第14話 盗賊退治
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移動を開始して約30分、敵性反応の場所まで到着した。
移動途中、【千里眼】で確認したところ、8人組の男が馬車を囲むように歩いていた。【千里眼】越しでは鑑定が出来ないので詳細は分からなかったが、見た感じおそらく盗賊で間違いなさそうだ。
視認出来る場所まで来たので早速鑑定を行うと、予想通り職種欄が盗賊になっており、街の人には無かった犯罪歴欄が増えている。
犯罪歴にはほぼ全員に殺人、強盗の表記があり、中には強姦まである者もいた。
さてと、どうするか……
【ロラ】、盗賊の扱いってどうなっていた?
『盗賊には常に討伐懸賞金が掛けられています。生死は不問ですが、生きたまま衛兵に引き渡した場合、奴隷としての売却扱いとなり1人につき金貨3枚が支払われます。殺害した場合は右手、もしくは右手がない場合は左手を衛兵に討伐証明として渡すと鑑定後1人につき5,000コルドの報奨金が支払われます。また、懸賞金が懸かる盗賊が含まれていた場合は別途懸賞金が支払われます』
なるほど、後、盗賊による盗品の扱いはどうなる?
『盗賊の盗品の所有権は、盗賊を討伐した者に移行されます』
ほぉ、じゃ持ち主に返す必要はないんだな。
『はい、特に持ち主に返す必要はございません。また、盗賊を討伐したとしても、本人が希望しない限り誰が討伐したか公表されることは在りません。これは盗賊の報復行動を防ぐ為の処置になります』
なるほど、盗賊を討伐すれば報奨金以外にも戦利品が貰えるわけだ。
これは美味しい。臨時収入&魔法の実践練習に丁度良さそうだ。やるしかないな。
目標は盗賊の拠点を見つけて全員を生きたまま捕縛する事。そのために取り敢えずあいつらを泳がせて拠点を見つける。その後戦力の確認した上で襲撃って感じかな。
今いる8人のレベルは10~18、素質ランクも全員Eだしこの程度の連中なら何十人いようと何とでもなるが、まぁ、中にはレベルが高いのも混ざっている可能性も在るから油断は禁物だけどな。
盗賊の後を尾行する事1時間、途中から森に入り、馬車が1台ようやく通れる道を進んだ先に如何にもと言った感じの洞窟が現れる。洞窟の前には2人の男が見張りに立っていた。
尾行してきた盗賊はそのまま馬車ごと洞窟の中に入って行った。
間違いなくここが奴らの塒だろう。早速出来るだけ近づいて【マップ】と【千里眼】で盗賊の数を調べる。
塒にいる盗賊の数は見張りと合わせて24人いる。これだけとは限らないので周辺の検索を合わせて行うと、ここから1時間半ほどの距離に5~10人ほどの盗賊反応がこちら方面に向かい移動していた。
たぶんこいつらの仲間だろうな。
他にもいるかもしれないから総勢30~40といった規模の盗賊団だろうか?
