第19話 奴隷商会
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俺は今、この街でも指折りの建物の前に立っている。
レベロ奴隷商会と書かれた看板が、ここが何かを示してした。
鬼退治をした翌日、俺は朝から早速、昨日城門で見かけたあの娘を求めてレベロ奴隷商会まで訪れていた。
石造りの3階建ての立派な建物だ。
「まるで貴族の館だな」
思わずその建物を見て独りつぶやく。
さすがにちょっと二の足を踏んでしまうな。
しかしここで惚けていてもかえって不審者と思われてしまう。ここは当たって砕けろの精神で行くしかない。
勇気を振り絞って建物に入っていく。鬼退治の方が精神的に楽だな。
「いらっしゃいませ」
中に入ると20代半ばと思われる金髪碧眼の美男子が俺を出迎える。
「本日はどのような奴隷をご所望でしょうか?」
おお! いきなりだな。まぁ、奴隷商館なのだから普通奴隷を買いに来ているわけだし、この対応が当たり前か。
さてと、どうするか。どうせ買うならあまり足元を見られない買い方をしたい。素直にあの娘を指定するのはよろしくないな。ならば、
「若くて美しい女性を探しています。色々見て判断したいのですがいいですか?」
「問題ございません。それでは、先ずはご自身で一通りご覧になられますか? もちろん、条件に合った奴隷を見繕ってご紹介する事も出来ますが・・」
「それではまず一通り見せて下さい」
よし、これであの娘を探せる。
「かしこまりました。私ルパートが今からご案内させていただくのですがその前にお客様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「あっ! はい、レオンハルトといいます」
「ありがとうございます。それではレオンハルト様、こちらでございます」
ルパートさんについて、通路を歩いて行くと、3つ目の部屋の前で止まった。
「まずこちらが、容姿が端麗な10代の人族女性の部屋でございます」
そう言うと、ルパートさんが厳かに扉を開ける。
おお!! 思わず声が出そうになる。さすがウインザー王国でも1・2を争うレベロ商会だ。凄い美女ぞろいだ。それに全員高そうなナイトドレスを着てとても奴隷に見えない。おそらく扱いが凄くいいのだろう。高級奴隷の特権だろうな。
これだけ、美しい奴隷達がいると資金に余裕もあるのだしあの娘以外にも奴隷を買うのもアリかなと思ってしまうのは男の性だね。一応今のところは買わないけど。
しかし、お目当てのあの娘はいない。て、当たり前か、人族の奴隷部屋って言っていたし。
折角なので一通り鑑定していくが、能力や、スキルで俺の希望に沿う者はいなかった。
しかし、一人も選ばない訳にもいかないので、比較的あの娘に雰囲気が似ている娘2人を選び、後で面談したいと伝え部屋を出る。
続いて隣の部屋に移動する。
「こちらは、亜人女性の部屋でございます」
お! いよいよか。
中に入ると、猫耳や兎耳、更にはエルフもいたが、犬耳は一人も居なかった。もちろんあの娘も居ない。
あれ、条件が違ったかな?
取りあえず一応全員を鑑定するが先ほどと同じで能力やスキルでこれっていう者はいなかった。こちらも一応2人選び部屋を出る。
「では次の部屋に参りましょう。次の部屋がレオンハルト様の条件に合う最後の奴隷部屋でございます」
そして、隣の部屋に移動する。
「こちらも、亜人女性の部屋でございます」
そう言うと、扉を開る。
いた!! いたよ、いた、いた! 城門で見かけたあの娘だ。
空色の髪に狼を思わせる耳、子供から大人へ変わりゆく可愛らしさと美しさを併せ持った顔立ち。スタイルも細身なのに出るところは出ている。まさにどストライクだ。いや~ここにいてよかった。売れてなくてよかった。
ちなみにどうやらこの部屋は犬耳や狐耳そしてドワーフの部屋らしい。
種族ごとで分けていたようだ。
では、気になるあの娘の鑑定をちゃんとしてみよう。
【名前】 ウェンディ 【年齢】 15歳
【種族】 狼人族
【職種】 奴隷(所有:レべロ商会)
【レベル】3/23『封印』(D/B+『封印』)
【状態】 封魔の呪い:ステータス低下及びスキル封印
うん、封印されているとはいえ、本来の素質ランクがB+というのは冒険者や衛兵含めて初めて見た。
種族のエレメンタルハーフっていうのが関係しているのかな?
