休み…なのか?②
一見ヌンチャクのように見えるけど、持ち手の部分がかなり小さくて、それをつなぐ鎖部分が長い。片方の持ち手は20cm程あるけど、もう片方は10cmくらいだ。
「長い方の持ち手、いくつかボタンがあるんじゃない?」
いつの間にか、ゼロが後ろから覗いていた。ゼロも気になってたんだろう。確かによく見ると、深く押し込むタイプのボタンがついている。
「なぁ、押してみろよ!」
今度はブラウが顔をだす。ま、ガキとはいえ男だから、こういう武器には興味津々なんだろう。目がキラキラしてるしな。
一番上のボタンを押し込むと、鎖の長さが伸びた!
「おーーー!伸びたぁ!」
ボタンを押すと伸びる。ボタンから手を放すとそこで長さもキープ。押したりやめたりしながら、鎖の長さは最大5mまで伸びた。
地味だが、武器のリーチが変えられるのは、それだけで戦略の幅がぐんと広がる。マジで嬉しい機能だ。
「どうやったら元の長さに戻るの?」
さぁ…俺だって手探りなんだ。
ボタン長押しじゃないだろうから、2度押しか、さらに深く押すのか、別のボタンを押すのか…。
試してみる。
正解は「さらに深く押す」だった。
鎖が激しく暴れながら、持ち手のところに収納されていく。
「いてっ!?」
「うわっ!!危ねっ!」
収納される時にあんまり鎖が暴れるから、覗き込んでいた二人に勢い良くあたってしまった…。持ち手の部分は鉄で、滑り止めの突起もある。
…痛そうだ。
「もう!気をつけてよ!」
「痛ってぇな!」
涙目の二人に怒られたけど、俺だって今日初めて触るんだし。
「おっ、なんだなんだぁ?早速攻撃力のお披露目かぁ?」
カエンとグレイが満面の笑顔で参戦してきた。 この前酒盛りしながら話した武器の出来栄えは、大人たちでも気になるんだろう。
まずは鎖を出し入れして見せる。
二人は満足気に頷いた。
「ヌンチャクのようにも、鞭のようにも、使えそうですな」
「ああ、なかなか便利そうだ。防御にも使えそうだし、重りもあるから、投擲にもいいんじゃないか?」
じゃ、次の機能は…。2つ目のボタンをギュッと押し込む。
小さい方の持ち手がバクっと3つに分かれ、真ん中から鉤爪も表れた。ちなみに3つに分かれたパーツからは、片側に鋭い刃、反対側からは鋭い棘がでている。
えげつない…!
「ほう…、これは使い勝手が良さそうだ」
「殺傷能力は高そうだがなぁ」
カエンもさすがに苦笑い。
「…お客さんがヒクんじゃない?」
俺もゼロの意見に賛成だ。観客もいるわけだし、挑戦者も殺したいわけじゃない。さすがにここまでえげつない感じはどうなんだろう。
俺達の反応に、グレイはちょっと残念そうだ。でも、刃と棘は出ないように、ドワーフ爺さんに調整して貰おう。
「最後のボタンはなんだろうね」
ポチッと押してみる。
途端に身体中に強力な電流が走った。
………ドワーフ爺さん…。
いくら試作品でも、持ち手には絶縁性の高い素材使おうぜ…。
軽く焦げ、軽く麻痺した。
カエンはいつも通り大爆笑してるし、ゼロは大慌てで回復してくれた。少し麻痺が残るものの、武器の性能もあらかた分かって落ち着いたし、最後の電撃のダメージもある。
俺としては、寝る気満々だったけど、新しい武器にテンションが上がったグレイとカエンは止められない。
俺はその日、夜遅くまで新しい武器の特訓を受けるハメになった。
しかもヌンチャクとも、普通の鞭とも違う動きをする、この新しい武器。
一瞬油断すると、容赦なく自分に当たる。
鎖だから、メチャメチャ痛てぇし!
しかも、鎖の長さを変えると、それだけでまた動きが変わるんだ。便利だけど…面白いけど…大変な武器を生み出してしまった…。
しかも、酒飲みながら考えた武器だから、練習の過酷さとか、全然考えてなかったしな~…。
最長の3mともなると、まっすぐに振るのすら難しい。すぐに地面に落ちるし、何しろ重いんだよ、この武器…。
「おら、まだ3回しか俺様まで攻撃が届いてねぇぞ!」
「もっと早く振り抜かないと、重力に負けます。身体ごと振るつもりで!!」
いつ終わるんだ、このダブルスパルタ…。




