第三クールはスライム祭り!③
容姿が似てるから、侍と薙刀美少女は兄妹なんだろう。アライン王子にも、あれくらいの優しさは見せてやって欲しいところだな。
…まあ、余計なお世話だけど。
ぼんやり考えていたら、スライム・ロードのモニターから、魔族魔術師の物騒なセリフが聞こえてきた。
「はい、時間切れ!スライム集まる一方だから、殲滅するぜ」
言うと同時に巻き起こる、黒い炎。それが、嵐のようにスライム達を蹂躙していく。
「光栄に思えよ?ヘルストームはなかなか出さない魔法だからな!」
ヘルストーム…!
闇魔法でも上位の魔法じゃないか!
「ああ~~~!皆ぁ~~!!」
ゼロが悲痛な叫びをあげる。
もちろんスライム達は瞬殺だ。
「…何も第一ステージの、可愛いスライム達に使わなくても…。オーバーキルにもほどがあるよ…」
ゼロがガックリと肩を落とす。
モニターの向こうで、挑戦者達も肩を落としていた。自分達が必死で追いかけてた相手を瞬殺されれば、ガックリもくるよな…。
「もー、アイカちゃん、そんな恨みがましい目で見ないでよ。魔力もだけど、体力の温存も大事だよ?」
確かにそうだ。実際このあとすぐに、スーパースライムが待ち受けている。すっかり静かになってしまった草原で、息を整えた4人はまた歩き始めた。
「あーーーっと!プリンス・ロードの挑戦者、落とし穴に落ちましたぁ~!!」
またも、キーツの突然のアナウンスが響き渡った。
えっ!?まだ、どんな挑戦者だったかも把握してないぞ!?
慌ててプリンス・ロードに視線を移す。
あっ…こっちもちょっと面白いパーティーだ。すでに一人欠けてるけど。
「てめっ…自分だけ逃げやがって…!」
落とし穴から、戦士が恨み事を言ってる相手は、ヤンチャそうな猫の獣人だった。まだ少年と言った年齢だろうが、装備から見るに、多分格闘家だな。
猫の獣人で格闘家なら、素早い身のこなしで落とし穴を回避できたのも頷ける。
「おいらのせいじゃないもん!タッセルがニブチンなんじゃん!」
べーっと舌を出している。二人のお姉さんくらいの年の魔術師が、にっこりおっとりと声をかける。
「もう、ケンカしないの。雷おとしちゃうよ?」
二人がビクッとして黙ったところを見ると、何度か落とされた事があるんだろう。
「プリンス・ロード挑戦者のタッセルさん、残念ながらリタイアです!右隅にあるワープゾーンからお帰り下さい。また挑戦して下さいね~!」
キーツのアナウンスに、戦士の少年はしょんぼりと部屋の隅に歩いていった。
いつも思うけど、落とし穴系のトラップにかかった挑戦者の哀愁、ハンパないな…。
「…さっ、先に進もうぜー!」
お構いなしの猫少年。
跳ねるように先に進んでいく。お姉さんは苦笑しながら、あとに続いた。
「今回はどのダンジョンの挑戦者も、結構面白いパーティーだな」
「うん!プリンセス・ロードも今日は面白いよ~!ナギ達が頑張ってるよ!」
はあ!?
あっ!マジで、見慣れた4人のチビ共が、モニターの向こうで、おっかなびっくり歩いている。
「えっ!?どういう事??え?なんで?」
ゼロも驚きまくっている。
ていうか、ゼロも知らなかったのか!
「ちょっとぉ、カフェの仕事はどうなってんのよ。今日はスライム・ロードもオープンで、お客さんも多いんじゃないの?」
「………シルキーちゃん達が、面白そうだからいいよ、って言ったんだって…。なんとかカフェも大丈夫だって」
ゼロは通信機を片手に、呆然としている。
全くチビ達もシルキーも、おイタが過ぎるんじゃないか?
半ば呆れながら、じっくりとモニターを見てみれば、4人はいかにもレンタルの装備を身につけ、いかにも初々しい冒険者に見える。
へえ、ナギが盗賊の装備なのか。ちょっと意外だ。まあ、ダンジョンにくるまでは、スリで生計たててたみたいだし、妥当だと言えば妥当かもな。
ローラは魔術師。白い猫耳がついたローブに、綺麗な赤毛が映えて可愛い。
元気がいいトマスは剣を無駄に振り回している。楽しくてしょうがない様子で、子供らしくて微笑ましい。
無口なマークは弓を背負ってはいるけど…。使えるのか?
くくっ…見た目だけは、一丁前だな。
可愛い、可愛い。
あっ、モンスター達が出てきたな。
さてさて、どうなる事やら。
現れたのは、可愛い犬頭のコボルト4体。プリンセス・ロードの中ではまあまあ強敵の部類だ。
「お手柔らかに、お願いします!」
ローラが可愛い声で叫び、大きくお辞儀した。
「手加減しねーからな!」
トマスも剣を振り回しながら叫ぶ。
コボルト達が、一斉に襲いかかった。
同時に走り出すナギ。いつの間にナイフを抜いたのか、コボルトと斬り合う。
「え…?…意外と…戦えてる…?」
ナギはまだしも、トマスやマークが武器をそこそこ、使いこなせてる…?