『おそらくそうでしょう。
エレメンタルハーフとは人族系種族と高位精霊との間に生まれた子を指し、例外なく高い能力を持って生まれてくると言われています』
なるほど、やっぱり掘り出し物だな。
ところ【ロラ】この呪いを解呪ずるスキルは在るか?
『はい、御座います。
特殊スキルの【解放者】というスキルがそれに当たります。このスキルはこの世に存在する全ての状態異常、封印、呪い、契約魔法、罠、鍵など解除することが出来ます』
お誂え向きのスキルだな。
ちなみのウェンディさんのスキルがどうかな?
【上位スキル】
:二刀流 レベル 2(封印)
精霊魔法 レベル 3(封印)
精霊視 レベル 5(封印)
【通常スキル】
:剣術 レベル 3(封印)
短剣術 レベル 2(封印)
弓術 レベル 2(封印)
危機感知 レベル 1(封印)
気配感知 レベル 3(封印)
暗視 レベル 3(封印)
隠密 レベル 3(封印)
採取 レベル 3(封印)
料理 レベル 3(封印)
スキルも内容、数共に凄く充実している。
【上位スキル】を3つも持っている。今まで冒険者ギルドで多くの冒険者を見たが、【上位スキル】を3つ以上持っている者は数える程しか居なかった。
この娘はやっぱり当たりだな。
ところで【精霊魔法】って何ぞや? スキル創造の時に出した一覧になかったぞ。
『【精霊魔法】はエルフや半精霊が使う特殊なスキルである事と、【七元魔法】と内容が類似している為、除外致しました。取得は可能ですが取得致しますか?』
その前に【七元魔法】と何が違うの?
『【七元魔法】は己の魔力を自然現象に転嫁して放つのに対して【精霊魔法】は精霊の力を借りて魔法を放ちます。特徴としては【七元魔法】は魔力値や込めたMPにより威力が変化するのに対し【精霊魔法】は、精霊との親和性の度合いにより威力が変わります。また【精霊魔法】は精霊の力を借りる為MP消費は【七元魔法】比べかなり少なく済みます』
正直MPが多い俺にとってあまりメリットは無いな。うん、今回保留で。
「レオンハルト様?」
「あっ! いえいえ、大丈夫です。ではあの娘とあの娘をお願いします」
お~っと! ステータスチェックに集中し過ぎていたようだ。取り敢えずダミーの娘と共に選んで部屋を出た。
それでは次は、個人面談だ。
部屋を移動して通された部屋はかなり大きな部屋で、これまた大きなソファーと、ガラス造りのテーブルがあり、テーブルの上には既に紅茶が用意されていた。
更には部屋を高級そうな調度品がセンスよく飾られており落ち着いた雰囲気を醸し出している。
「では今からレオンハルト様が選ばれた奴隷を1人ずつ連れてまいります」
そう言い部屋を退出すると、直ぐに1人の人間の女性を連れて戻って来た。
その後、ルパートさんは連れてきた奴隷の名前や特徴、性格、スキルを説明していく。
名前やスキルは説明されなくても俺には見えるが、スキルを正確に伝えてくるあたり優良店なのだろう。
俺は正直買う気は無いので聞くふりだけして適当に聞き流していた。
いくつか質問のやり取りをして如何にもこの娘にも興味が在るように話はしたが。
しかし最後に値段を伝えられた時は流石にちょっとビビった。なんせいきなり80万コルドって言われたからね。
一般的な奴隷の相場は女性20万~30万、男性は10万~20万と言われている。もちろん年齢や容姿、能力によって天井知らずに上がると聞いていたが、容姿だけでここまで高額になるとはさすがに驚きだ。
今回は表情に出さずに何とか済んだが、流石に舐められるわけには行かないので、これからはすべてこれくらいの金額は覚悟して聞いたほうが良さそうだ。
その後も次々と選んだ女の娘が連れて来られて1人ずつ面談をした。
ちなみに金額は最初に連れて来た娘が一番高かったようでその後に連れて来た娘達は大体70万~60万といったところだった。それでも充分高いけどな。
そして最後にいよいよメインイベント、ウェンディさんの登場です。
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