ちょっと多いかな。どうせなら全員生け捕りにしたいがこれだけ多いと殺してしまう可能性も出てくる。ここは奴らが油断する夜にこっそり近づいて出来るだけ全員同時に『スリープ』の魔法で眠らせて、一網打尽にするのが良策かな。
しかしそれまでずっとここに隠れ続けるのも面倒だな。
あっ! そうだ、ここに【マーカー】設定して、宿屋で監視をすれば見つかる事もない、何より楽でいい。そうと決まれば早速ここに【マーカー】を設定して、俺自身は【転移魔法】を使ってエルセンに戻る事にした。
宿屋に戻ってからは【マーカー】で盗賊の監視をしていたのだが、この【マーカー】機能の性能にマジ驚きっぱなしだ。
なにがすごいかと言うと、【マーカー】を設定した地点から自分で直接見ているかのごとく周辺状況を見る事が出来、更にはそのまま【マップ】系スキルが問題なく使用する事が出来るのだ。
つまり、自分があの場に残って【マップ】、【探知術】、【千里眼】などを使って塒を監視しているのと全く同じ事が宿屋でゴロゴロしながら出来るのだ。
このため夜に向けて充分に休憩を取ることが出来た。そして夕食を取り午後9時過ぎに【転移魔法】で盗賊の塒に移動した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
さてと、どうするか。
盗賊の数は全部で34人。配置も【マーカー】で宿屋を出る前に確認済みだ。見張りの盗賊以外はほぼ酒を飲んで酔っ払い状態。おそらく今日の成果が上々で気分良く祝杯を上げていたのだろう。
これならば特に寝静まるのを待たなくても良さそうだ。
作戦は至極簡単。全員を『スリープ』で眠らせ、後は【七元魔法(土)】で縛り檻に監禁、そのまま【転移魔法】でエルセンまで飛び、衛兵に突き出せば完了だ。
単純明快、素晴らしい作戦だと思う。実際はもう少し段階別の作戦が在るんだけどね。
では、早速作戦開始と行きましょう。
先ずは2人の見張りの盗賊を標的に同時に『スリープ』を掛ける。見張りの2人はまるで操り人形の糸が切れたようにその場で崩れ去る。
【マップ】で塒の中の盗賊に動きが無いか確認したが、全く気付いた様子はない。
よしよし、第一段階は問題なくクリアーだ。
すぐに寝ている盗賊に近づき手足を『メタルマナクル』で拘束する。続いて、洞窟のすぐそばに『メタルケージ』で10m四方の檻を創り、2人をぶち込んでおく。
続いて作戦の第二段階に移る。
先ずは1人や2人の少数で個室にいる者や既に酔いつぶれている者から眠らせて行く。
これも滞りなく完了する。
面白いほど順調に状況が推移していくな。思わず悪い笑みがこぼれてしまう。これで第二段階もクリアー。いよいよメインの第三段階だ。
さて、第三段階だが、大広間にいる残りの盗賊を一網打尽に眠らせる事になる。
数は残り18人だ。試した事は無いがたぶん問題なく同時に眠らせられるだろう。
では、作戦決行だ。
先ずは【マップ】を使い大広間にいる盗賊の位置を確認していく。その後、全員同時に『スリープ』の魔法を掛けて行く。
これは思ったよりも中々難しいな。さすがに人数は18人もいるとバランス良く魔法を掛けようとするとかなりの集中力がいる。
額から玉のような汗を掻きながら必死に魔法を制御していく。
約5分後、大広間にいる者全員が死んだように眠っていた。
よっしゃ! 成功だ。これでほぼ作戦成功だ。後は全員を拘束して檻にぶち込んで、最後に戦利品をいただいて終了だ。
てな、訳で俺はせっせと1人1人『メタルマナクル』で手足を縛り、懐から金品を回収して外の檻まで運んでは檻にぶち込んでいく。全員を檻に入れ終わったのは作戦を開始してから30分ほどたったころだ。まさに早業! 思わず自画自賛してしまう。
そして本日のメインイベント、戦利品と対面だ。
大広間を抜けた奥に10m四方の部屋がある。そこが倉庫なのは千里眼で確認済みだ。早速ニマニマしながら倉庫の扉を開いた。
中を覗くと、武器や防具が雑然と置かれているのが目に付く。
全部新品だな。たぶん武器商人の馬車でも襲撃したのだろう。
他にも大小様々な箱が置いてあり中を見ると貴金属や宝石、金貨が纏めて置いてあった。中には希少な魔道具まで何点か混ざっていた。
思った以上の成果だ。
