあこれで」
そう言って金貨5枚カウンターに置く。その光景を見てウェンディは唖然としている。
「畏まりました。それではお客様こちらへ」
動揺するウェンディを引き連れ奥に向かう店員さん。やっぱりすごく嬉しそうだ。
そこからしばらくウェンディは店員さんの着せ替え人形になっていた。店員さん凄くテンション上がっているな。
ようやく終わって戻ってきたウェンディは疲れ果てた表情になっていた。店員さんは凄く満足そうだ。
普段着からおしゃれ着まで7着の服と、同じく5着ほどの下着を包んで貰い、服屋を出た。
着せ替え人形の時にチラチラ着ている服を見たが、中々素晴らしい見立てだった。今後、色々着せ替えて俺も楽しもう。
「あの……、あんなにも沢山買っていただいてよろしかったのでしょうか?」
「ん? 気にしなくていいよ、あれくらいの甲斐性はあるつもりだからね。後は生活必需品を買って宿屋に戻ろう」
そう言って道具屋に向かう。
道具屋では、ウェンディ用の櫛や歯ブラシ、洗面桶、水筒、毛布、タオルなど細々したものを購入して宿屋に戻った。
宿屋ではマイリーさんにウェンディを紹介して、部屋をツインの部屋に替えて貰い追加分の料金を払った。その後やや遅めの昼食をとる為食堂に移動した。
俺が席に着くとウェンディは俺の後ろに立とうとする。
「ん? 何してるの?」
「いえ、お邪魔でしたでしょうか? それでしたらご主人様のお食事が終わるまでお部屋の方でお待ちしておきますが」
この娘なに言ってるの?
「いいよ、そんなことしなくても。それよりも早く席に座って」
「あの~席とは?」
はい? 席って言ったら席っしょ?
「いいから、そこに座って」そう言って目の前の席を指差す。
「よろしいのですか?」
「うん、もちろんだよ。だから早く座ってね」
「畏まりました」
ようやく戸惑いながらも座ってくれたよ。でもなんでだ? 奴隷ってそういうものなのか?
『はい、主人と奴隷が同じテーブルに着いて食事をすることは滅多にありません』
やっぱりそうなのね。まぁ、俺にはそんな常識関係無いけどね。
むしろ可愛い娘と一緒のテーブルで食事がしたい。
「俺はウェンディを奴隷として扱う気は無いから。まず食事は一緒のテーブルで取ること。それに好きなもの注文して良いからね。後は追々決めていこう」
これでようやく落ち着いて食事が取れる。
その後まだ慣れていない為か緊張しっぱなしのウェンディは、中々注文するものを選ぶ事が出来ず、最終的にはパンとスープだけを注文しようとしたので、今日は俺と同じ物食べるように言ってこの場は落ち着いた。
食事が終わった後は部屋に戻る。いよいよ呪いの解呪だ。
部屋に戻った俺たちは、二つ並んだベッドに座る。
ここでもウェンディは、座るように言ったら床に座ろうとしたため、慌てて向かいのベッドに座るように言った。
なんか奴隷ってこんな感じなんだな。おそらく教育期間の1年でこういう教育をするのだろう。意識改革が必要だな。
さてと、まずはちゃんと自己紹介をするか。
「まずはちゃんと自己紹介するね。俺の名前はレオンハルトだ。親しい人にはレオンと呼ばれている。ウェンディもそう呼んで欲しい」
「畏まりました。レオン様」
「ん~、まぁ、いいや。で、冒険者をやっている。今はシルバーランクだ。これからよろしく」
「はい、よろしくお願いいたします。レオン様」
ウェンディのあまりに丁寧な話し方に苦笑いしつつ
「うん。後、ウェンディ。君をウイって愛称で呼ぶことにするから覚えといてね」
俺の言葉に驚いた表情で返事をしないウェンディ改ウイさん
「どうかした。嫌だったかな?」
「あっ! 違うんです、全然嫌じゃないです。ただ驚いてしまって」
「あれ? 驚く様なこと言ったかな?」
「いえいえ、違うんです。実はウイって呼び方、私の母と同じ呼び方だったので驚いてしまって」
「そ~だったんだ。もしかしてウイって呼び方お母さん以外に呼ばれるの嫌だった?」
「いえ、そんな事無いです。すごく嬉しいです。ウイと呼んでください」
「分かった。じゃあ、そう呼ばせてもらうよ。ウイ」
話し方が少し柔らかくなったかな。
さてと、取り敢えず、もう一度ウイを鑑定してみるか。
【名前】ウェンディ 【年齢】15歳
