第二クール、スタート!②
相変わらずルリとゼロから、容赦なく送り出される。いつもなら俺の体力と気力をメキメキと減らしていく、地獄の1時間だが、今日は目的がある。意気揚々とカフェに転移し、グレイを誘って練兵場に向かった。
目の前にはもちろん20人ものむくつけき男共が並んでいる。ホントいつ見てもムサいな…。
「師範!その方はどなたですかな!?」
いちいち声がデカいザイガン兵士長。
この大声にもだいぶ慣れたな。
「今度、うちのスキル教室の講師になって貰うグレイだ。格闘はもちろん、ムチやヌンチャクのスキルまである凄腕だからさ、ちょっと顔見せ」
「なんと!」
腹の底からの「なんと!」を繰り出し、グレイをしげしげと見るザイガン兵士長。グレイは澄ました顔だ。
「今日はグレイは見学だから。さあ、訓練を始めよう!」
しつこいくらいグレイをガン見するザイガン兵士長を引き剥がし、訓練に入る。今日の俺の心は晴れやかだ。
ああ、早く引き継ぎたい!
1時間の訓練を終えて、回復温泉でひとっ風呂浴びる。さっぱりしてから食べる昼メシは格別だ。でも、ゆっくりと味わう余裕はない。間もなくお客さま達が入るからだ。
「そんなに掻き込むと、のどに詰まりますよ?」
グレイに苦笑と共に注意されるが、マジで時間ないんだよな…。
開場を告げる、鐘の音が鳴り響く。
13時。
「ギルド「クラウン」冒険者支援施設、体験ダンジョンへようこそ!」
キーツの高らかな宣言と共に、 ギルドからの扉が開け放たれる。
ダンジョン、オープンだ!
扉からは今日も沢山の人々が押し寄せる。うん、今日も大盛況だな!
次々と挑戦者達がダンジョンに入って来る。
「ダンジョンをこんな施設にするとは、驚きですな」
グレイの長い人生でも、やっぱり珍しい光景らしい。
その時、ルリが嬉しそうに叫んだ。
「あらぁ、レイだわ♪」
…えっ?なんで?
慌ててプリンス・ロードのモニターを見てみる。
ホントだ。
前回同様、一人でダンジョンに入って来た。ダンジョンに挑むなんて、聞いてなかったけどな…。
「いつ見てもイケメン♪」
ルリはウキウキした様子で、ステータスを見ている。レイは毎日のようにダンジョンに来てるのに、それでもこのウキウキ加減。
よっぽど好みなのか?
「凄い!もうレベル12になってる!」
さすがのレベルアップスピードだな。素直に感心するよ。
「お知り合いですかな?」
「ああ、俺に格闘の個人レッスン受けてたヤツだ。今日も夕方来る予定だったから、グレイに引き継ごうと思ってたんだよ」
そろそろ俺じゃ教えられる事も少なくなってきた。グレイならスキルの引き出しも多いから、レイには丁度いいだろう。
「グレイは今日は、最初のうちは見学ね。多分中盤でルリが席外したりするから、その時にヘルプに入って貰うから」
ゼロの言葉と共に、俺もキング・ロードのモニターにつく。レイも気になるが、ルリが代わるとも思えないしな。
今日のキング・ロードの挑戦者は…
あっ、これはキツいかも知れない。
人数は…5人。
でも、いずれもレベルが13~15だ。
戦士:男:レベル15
格闘家:男:レベル15
盗賊:男:レベル14
魔術師:男:レベル14
踊り子:女:レベル13
職種はまあまあバランスが取れて…
ん!?
踊り子!?
このレベルで、なんで踊り子とか入れてるんだ!?
陣形も、最前列に戦士と盗賊、真ん中に踊り子、最後尾に格闘家と魔術師……エリカ姫を守る兵士達を彷彿とさせる陣形だ。
思わず踊り子をガン見。
う~~~~ん……。
可愛いが、男4人を虜にする程の美貌ではない気がする…。
「お嬢様ぁ、まだこのダンジョンは早いですって~!この前の戦い、見てたじゃないですかぁ~」
小柄な盗賊が情け無い声をだす。ああ、ワガママお嬢様と従者のご一行か?
男4人に憐れみの眼差しを向ける俺。
「騒ぐな。今更出られるわけでもなかろう。観念せい」
落ち着いた雰囲気の格闘家が、盗賊を諌める。レベルは低いが、なかなか隙がない。
「大丈夫ですわ。だって、この前行ったダンジョンも、皆さんがちゃんと攻略して下さいました。わたくし、信じておりますもの」
踊り子お嬢様、のほほんと笑っている。
高飛車タイプじゃないらしい。
「…………」
「頑張ります!!」
踊り子お嬢様の信じる発言に、魔術師は真っ赤になって俯き、戦士はあからさまにヤル気アップだ。どうやらこの二人は、踊り子お嬢様に惚れてるんだな。
盗賊はまだ「あれダンジョンって程じゃないでしょー!ただのゴブリンの巣だしぃ!」と騒いでいるが、誰も気に留めない。
そうこうしている内に、ついにモンスターに遭遇した。




