7 年に一度の宴Ⅳ
停電が起きる直前、深矢は海斗とともに会場の隅にいた。
誰かと話そうにも知り合いはいないに等しく、人混みに入れば視線が痛い。だから輪から外れて隅で大人しくしているのが分相応だった。
招待者の大学長には挨拶しなければならないと思っていたが、彼の周囲の人が途切れることがないため、ただそれを遠巻きに眺めていた。
「海斗。五代幹部のそれぞれの名前、知ってるか?」
深矢は隣で同じように会場を観察する海斗に問いかけた。
「いいや。組織の重役のプロフィールは公開されてないんだよ。名前すら知らない構成員も多いはずだ」
そう答える海斗はどこか落ち着きがない。
「でも、幹部に就く前は名前があったんだよな?」
「そうだな」
「ということは、大学長の名前を知る人はまだ多いのかもな。他の重役に比べて若いし」
大学長と顔を合わせたことは二回ある。二回も召集された査問会で見た五代幹部の中、大学長は比較的若い方だった。
「……深矢お前、もしかして大学長を疑ってるのか?」
海斗が驚いた様子で深矢を見る。
「『権力者』って言葉が一番似合うだろ?」
「まぁ、確かにな」
そう言って、海斗はまた視線を戻す。
少し落ち着かないように。
耐えかねて、深矢は海斗の顔を覗き込んだ。
「さっきから何を気にしてるんだ?」
「知らない方がいい」
「何だそれ」
それから海斗の視線を追いかけるように、その先にあるものを確かめる。
海斗が見ているのは――ボーイ?
正確には、ボーイとして会場内に散らばっている青嶋学園の学生だ。
すると観念したように、海斗は首を振った。
「あいつらはバイトしに来てるんじゃない。青嶋のフィールドワークで、何も起……」
その瞬間だった。
フッと、張り詰めた糸が切られたように、会場の照明が落ちた。




