15.まだ寝られない
2階の自室へ戻りすぐにシャワーを浴びる。汗や臭いを洗い流しさっぱりして寝間着を着ると、とてつもない疲労が襲ってきた。すぐにでもベッドへ飛び込みたいところをぐっと堪え、リーナは椅子に腰掛け机に向かった。
足下に置いてある古びた鞄から使い込んだノートを取り出して開く。一番新しいページには3人の特徴が書かれている。
ルーファスさん 男性 ルファイアス=ゼルバイダ
20代から30代くらい 灰色(白髪?) 琥珀色の瞳 前髪長い 左の目の下に傷 首や腕にも古傷 腕に刺青 中肉中背
命の恩人 笑うとかわいい
セーラムさん 女性 セーラム=ウォルフ
40代くらい 赤毛 緑の瞳 左目に眼帯 少しつり上がった目
煙管 美人 細いけどスタイル抜群 羨ましい
ゼオさん 男性 ゼオ=ノートルド
40代くらい 毛なし 髭は茶色 焦げ茶色の瞳
身体も声も大きい 料理上手 乾パン最高!
その下に今日出会った2人の特徴を書き付けた。
クリスさん 男性 クリス=トレイナー
10代から20代くらい 長い金髪 灰青色の瞳 顔も声も中性的 細い
顔は綺麗
シャノンさん 女性 シャノン=ブライト
20代くらい 短い金髪 青い瞳 小麦色の肌
真面目 表情があまり変わらない
頻繁に顔を合わせる人の性別や特徴や印象をノートに書くことはリーナにとって何よりも大事なことだ。毎日のように顔を合わせていればわかるようにはなるが、それまではこのノートを何度も手に取っては確認して覚えるようにしている。幸いここの人たちは特徴的なので覚えやすいが、それでもノートに書き留めるのは、長年の習慣として身に染みついているからだ。
リーナはいつものように目を通してからノートを閉じる。なぜか、ふとルファイアスのことを思い浮かべた。
みんながルーファスさんみたいにわかりやすければ楽なのに。
名前こそ言いにくいがルファイアスだけはすぐに覚えることができた。この店で再会をしたとき、すぐにあの時のあの恩人だとわかったのは、リーナにとっては珍しい、いや初めてのことだったかもしれない。
そうだ。確か、あの時に作ったはず――。
不意に思い立ったリーナは鞄の中を漁る。森を出る朝、数枚作った術符に目当てのものを見つけ、それを手にして部屋を出た。




