メンテナンスします!①
24日目の朝。
オープン後2週間、事故もなくダンジョンは開催出来ている。
今日は2度目のメンテナンス日だ。
「ハク、おはよー!今日のゴハンはお腹に優しいリゾットだって!まだホカホカで美味しいよ!」
毎朝のユキの朝メシ中継にも慣れてきたな…。レイの訓練をグレイに引き継いでから、体の負担が減ったせいか、寝起きもやや良い。
頭を掻きつつ起きると、いつも通りダンジョンコアをゼロに渡し、早速朝メシ。
うん、美味だな。
今日は朝は会議だけだし、軽めの食事で丁度いい。
「ああ、そう言えば、アラインが武闘会とかについて、話したいっつってたが、今日大丈夫か?」
アライン王子…久しぶりだな。
もう10日以上会ってないかも知れない。
「うん、大丈夫だよ。会議の時間以外は空いてるから」
カエンの問いに、ゼロもあっさりと返す。アライン王子にはもはや緊張しないみたいだな。しかし、アライン王子が来るなら、意外と時間がないな。今日はやりたい事が山のようにある。
メシを食いながらも、作りかけのスライム・ロードがどうなっているか、ちょっと見てみる事にした。
スライム・ロードは3つのステージに分かれている。
最初の草原のステージは、先週造った時のまま、青々とした草、ところどころに可愛らしい花が群生して、蝶々や蜜蜂が飛んでいる。
なんとも、のどかな風景だな…。
もちろん普通の草原と違うところもある。あっちで、こっちで、色とりどりのスライムがぴょんぴょんと跳ねているんだ。先週配置したスライム達も、だいぶ分裂して、数も増えてきたらしい。奥の中ボス部屋でも、スーパースライムが2体に増えていた。
「…スーパースライム、増えてるね」
「…だな。2体ともボスにするわけにもいかねぇし、どこに配置するか…」
分裂が早いスライム属…どこまでいっても、この増えた分の再配置問題がつきまとう。どの時点かで、分裂を抑制する方策を考えるべきかも知れない。
とりあえず、悩んだ末分裂した方のスーパースライムは、キング・ロードに配置する事になった。
第2ステージのジャングルは、鬱蒼と木々が繁り、熱帯雨林特有の蒸し暑さと足場の悪さが特徴だ。
ここには普通のスライム5体と、この前錬金した合成スライム達がたくさん配置されている。
普通のスライムは、もしかしたら環境によって、何か特殊な進化を遂げないか…という、仄かな期待で配置した。見た感じ、湿気が多いせいなのか、普通のスライムだけでなくこのステージのスライム全部、サイズがデカくなってる気がする。
まあ、まだそれ以外に特別な進化はしていないようだ。進化せずとも戦力的には充分整ったステージではある。あるけど…実は俺には、先週からずっと気になっている事があった。
「なあ、せっかくジャングルなんだから、鳥や獣系の、ジャングルらしいモンスターって、どう思う?」
いや、スライム・ロードなんだから、スライムオンリーで行くべきかとは思う。
でもさ、折角ジャングルや、第3ステージの砂漠とかあるんだし、それらしいモンスターもおいてみたいのが人情じゃないか!
「スライムメインなのは変わらないので、少々他種族がいても問題ないのでは?」
グレイは事も無げに言うが、すぐさまルリが反論する。
「どこ見回してもスライム、ってのが可愛いんじゃない!」
「私もスライムちゃん達だけの方が良いと思いますぅ」
「スライム達、スライムだけのダンジョンだって、信じてるよ?」
マーリンとブラウもスライムオンリー派だ。
「ま、他種族とのタッグだからこそ面白い場合もあるけどなぁ…。ま、どっちでもいいんじゃねぇかぁ?」
カエンの言葉に、ユキも頷いている。情勢としては、スライムオンリー推しの方が優勢な感じだな。
ゼロは少し考えた後、「スライムだけで行こう」と断言した。
ああ…残念だ…。
デカい肉食獣とか、けたたましい鳥の鳴き声とか、沼地にヒルとか、ワニとかヘビとか…ジャングルなんだから壮絶な戦いだって演出できるのに…。
うちのスライム達はきっと、可愛らしい戦いの連続だろう。いいけど…ちょっとハードなのも欲しかった…。
がっくりした俺を、ゼロがまあまあ、と慰めてくれた。
「ここはスライム達に任せよう!そのかわり、ハクのダンジョンには、超凶暴なヤバそう感たっぷりの、地形に見合ったモンスター、配置するよ!」
「いや…遠慮する…」
俺のダンジョンって…そもそも状態異常オンパレードにするつもりの癖に、モンスターまで凶悪って…どんだけ酷くするつもりだよ。
気を取り直してジャングルステージのボス、色鮮やかな5色のスライム、スラレンジャー達をみてみると、こっちも好きに分裂していた。2~3体に増えている。