【種族】狼人族【職種】奴隷(所有:レオンハルト)
【状態】封魔の呪い:ステータス低下及びスキル封印
【レベル】3[23] (D[B+])
【HP】14[318]/14[318]
【MP】44[716]/44[716]
【筋力】42[339] (C[A])
【耐久】14[203] (E[C])
【俊敏】43[342] (C[A])
【器用】42[341] (C[A])
【知力】28[271] (D[B])
【魔力】56[407] (B[S])
【幸運】28[270] (D[B])
【装備】奴隷のドレス 革サンダル
あれ? ステータスの詳細が見られる様になったぞ。
『ウェンディがマスターの奴隷になった事で、詳細情報が見られるようになりました』
ほぉ、なるほど、身内はちゃんとステータス見られるんだ。これはありがたい。
では、解呪を始めるかな。と、その前に。
「でだ、これから俺と一緒に行動してもらう事になるんだけど、俺はちょっと変わった能力を持っていて不思議に思う事があるかも知れないが、そのことは内密にしてほしい」
まぁ、自重する気は無いけど、能力が知れて利用されるのは嫌だから、多少予防線を張っておくに越したことはないからね。
「あの~、もちろんレオン様の秘密は厳守いたしますが……、それはどういうことなのでしょうか?」
まぁ、そうなるよね。
「言葉で説明するのも何だし、今から一つ見せるよ」
「はぁ」
なんか微妙な反応だけど、気にせず行こう。
まずは【解放者】の取得から始めよう。
『【解放者】を取得しますか?』
もちろん『YES!!』だ。
『【解放者】を取得しました』
うん、あっさり完了。続いてウイの呪いの解呪だな。
で、【ロラ】先生、使い方を教えて下さい。
『了解しました。
【解放者】を使用するには。まず対象者に触れ、『体内サーチ』を行い、状態異常を確認します。確認出来た状態異常の中から消去したい状態異常を指定していただければ私が自動で状態異常の消去を行います』
さすがは【ロラ】先生だ、いつでも安心簡単仕様だ。
「あの~、レオン様?」
おっと、ウイの事を放置状態にしていたよ。
「ごめんごめん、ちょっと考え事してた。じゃあ、ウイ手を出して」
「は、はい」
何が起こるか分からず戸惑いながら手を出してくる。
ウイの手を握る。白くて可愛い手だ。思わずスリスリしたくなってしまう。
「あの~レオン様?」
あまりに触り心地が良かったので思わずニギニギし続けてしまった。
「大丈夫、今集中しているからちょっと待っていて」
「お邪魔をしてしまって、すみません」
いや、謝らないで、俺がニギニギしたかっただけなんだから。
では、ちゃんとやりますか。
ウイの手を握り『体内サーチ』を掛ける。
『封魔の呪いを確認しました。解呪を行いますか?』
相変わらず簡単だな。
では、【ロラ】さんやっちゃって下さい。
『了解致しました』
待つこと数秒、ウイの身体が発光を始める。
「な、な、なにが」
動揺しまくるウイ。犬耳も忙しなく動いている。うん、やっぱり可愛い。触りたい。
「そのまま動かないで」
俺の言葉に頷き、動かないように我慢している。
やがてウイの発光が収まる。
『封魔の呪いの解呪が完了しました』
よし、完了だ。
ウイのスキル欄を見ると、すべてのスキルの封印が消えていた。
「じゃあ、ウイ、今から簡単な精霊魔法を使ってみて」
「えっ、でもスキルは使えないですよ」
「いいから試しに使ってみて」
「分かりました」と戸惑いながら精霊魔法を使おうとして
「あれ? レオン様、何故私が精霊魔法スキルを持っているって知っているのですか?」
そういえばルパートさんからスキル無しって聞いていた事になっていたんだった。
「あ~、それも追々話していくよ。それよりも精霊魔法使ってみて」
「はぁ……、分かりました」
ウイが意識を手にひらに集中し始めると、やがて手のひらの上に1匹のトンボのような羽根の生えた5cmほどの小さな少女が現れる。
「えっ! 何で? どうして?」
うん、問題ないようだな。
戸惑うウイを見ながら満足する俺であった。
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