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スナイプ・ハント  作者: 柚希 ハル
決別編
50/74

50 駆け引きⅡ

 


 不意に海斗が空を見上げ、怪訝な顔をした。

「こりゃ三十分後には雨だな」

 深矢と茜もつられて空を見上げた。

 確かに雲がかってはいるが、雨雲ほど厚い雲ではない。


「ついに天気予報までできるようになったのか」

「こんなの雲の様子と風向きが分かれば誰でもできる」

「結構降る?」

「おそらく」


 戻りはタクシーだな、と海斗は呟いて店の扉を開けた。

 カランカラン、とドアベルが静かな店内に鳴り響き、カウンター席に座る団長がこちらを向いた。


「やぁ、早かったね!」

「どんな『急ぎの』用事ですか」

 予想はついていたが、団長に焦った様子はない。

「君たちが今きっと欲しくて堪らないものが届いたんだよ。早く渡さないとと思ってね!」


 もったいぶった様子で、団長はトランプのように三枚の封筒を広げてみせた。

 その封筒には見覚えのある印があった。長い嘴と足を持った鳥が翼を広げた部分に、三文字のローマ字が並んでいる。


「SIGの印……?」


 海斗が目を凝らして首を傾げたのを見て、団長はカウンターの上にそれを置いた。

 深矢はすぐにそれを手に取り、中身を開いた。そこには封筒と同じ印の入った薄い紙が入っていた。


「辞令だよ」


 手に取るが早く、室内の湿度で紙はみるみるうちに溶けていく。蒸発紙だ。

 残ったのは八桁の数字――組織の構成員を示すIDだった。


「さあ、君たちは晴れて今日から梟の正式なメンバーだよ。おめでとう!」


 深矢達がその内容を理解した途端、団長の激励と共にパン!と甲高い音が鳴り響いた。見ると、団長が満面の笑みで両手一杯にクラッカーを天に掲げていた。


「……何とも言えないタイミングですね」

 降ってきたカラフルなテープを払いながら呟く。


 確かに、最終試験と言われた任務は終わり、深矢の謹慎期間も終了したため、表向きはキリがいいだろう。しかしまだ全てが終わったわけではない――拝島が残っている。


「けど、これで君たちには一つ権限が許される」

「SIGのデータベースへのアクセス権……」

 茜がポツリと呟いた。それに団長がウインクする。

「どうだい?喉から手が出るほど欲しかっただろう?」


 ハッと顔を上げ、視線を交わした深矢と海斗の表情は、嬉々としたものだった。


 これで拝島の情報が調べられる。あいつの口を割ることができる……!


 海斗の顔にはそうはっきりと書かれていた。

 そして深矢も内心は同じくらいにしめた、と思ったのだった。


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