ぱっと見ただけでも武器・防具で50点程、宝石・貴金属で宝箱半分程(おそらく50万コルド以上の価値はありそうだ)、他にもポーション多数、各種道具&魔道具がかなりの量あった。
現金も盗賊から回収したものと合わせると、金貨83枚、銀貨571枚、大銅貨139枚、銅貨757枚(【神倉】にいれてカウントしたので枚数は正確だ)と、すごい金額になった。
思った以上の成果に満足して盗賊の塒を後にする。
洞窟から出ると、檻の中で盗賊達が気持ち良さそうに眠っている。念の為もう一度『スリープ』を掛けなおしてから【転移魔法】で一気にエルセンの城門入口まで飛んだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
突然目の前に現れた俺と檻に驚く門兵。しばらく固まっていたが俺が近づいて行くと我を取り戻して、門兵から声を掛けて来た。
「おい! お前、何者だ? そこで止まれ」
どうやら警戒されてしまったらしい。まぁ、当たり前か。こんな夜更けにでっかい檻と一緒に突然転移してきたら誰だって警戒するよな。あっ! 剣に手を掛けている。
「あっ! 脅かせてすみません。俺は冒険者をしているレオンハルトと言います。森で魔物を狩って帰る途中、盗賊を見つけたので、捕らえて連行してきました」
すごい剣幕だったので、慌てて答える。
「本当か? ギルドカードを見せろ」
すぐにギルドカードを提示する。
「ギルドカードは本物だな。盗賊を確認する」
そう言うと門兵は檻に近づき確認を始める。
俺が初めてエルセンに来た時にも使った水晶を使い檻の外からでも確認出来る者を数人鑑定していく。鑑定が進んで行くにしたがい門兵の表情は疑いから確信に変わる。もう一人の門兵に一言いうとその言われた門兵は走って何処かに行ってしまった。
残った門兵は俺に近づいてきて
「疑って悪かった。これだけの盗賊をよく捕らえてくれた。感謝する。もう少し詳しく話を聞きたいので屯所の方に来てくれ」
「分かりました」
そう話しているうちにさっき走って行った門兵が他にも何人かの兵士を連れて戻って来た。
盗賊達を全員鑑定するので檻を空けて欲しいと頼まれ、その場で檻に入口を造る。後は兵士達に任せて俺と門兵は屯所に向けて移動した。
屯所に移動して勧められるままに椅子に座ると早速説明を求められる。
「森で魔物を狩って帰ろうとしたら、怪しげな集団が森に向けて荷車を引いて歩いているのを発見しました。
もしやと思いその後を追跡した結果、盗賊の塒を発見。盗賊が油断するまで近くで監視して、酒を飲んで油断していたところを襲撃と言うか『スリープ』で片っ端から眠らせて捕縛して今に至ります」
俺の簡単な説明に唖然とした表情をする門兵さん。
俺が声をもう一度掛けると。
「あぁ、すまん、少し驚いただけだ。しかしお前1人で無茶なことするな。もし『スリープ』がレジストされていたらお前、命は無かったぞ」
どうやら俺の無茶に驚いていたらしい。
「いやぁ、『スリープ』には少々自信が有ったので、でも確かに34人もいたのでかなり無謀な事をしたなって今は反省しています」
少しあきれ顔になりながら
「まぁ、お前の命だ。好きにすれば良いが、命は1つだ、あんまり無茶はしないようにな」
「ありがとうございます、さすがに俺も死にたくないので今後は気を付けます」
俺の言葉に少しは納得したのかそれ以上この件に関しては何も言わなくなった。
「でだ、報奨金の件だが、明日の昼過ぎ以降にもう一度来てくれないか? これだけの盗賊集団だ、賞金が懸けられているやつも混ざっていると思うからすぐに金額が確定出来んのだ。明日の午後には用意出来ているから昼以降に来てくれ。俺の名前はルッツだ。俺宛に来てもらえればいいから」
了解の意思を伝え今日は帰る事にした。帰る前にルッツさんに頼まれ、一度屯所の牢屋に赴き盗賊全員の手枷足枷を解除して宿屋に戻った。
しかし今日は疲れた、今日みたいな日は温泉に入ってから寝たいよな。無いものは仕方ないけど。さあ今日はもう遅いし『クリーン』の魔法で身体をキレイにしてさっさと寝よ。
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