メンテナンスします!⑥
「あ、そうだ。カエンから聞いたんだけどさ、来週からまた新しいダンジョン、公開するんだってね。見に来てもいい?」
「もちろん!」
アライン王子の申し出に、食い気味で即答する。なんせスライム・ロードは自信作だ。是非とも頑張ってるスライム達を見てやって欲しい。
「来週から3週連続で、新しいダンジョン公開するつもりなんです。時間が合えば、見に来て下さい!」
ゼロは楽しげに宣伝している。
アライン王子はちょっと面食らったようだ。
「3週連続!?早過ぎない?」
と、言った後、少し考えこんでしまった。
…なんだろう。難しい顔、してるけど。
訝しく思っていたら、アライン王子は顔を上げて、真剣な目でゼロを見た。
「それさ、2週に1度とか、1ヶ月に1度に出来る?」
「出来ます…けど」
ゼロはチラっと俺を見る。
デビュー、また延びるのか…?
「あんまり急に、ダンジョンが拡大すると、不安がる者が出るかも知れないからね」
アライン王子はそう言って、ゼロに優しく微笑んだ。あれか…。カエンが言ってた、何事も程々にってヤツか。
確かにまだ、プレオープンから考えても、1ヶ月も経ってないし、なんでもどんどんやり過ぎかも知れない。
観客が多く入った事でポイントも豊富に入って、安全面にもポイントがふれるようになったし、新ダンジョンも構築出来ると思ったら、ついつい色々やってみたい気持ちの方が先にたってしまった。
さっきのカエンの話を聞いてからは、実はちょっと反省している。
…調子にのって、スラっちを超強くし過ぎた事は、さらに反省している…。カエンにばれたら怒られるレベルかも知れない。
ゼロも思うところがあったのか、シュンとして「もう一回、考えてみます」と答えた。
街の中にダンジョンを造ったんだ。自らダンジョンに向かうような冒険者とは違い、モンスターとはほぼ無縁で普通に生活している人たちだって多いだろう。気を使うべきところは使わないとな。
ゼロの答えを聞いたアライン王子は、にっこり笑って帰っていった。
「次はエリカも連れて来るね!」
とか言ってたけど、大丈夫だろうか…。
エリカ姫が来るのは嬉しいけど、アライン王子はエリカ姫に容赦ないし。酷い目にあわないと良いけど。
それからの時間…。
魔力が尽きるまで、俺はただただ、スターセイバーの特訓を受け続けた。
ゼロのスパルタ教育、鬼だ…。
変化のピアスも召喚してくれないし、新しい武器も触らせて貰えない…。
「スターセイバーをマスターするまで、お預けね?」
って…ニコニコしてたけど、スターセイバー、マジで難しいし…。
体は別に疲れないけど、最後は頭が割れそうに痛んだ。終始笑顔のゼロも、なんだか怖かったし…。クラスチェンジのためとはいえ、上達してる実感がない分カエンからの格闘猛特訓よりも精神的にキツい。
一晩で覚えられる筈もなく、ゼロの「じゃ、また明日ね!」の声と同時に、気絶するように俺は眠りについた。




